12話
日も落ちてきて寒さが肌を刺す気温になってきた頃、車で出勤したらしいめぐると共に帰宅することとなった。
車に乗りこみ、エンジンをかけ出発してもオレたちの間には無言の壁がある気がした。
月明かりを眺めながら、思っていたよりずっと不機嫌な声でめぐるに話しかける。
「怒ってる?」
「別に」
予想通りの返答。めぐるに視線をやればただ真っ直ぐ進行方向を見つめていた。
「オレのこと、守ってあげなきゃとか思ってんの?」
「……止めても止まんねぇやつだと思ってる」
「どう言う意味?」
「そのまんま。考えなしなら止めれるけど、お前は考えすぎて止まんねぇから困るわ」
嫌味っぽく言うめぐるだが、こいつの事だ。嫌味でもなんでもなく、ただ本当にそう思っているのだろう。
わざとらしくため息を吐いてやれば、めぐるはキュッと眉をひそめた。
「つーかお前能力とか『特異』とか言われてなんでそんなすぐ信じんの?」
「見せられたらそりゃ疑いようもねーだろ」
「少しは疑えバカ」
「はあ?」
赤信号の光に照らされた緑の瞳が深くこちらを覗く。
口を結んで目を逸らさず見つめていれば、緑の光に照らされた瞳はまた進行方向だけを見つめた。
「……お前の能力って何?」
「どうせすぐに分かる」
「お前ってマジでこすいよな」
「説明しにくいんだよ」
ハンドルを左に切ってからめぐるは眉をひそめた。
「お前の特技は普通なら手放しで褒められるようなもんだけど、『特異』では致命的な弱点になる」
「はあ? どういう意味?」
「そのままの意味。深入りするな。考えるな。目の前で起きた事象を起きたまま理解しろ」
「なにそれ」
「事実は事実でしかねーっつってんの。意味を求めたら足元をすくわれる」
めぐるはこれ以上の説明は不要だと言わんばかりにため息をつく。
めぐるの言いたいことの本質が見えてこないため、これ以上何を聞いても無意味に思えてきた。
不機嫌さを隠さずに窓を眺めていれば、無言の壁がまだ重くオレたちの間を埋めている気がした。




