4話
目を覚ませば、清々しい朝を迎えることが出来た。
身を起こして欠伸をすると、扉を叩く音が響く。
「あきら、朝……って、起きるの早いな。珍しい」
「オレだってその気になれば早起きくらい出来るんだぜ」
なら常にその気でいろ。と冷たく言い放つめぐる。もっと褒めろよ。やれば出来るんだなって。
不貞腐れた顔を見せてから、ふと暗い森の屋敷を思い出す。彼女は両親に会えたのだろうか。ただ、会いたいというその一心で信じていたのに、家族との思い出が詰まった家をあんなふうにされてきっと悲しかっただろう。
だから、最後に彼らにお礼を言いたかったんだと思う。オレの身体を借りて、伝えなくてはと思ったのだろう。
宝物を壊さないといけないのは彼女もわかっていた。けれど、勇気が足りなかった。
彼らのおかげで酷い世界から解放されたのだ。これ以上自分のせいで苦しむ誰かを生み出さずに済んで本当に安心出来たんだろう。
もし来世があるなら、その時は幸せにね。
「……またご両親のこと考えてるの?」
「いや、来世について考えてた」
「また変な哲学か。早くしないと朝飯冷えるぞ」
「あ、待て! めぐる、お前この上着そろそろ着ろよ! 誕プレで買ったやつなんだから!」
引き止められたせいか、めぐるは機嫌が悪そうに振り向く。
「お前が誕生日に大事なものをくれって言ったんだろ。覚えてない?」
「え?」
いつそんな会話をしたのだろう。全く記憶にない。というか、大事なものという建前で返品してきたのかこいつ。ちょっと腑に落ちないな。
誕生日の話をしたのはいつだったか、と思い出す素振りを見せると、めぐるはため息をひとつこぼして何かを放り投げる。慌ててキャッチしたのは小さな箱だった。
「へぇ!? なにこれプロポーズ!?」
「馬鹿か。誕プレだよ」
心底呆れた顔で腕を組み、目線で開けろと指示してくる。どう見てもアクセサリーを入れるための箱だ。指輪でも入っているのかと焦る。
宝石好きのめぐるの選ぶアクセサリーだ。充分価値がある物をプレゼントしてくれたのだろう。そうでなくても、家族のような親友から貰う物なら値がつけられないほどの価値がある。
何が入っているんだろう。と期待を高めながら箱を開いてみた。
「あ! これ、パール? お前のピアスと同じじゃん!」
「ていうか俺のピアス。お前は耳に穴開けられないからイヤリングに加工してもらった」
「え、よかったの?」
「ふっ、新品よりはるかに安い。金が浮いた」
ケチ臭い彼らしい発言だ。心から嬉しそうにしているのを見るに、大事なものを手放すより節約を優先したのだろう。彼にとってはお金の方が余程価値があるように見える。
しかしこれは、めぐるがめぐるの両親から貰った大事なピアスなのだ。親友とはいえ、他人にプレゼントしていいようなものでもないはず。
申し訳ない気持ちでプレゼントを眺めていると、またため息をこぼしてめぐるは口を開いた。
「家族からもらったものは他にもあるし、何もそれだけに価値があるわけじゃない。お前なら大切にするだろうから別に構わないと思っただけ」
めぐるは少々不機嫌そうに、わかったら早く飯を食え、と言って扉を閉めようとする。扉が閉まるあと1センチのところで、思い出したかのようにふと笑った。
「誕生日おめでとう。今日は付き合ってやるからさっさとこい」
12月14日。今日でめでたく21歳だ。
ケチなくせに毎年律儀にプレゼントを渡してお祝いしてくれるのは、きっとそれまで祝ってくれた両親の代わりをしてくれているから。
むず痒くて暖かい気持ちをどう受け取ればいいのかまだわからないけど、来年その次もお互いの誕生日をお祝い出来たらいいな。




