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クールな幼馴染みとの甘い秘密  作者: りょう
第1部クールな幼馴染みと偽装カップル
5/34

第5話貴方が望むなら

 校門のところで本を読みながら時間を潰していると、最後のチャイムが鳴り響き部活を終えた生徒達がゾロゾロと出てきた。


「お疲れ、華」


 その中に華の姿を見つけると俺は彼女に駆け寄った。


「あ、亮太。本当に待ってくれていたんだ」


「当たり前だろ?」


 俺と華は朝と違ってごく自然に手を繋ぐ。やっぱり目立ちはするが、堂々とすると二人で決めているので周りの目を気にせずに学校を出る。


「今日は例のストーカーは大丈夫だったか?」


「うん、大丈夫。部活中は一度も顔を出さなかったみたい」


「でももうその話は向こうまで伝わっているって考えていいんだよな?」


「部活の後輩も知っていたくらいだから、そう考えて大丈夫だと思う」


「とりあえず最初の問題はクリアか」


 俺達の通っている高校は決して大きくはないので、華の有名度も含めてそう思って問題はないだろう。


「それじゃあ今日もどこかに出かけるか?」


「そうしたいけど、時間も遅いし今日は亮太の家に行ってもいい?」


「俺の家? いいよ、どうせ母さん達仕事だから」


「ありがとう。じゃあ今日はおうちデートで決定ね」


 淡々と語る華だが、その言葉の節々に少しだけ高揚を感じられる辺り、喜んでくれているらしい。


(おうちデート、か)


 今まではただ遊びに来ていただけの彼女が、今日からは彼女として家にやって来る。


(どう考えても意識するよな、これ)


 俺の理性は果たして保っていられるか、少しだけ不安になった。


 2

「お邪魔します」


 家に帰宅した頃には19時が過ぎていて、普通ならこんな時間に男女が一つ屋根の下なんてありえないのだが、俺達はもうそれには慣れているのでいつも通りだった。


「腹減っているか? 簡単なものなら作れるけど」


「相変わらず男子とは思えないくらい、女子力が高いわよね亮太は」


「ほぼ毎日料理を作っているからな。自然と身につくって」


「じゃあ今日くらいは私に作らせてくれるかな?」


「え?」


「私だって料理できるのは知っているでしょ? だから私に作らせて」


 確かに彼女は今日、自分で作ったであろうお弁当を食べていたので、そこは疑っていない。

 ただいきなりの提案でドキッとしただけだ。


「それとも私が作るご飯は食べれないとか?」


「そ、そんなことないから!」


「ならよかった」


 ホッと安心した表情を浮かべる華。俺はまた少しドキッとさせられながらも、台所に立つ。


「でも完全に任せっきりは悪いから二人で作ろうか。その方が手間も省けるし、それに」


「それに?」


「お互いに互いの料理を食べてもらった方が、らしいだろ?」


 我ながら恥ずかしいセリフを言ったなと思いながらも、俺は料理の準備を始める。


「......」


 けど華はしばらくボーッとした表情を浮かべたまま、その場を動こうとしなかった。


「ん? どうしたんだ華」


「え、あ、ごめんなさい。一瞬意識が飛んでいたみたい」


「おいおい、大丈夫かよ」


 意識が飛ぶって結構一大事なのだが、華は「大丈夫だから心配しないで」と言うので、その言葉を信じることにした。


「それで何を作る?」


「すごいベタかもしれないけど、カレーライスなんてどうだ? 今日は寒いし」


「賛成。私カレーライスなんて長いこと食べていないから、楽しみ」


「じゃあ早速料理開始だ」


 3

「じゃあおばさんも私達のこと驚いていたんだ」


「ああ。挨拶に行くとか朝から騒ぎ出して大変だったんだよ」


「それはまあ......大変だったわね。私の家ほどじゃないけど」


 カレーライスを作りながら、俺は今朝の出来事を華に話した。華はそれを聞きながらどこか遠い目をしている。それだけでも何があったか察せるのが彼女の父親という存在だ。


「これ、あとで嘘でしたって言ッ鱈、俺の命が別の意味で危険じゃないのか?」


「命が一つや二つあっても足りないわね」


「それってつまり俺、詰んでないか?」


「大丈夫、亮太なら乗り越えられるよきっと」


「朝も思ったけど、他人事過ぎだろ?!」


 こういうのが普段学校で氷華なんて呼ばれる所以の一つなのだが、俺に対してはやっぱり感情が籠もっている(気がする)ので、勿論悪い気はしない。


「でも、挨拶はしないと駄目だろうな。たとえそれが嘘だとしても」


「それは私も分かっている。お父さんだって理解だけはしてくれると思っているから」


「理解、ねえ」


 そんな話をしているうちにカレーライスが完成して、お互いが対面する形で椅子に座る。


「「いただきます」」


 二人で手を合わせてカレーライスを一口食べる。


「味はまあ、どこにでもあるカレーライスだな。当然美味しいけどさ」


「でもこういうの特別感があって私は好きよ」


 華が言う特別感とは何だろうか。俺と二人で作ったことか、それとも俺のために作ったことなのか。余計な考えを巡らせる。


(いつも一人で料理して食べていたから、たまにはこういう日もあっていいか)


 華の言葉通りこういう特別感がある夕飯があるのも悪くない経験ではあるかもしれない。


「さっきの話の続きになるんだけどさ」


 夕食後、料理で使った皿や鍋を洗いながら、俺は調理中にしていた話の続きを切り出す。


「俺もその内、華の家に行ってもいいのか?」


「私の家に?」


「母さんの言葉を借りるわけじゃないけど、一応挨拶はしておく必要はあるだろ? 話してしまった以上は会わないわけにはいかないし」


「でもその挨拶って、どちらかというとお付き合いするというより結婚とかそういう話になるんじゃ」


 “結婚”なんて言葉が突然華から出てきて、俺は思わず手に持っていたスポンジを落としてしまう。


「け、け、結婚?」

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