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クールな幼馴染みとの甘い秘密  作者: りょう
第2部甘い彼女
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第17話聖夜に二人で(1)

「うわ、寒い」


 朝起きて布団を出ると、思わず声が出てしまった。天気予報では今年一番の寒波の影響で、今日は一番寒いらしい。


「ホワイトクリスマスになりそうだな、これ」


 テレビの天気予報を見ながら俺は呟く。


 今日は12月24日 クリスマスイブ


 先日華と約束した二人きりで一晩を過ごす日。勿論両親の許可は得ている。


『お盛んなのはいいけど、あまり羽目を外さないでね』


 朝早くに仕事に向かった母からは余計なお世話すぎる忠告を受けてしまったが、俺だってそんなの心得ている。


(むしろ羽目を外すって、どういう意味で言ったんだ?)


 ちょっと何を言っているか分からない、と言いたいところだが、俺も生半可な気持ちで彼女を家に誘ったわけではない。


(華も誘いを受けてくれたってことは、そういうことって考えてもいいんだよ、な?)


 下手に意識しすぎかもしれないが、俺達も高校二年生だ。そういうことだって考えてしまう。


「って、さ、流石に考えすぎだろ俺」


 一人で悲しい自問自答を繰り返しながら、俺は華との約束の時間まで待つ。


(思春期の学生かよ俺は)


 いや、その通りなんだけど。


(早く来ないかな、華)



(亮太、どんな顔で待っているのかな)


 今日着ていく服を選びながら、私は今の亮太の顔を想像しながら鏡に映る自分の姿を見た。


 どうしてか分からないけど、自然と笑みが浮かべている自分がそこにいる。


(今日は亮太と二人っきり。クリスマスに一つの屋根の下で、二人っきり......)


 去年もその前も、抱いたことがなかった特別な感情。私達はまだ高校生だけど、一晩を二人きりという言葉の意味はよく分かっている。


(私と亮太が、聖夜に二人きりって考えるだけで、胸がドキドキする)


 私はもうどうしようもないくらい亮太のことを好きになってしまっているらしい。


(私にあんな事を言わせた責任くらい取ってもらわないと)


 あの日以来お父さんとは会話をしていない。私がああ言った手前、話をしづらいというのもあるけれど、今日の予定を話をしたら間違いなく邪魔をしてくる。


(亮太は知らないけれど、あの日だってそうだったんだから)


 偽装カップルになってそのまま映画館に行ったあの日のことを私は決して忘れていない。いつかこの話を亮太にしなければいけない日が来るかもしれないけど、亮太ならきっと何とかしてくれる。


(私の服、可愛いって言ってくれるかな)


 鏡に映っている自分の顔は、さっきよりも綻んでいた。


 2

 午後三時

 予定の時間通り家のチャイムが鳴った。


「お邪魔、します」


「い、いらっしゃい」


 いつも通りの会話のはずなのに、今日はお互いの会話がやけに堅い。俺も変な意識をしてしまっているし、華も何か考えているのか一挙一動がぎこちない。


(まだ昼間なのに、何やっているんだ俺達は)


 思わず自分にツッコミを入れてしまう。


「きょ、今日は呼んでくれてありがとう亮太。クリスマスに二人きりになるのって、は、初めてよね」


「そ、そうだな。いつもどっちかの親は一緒だったし。そういえば泰介さんから許可は取れたのか?」


「ううん、黙って来ちゃった。お母さんにだけは話してあるけれど」


「ソフィーヤさんにだけか......」


 泰介さんは華の父親、ソフィーヤさんは母親の名前だ。以前話したとは思うが、ソフィーヤさんは優しい人なんだけど泰介さんの方は娘のことになると見境ないところがあるので、俺の命が危険かもしれない。


「ソフィーヤさんは今日のことについて何か言っていたか?」


「お母さんは少し驚いていたけど、でも何故か私に楽しんできてって背中を押してくれた」


「大人って流石だな。うちの母さんも一緒だったよ」


 俺は朝の会話を伝える。笑い話にでもして少しでも肩の力を抜いてもらおうと思った、


「お、お、お盛ん? 羽目を外す?」


 のだが、


「は、華?」


「りょ、亮太のエッチ」


 何故かビンタが飛んだ。運動部で普通の女の子より力がある華からのビンタ。


 ー普通に痛い


 というか、言ったのは母さんなのに、何で俺?


「あっ」


 無意識だったのか華は我に返ると、顔を真っ赤にしながらわたわたし始めた。


「りょ、亮太、ごめんなさい。今冷やすもの持ってくるから」


「だ、大丈夫だよ、これくらい。痛みはすぐに引くから」


 俺達のクリスマスは幸先が不安しかない。 


 閑話休題


「と、とにかく俺の両親はこんな調子だから、心配いらないけど泰介さんの方がこの後何されるか分からないな」


「事後報告、しかないと思うんだけどそっちの方が殴り込みに来そうで怖いわね」


「今日は仕事で帰ってこないのだけが幸いだけど、その後の方が問題ってわけか」


 今日は何も問題がなくても、いつかはこの日のことがバレる日が絶対にくる。


「ちゃんと挨拶、していないもんな。華の家には」


「うん。亮太のお母さんには話しはしたけど」


「それだって偽装カップルをしていたときだから、ちゃんとした挨拶はしてないよな」


 嘘をつく必要がなくなった以上、ちゃんと向き合わないといけない。たとえぶん殴られても、逃げることだけはしてはいけない。


「とりあえずこの話は今するべきじゃ内容ではないよな。折角のクリスマスイブなんだから、もっと明るくなることをしよう」


「うん!」


 重たい空気を変えるように、俺は話題を切り替える。こんな話ばかりしてたら、年に一度のイベントが台無しになる。


「でも具体的に何かやるの?」


「それなんだけどさ、ちょっとだけ外に出ないか?」


「外に? 家の中で過ごすんじゃないの?」


「過ごすためのお出かけ、だよ」

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