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クールな幼馴染みとの甘い秘密  作者: りょう
第2部甘い彼女
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第27話いつもと違う年越しを 後編

 半ば強引、と言うほどではないかもしれないけど、俺は華の申し出を断る理由もなかったので二人で夜の街を歩くことにした。


「それにしても少し驚いたよ。華が急にあんな事を言い出すなんて」


「変だった?」


「いや、何も変じゃないよ。むしろそういう考えに至らなかった俺の方が悪かったよ」


 家に帰って年越しすることにこだわるばかりに、華がどう思っているかまでは考えようとしていなかった。


「私ってそこまで鈍感に思われていたの?」


「別にそういうわけではないよ。むしろ鈍感なのは俺の方だったよ。悪い」


 昼間の時とは違って、二人で行く当て場所もなくとりあえず歩きながら雑談をし、その途中でせめてどこかで年越しそばを食べられそうなお店でも探した。

 しかし時間的にやっている場所がなく、二人で近くのコンビニでカップ麺を購入して近くの公園で食べることになった。


「丁度3分経ったな」



「美味しそう」


「いただきます」



 一つのベンチで二人で腰掛け、寒空の下でカップラーメンを食べる。こんな年越しは今までしたことがなかっただけに、却って新鮮に感じる。


「亮太の方も少し食べさせて」


「いいよ。交換しようか」


 何か特別なことはしていないけど、この何ともない時間が、とても愛おしく感じられる。ハッキリ言って最高の時間だった。


「美味しかった。ごちそうさま」


「ごちそうさま。これで年越しも無事できそうだな」


 時計を見ると既に年越しまで1時間を切っている。どうやら年越しはこの公園で迎えることになりそうだ。


「華、一つ聞いていいか?」


「何?」


「今日はどうしていきなりあんな事を言い出したんだ? そういうことを言う性格でもなかっただろ?」


 ほかほかになった身体で一休みしながら、俺は隣に座る華に質問する。


「やっぱり変だった?」


「いいや、嬉しかったんだよ。華がそんな風に思ってくれるようになったことが」


 この前の彼女の家の一件だってそうだ。あれだけ彼女が自分のことを思ってくれていたことが、俺には本当に嬉しくて、それが力にも変わった。


「今まではさ、あんな風に華に気持ちをぶつけられたことなんて、本当になかったからさ。ちゃんと俺のことを好きで居てくれていることが、嬉しかったんだ」


「今までは思っていなかったの?」


 少しだけ悲しそうな表情をする華。俺はその彼女の髪を撫でてやった。


「あっ......」


「悪い、そういうつもりで言ったんじゃないんだ。今までは、その、本当に自分が華に見合っている人間なのか分からなかったんだ」


 華は黙って聞いてくれているので、俺はそのまま言葉を続ける。


「偽物から始まった関係だったし、その期間だって短い。小さい頃から一緒だったとはいえ、3年前の一件で本当は失望されているんじゃないかって」


「私が亮太に失望するわけないのに」


「きっと華は何を言ってもそうやって答えるだろうなって分かっていたから、安心できたんだ。ちゃんと俺は華の彼氏として、ここに立っていられているんだって」


 まだまだ戸惑うことは勿論多い。誰かとちゃんと付き合うなんてことは人生で初めてだし、相手が誰よりも1番知っている華だ。うまく行かなかったらすぐに別れを告げられるのではないかとか、華は本気じゃないのではないかとか。この1ヶ月俺は沢山悩んだ。


 だからこそ、だった。


「華が直接ああやって言ってくれて、俺は初めて華の彼氏って実感ができたんだ。ありがとう」


「お礼なんて、言われるようなことはしていない。私」


 そっぽを向いてしまう華だが、暗い場所でも分かるくらい彼女の耳が赤くなっているので、それも照れ隠しの一つだって伝わってくる。


(お互い素直じゃないな)


 正直自分でも言っていて、恥ずかしいのだがこういう華を何度見ても飽きない。


「華、改めて、いや何度でも言わせてほしい」


「な、何?」


「俺は華が好きだ。これからもずっと」


 華はそっぽを向いたままこちらを振り向いてくれない。けどその代わり、彼女はボソッと呟いた。


「言われなくても、分かってる。私も大好き、亮太」


 俺達は改めて自分達の気持ちを確かめ合った結果、


「気づかないまま年越しをしていたんだな。俺達」


「カウントダウンすら、していなかったわね」


 新年を迎えるタイミングを逃してしまったのであった。


「こういう年越しも、たまにはいいか」


「来年はリベンジしてみせないと」


「そうだな。来年はちゃんと年越しをしような」


 けど、自然と来年の予定も埋まったので、それでいいと思ったのだった。


 おまけ

「ソフィーヤ、華はまだ帰らないのか?」


「おかしいわね。年越し前には帰るって言っていたんだけど、何かあったのかしら」


「そう言いながら何で嬉しそうな顔をしているんだ? あの男と一緒で心配じゃないのか?」


「あら? 私は亮太君と一緒にいるなんて一度も話してないわよ?」


「どうせ華の事だ。彼と一緒なんだろ?」


「さあ、それはどうなのかしらね」


「くそ、せめて出掛ける前にあの男に一言言っておけばよかった」


「止めようとはしないのね......」


(その点だけは、成長しているのかしら)

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