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クールな幼馴染みとの甘い秘密  作者: りょう
第1部クールな幼馴染みと偽装カップル
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第1話幼馴染みが可愛い件

 ピンポーン


 溜まっていたアニメを一気見でもしようと思い、テレビのリモコンを手に取ろうとした時、家のチャイムが鳴った。


「何だもう来たのか」


 俺は独りで呟くと、重い腰を上げて、玄関に向かい扉を開ける。


「亮太、来たわよ」


「おう、いらっしゃい」


 俺は彼女ー氷室華(ひむろはな) をいつものように部屋に招き入れる。最初は緊張することが多かったが、今となってはようやく慣れてきた。


(男女二人が、同じ屋根の下で二人きり。シチュエーションとしては最高なんだけどな)


 俺達の関係上、そういうことを意識はするものの、それ以上のことは起きたりしない。


「またアニメ見てたの? よくもまあ、毎日飽きないわよね」


 勝手にテレビの電源を付けながら、華は少し呆れながら言う。


「別にいいだろう。俺が自分の休日をどう使おうか」


「つまり私は邪魔者だと?」


「そんなこと一言も言ってないだろ。それで今日は何をするんだ?」


 俺は冷蔵庫からお茶を取り出し、それをコップに入れると、華にそれを渡す。彼女は「ありがとう」と受け取りながら言い、お茶を口にした後にこう言った。


「亮太、今日はあなたに頼みがあってきたの」


「頼み?」


「その......私の......になってほしいのよ」


「ん? 聞き取れなかったんだけど」


「だから、その、私の、か、か、かっ」


「か?」


 華は顔を真っ赤にしながら、家中に聞こえるように叫んだ。


「私の彼氏になってほしいの!」


 2

 俺 天野亮太(あまのりょうた) には幼馴染みがいる。


 名前は氷室華。別名『氷華』


 その別名は、その容姿から来ている。外国人の血も混ざっている彼女は髪の色が薄ら水色が混ざった白色で、瞳もサファイアブルーのように綺麗で人の目を惹きつける。

 ただ彼女がそう呼ばれるのには別の理由もあって、それが普段の彼女の性格にあった。


「ひ、氷室さん、きょ、今日の放課後時間ある?」


「ごめんなさい、私暇じゃないから」


「け、けど! そ、その大事な話が」


「ごめんなさい、そういうの興味ないから」


 この時華を誘おうとしていたのは、男子生徒で恐らくだけど告白しようとしていたのだろう。ただまさか、告白する以前にバッサリ切り捨てられるとは思っていなかったのだろう。

 こんな感じで学校での華の態度は、どの生徒に対しても冷たくて、名字の通り氷そのものだった。同じクラスの俺から見ても、それはハッキリしていて、常にクラスの女子から煙たがられているのも知っている。


 ーだからこそ、俺は信じられない


「亮太、一緒に帰ろう」


 その人物と、


「亮太、手を繋いでくれる?」


 今目の前にいる彼女が、


「ふふっ、暖かい」


 同一人物だなんて。


(ツンデレとかじゃなくて、明らかに俺の前だけではデレしかないんだよなぁ)


 俺の華に対する評価は、学校のそれとは全くの反対で、氷室華という人物は甘えん坊で、こっちが何かアクション起こすとすぐ照れたりして、時々冷たいところもあるけど学校のような態度は一度も取ったことはない。


 ーつまり何が言いたいかというと、


「どうしたの、亮太。私の顔をずっと見て」


「い、いや、何でもない」


 俺の幼馴染みがあまりに可愛すぎる。


 3

 私には天野亮太という幼馴染みがいる。家が隣同士で、両親同士も仲が良く、ほぼ毎日のようにどちらかの家に遊びに行くか来てもらったりしていた。


 ー幼馴染みというよりは家族に近い存在だった


 私の母親はフランス人でその血を濃く継いでしまった私は、幼い頃から髪の色とか目のこととかで、色々悩まされた時期もあった。

 そんな時でも亮太は私を忌み嫌うなんてことはせず、何度も助けてくれた、私にとってのヒーローだった。


(だから、なのかな。亮太の前だけでは私は私でありたい)


 学校でどんな人に対しても冷たい態度を取ってしまうのは、他人を遠ざけたいと言う気持ちがあるのと、亮太の前では違う私を見せたいって気持ちがあるからなのだと思う。


(亮太は気づいていないのかもしれないけど、私は何度も貴方に助けられてきた。だから私にとって亮太はヒーロー。そんなヒーローに私は......)


