表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クールな幼馴染みとの甘い秘密  作者: りょう
第2部甘い彼女
18/34

第18話聖夜に二人で(2)

「どこに出掛けるのかなって思ったけど、そういうことね」


「折角のクリスマスだから美味しい料理食べたいだろ?」


 家を出て二人で向かったのは近所のスーパー。目的は勿論今夜の料理を作るための食材を買いに来るためだった。


「この前はカレーだけだったからな。二人だけで作れるものに限度はあるかもしれないけど、俺も華の料理をもっと食べたいし」


「私の料理?」


「弁当は何度か食べさせてもらったけど、もっとちゃんとした料理が食べてみたいんだ。迷惑か?」


「全然迷惑じゃない。じゃないけど......」


 華は何か言いたげにブツブツと言っている。「これってもう、私と亮太は......」みたいなことを言っているけど、それより先の言葉は聞き取れない。


 かと思いきや、はっと我に返ると咳払いをして、いつもの華に戻った。


「お弁当だって何度も練習した結果があれだから、そんなに自信はないけどいいの?」


「全然問題ないって。俺は華が作ってくれたものを食べたいんだ」


「そ、そう」


 正直な気持ちを伝えると、華は何故かそっぽを向いた。さっきから忙しい彼女だが、顔が少し赤いのを見てとれる。


(いつもは俺がやられていることだし、たまには反撃しないとな)


 勿論今の言葉は本心ではあるのだが。


「それで、何を作るか決めているの?」


 冷静さを取り戻した華が、何事もなかったように尋ねてきたので俺は予めメモをしてきたものを彼女に見せる。


「結構量がありそうだけど、これ二人で食べられるの?」


 それを見た華が聞いてくる。


「今日はその泊まりだから、明日の朝ご飯もあるだろ? 華がよかったらなるべく一緒に居られたらなって。俺の両親はしばらく帰ってこないし」


 我ながら恥ずかしいことを言っている気がするが、本音なので俺は包み隠さず言ってしまう。


「こ、こんな場所でよくそんな恥ずかしいことを言える、わね。と、とりあえず買い物を済ませましょう」


 華はそれには返事をせず、カートを押してスーパーの中を突き進んでいってしまう。


「あ、おい、先に行くなよ!」


 分かりやすい反応をする華に苦笑いしながら、俺は彼女の後を追った。


 2

 買い物を終え、帰宅した俺達は夕飯までの間少しだけ時間を潰すことになった。


「それで何をする? 一応二人で遊べそうなものなら一通りあるけど」


「私これやってみたい」


 そう言って華が指を指したのは、俺が最近買ったゲーム機だった。


「そういえばまだ二人で遊んだことなかったっけ」


「昔はよく遊んでいたけど、遊ばなくなったよね」


「それは多分、俺が多人数用のゲームを買わなかったからかな」


「つまり亮太には友達がいないと」


「悲しくなるような現実を突きつけないでくれ」


 ゲームには友達が付属されていないのは本当に悲しくなるからやめてほしい。


「とりあえず遊ぶか。ほら、コントローラー」


 俺は華にコントローラーを一つ渡す。すると彼女はマジマジとそれを見つめていた。


「ん? どうかしたか」


「コントローラーってこんなに小さいの?」


「そっか、知らないのか。今の時代のゲーム機って、そういう小さいコントローラを使って遊ぶのが主流なんだよ」


「確かにボタンとか付いてるけど、私の知っているボタンの数じゃない」


 華のゲームの知識がいつで止まっているか知らないが、まさかボタンの数までも不思議がるとは思っていなかった。


「ゲーム機にも色々種類があるからな」


「ねえ本当に私でも楽しめるの?」


「楽しめるのを買っておいたから、心配するな」


 実は華と遊ぶために買っておいたことは秘密にして、俺達は早速二人だけのゲーム大会を開催した。


 三十分後


「また私が1位。亮太ってもしかしてゲームが下手?」



 あれ? 俺が思っていた展開と違う。ここは俺が華に格好良く勝利して、華が意地になって何度も戦う展開を予想していたんだけど。


「おかしい、俺このゲームを昔から遊んでいるはずなのに」


 俺と華が遊んでいるのは髭の配管工のレースゲームだ。昔からというのは勿論一番最初の作品からで、もうこのゲームは文字通り遊び尽くしたはず。


 ーそれなのに、


「はい、また私の勝ち」


「ま、まだだ!」


 一体何が起きているというのか。


「勝ち」


「まだ」


「またまた勝ち」


「負けて」


「......もう、負けを認めたら?」


「ちくしょう、こんなはずじゃなかったのに!」


 度重なる敗北に俺の心はついに心が折れてしまう。


(華ってこんなにゲーム強かったのか?)


 思い返せば先日のダンスゲームでも、涼しい顔してフルコンボを連発していた。自分の譜面に集中してすっかり忘れていたが、氷室華という人間はそういう人間だった。


「本当に今日初めて遊んだんだよな?」


「当たり前でしょ?」


「じゃあなんでこんなに強いんだよ」


「......生まれながらのセンス?」


 若干むかつくドヤ顔を決めながら、華は俺に言い放った。


 日頃の努力<生まれつきの才能


 という何とも悲しい方程式が俺と華の間で成立してしまった瞬間だった。


「それでどうするの? 別のゲームやる?」


「もう勘弁してください」


 これ以上傷を抉られたら、本当に立ち直れなくなってしまうのでゲーム大会は華の圧勝で幕を閉じたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