「私の彼氏になってほしいの」


 恋をしているのかもしれない。


 4

 氷室華という人物の話をしたところで今に戻る。


「え? 彼氏になってほしいって、それって告白?」


「ちがう、の。いや、ちがくないんだけど、仮、そう仮の彼氏になってほしいの!」


 相変わらず顔を真っ赤にしながら華は言う。


「仮の彼氏って、また縁談を持ってこられたのか?」


「それも、そうなんだけど。じつは、別の問題も起きてしまって」


「別の問題?」


「亮太は何度も見たことがあると思うんだけど、私に、その、告白をしようとしてきた男子生徒が何人かいたでしょ?」


「何人というか何十人もいたな。先輩後輩含めて」


 さっきの話は今に限った話ではなく、中学生の頃から続いているある意味の伝統行事だ。


 誰かがいつか壁を突破するんじゃないか。


 そんなことを考えてヒヤヒヤしていたけど、今のところその先を俺は見たことはない。


「その中にどうしても諦めきれないのか、はたまた別の理由があるのか、最近私につきまとってくる人がいるの」


「それってつまり、ストーカーってことか?」


「うん」


 思っていた以上にかなり深刻な話に、俺は驚かされる。今日の今日までそんな話は一切聞かなかったので、相談してくれなかったことよりも気づけなかった自分が情けなかった。


「つまりそのストーカーに彼氏がいることを見せて、諦めさせる作戦か」


「もうそれ以外に方法がなくて。それに亮太がいれば、護身にもなるでしょう?」


「戦闘力はそんなに期待しないでもらいたいけど、そういうことなら協力するよ」


 まさかこんな形で華の彼氏になれるとは思っていなかったが、今まで彼女を作ったことがない俺にとっては嬉しい。


「でも俺でいいのか?」


「私は亮太以外に適任がいないと思っているよ? いつか本当に告白したいなって思っていたし」


「今なんて?」


「な、何でもないわよ。とにかく、よろしく、ね」


 そう言うと華は微笑んできた。


(......ったく、本当その表情を俺の前だけに見せるんだよ)


 本気になってしまいそうじゃないか。



 こうして俺と華の物語が始まる訳なのだが、あらかじめ言っておくと俺は少しだけ後悔している。


「じゃあ晴れて私達は付き合うことになったんだし、早速行こうよ」


「行くってどこに?」


「勿論デートに決まっているじゃない」


 華の可愛さが、この日を境に更に大幅にレベルアップさせる結果になってしまうことに。


 華がデートと言い出したのはどうやら本気だったらしく、俺達は付き合う事になったそのままの勢いで、本当にデートへ向かうことになった。


「それでデートってどこへ行くんだ?

 」


「え? 亮太がエスコートしてくれないの?」


「さっきデートに行くことになったのに、エスコートなんてできるわけないだろ?」


「そこは何とかアドリブで頑張りなさいよ」


「アドリブってお前な......」


 こっちは完全ノープランだというのに、アドリブもへったくれもない。


「私......亮太と一緒ならどこに行ってもいいよ?」


 けど華は俺の腕を組んで、少し上目遣いでそんな台詞を言ってくるものだから、こっちも男として決めなければならない気持ちにさせてくる。


(これは卑怯だろ)


 いくら長年の付き合いと言えど、普段とのギャップを見せつけられたら俺もその気になってしまう。


「そこまで言うなら、本当に任されていいんだな?」


「任せたって言っているんだから、素直に受け取りなさいよ。私だってこれでも勇気を出しているんだから」


 偽装カップルのためとはいえ、華も相当勇気出しているのは腕に感じる彼女の鼓動から嫌でも伝わってくる。


(こっちは別の意味で緊張しているの、伝わっていないよな)


 チラッと横目で華を見るが、特に俺を気にしている様子はない。


「どうしたの、亮太」


「いや、なんでも。とにかくベタだけどまずは映画でも見に行ってみないか?」


「賛成。丁度見たい映画があったから、早く行きましょう」


 エスコートしてと言った本人が俺の腕を引っ張る。やっぱり意識しているのは俺だけなのかもしれない。


(こっちの気も知らないで、本当無茶苦茶だよな)

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