7アリー(吸血鬼)は太陽に弱い
「(はあはあ、ようやくダンジョンの入り口だね。長かったね)」
「(君が何度も崖から落ちなきゃ、とっくに出ることできたよ)」
アリーと聖剣は最下層のダンジョン主を倒して一晩休息と睡眠をとると、一気にダンジョンを逆走して入口を目指した。
まあ、途中で何度も崖から落ちてやり直しがあったので、聖剣の機嫌は良くない。
アリーは1週間ぶりに陽光の下に姿を現す。
サラサラサラサラ
灰になった。吸血鬼なら当たり前である。
「(魔剣さん!)」
「(ん? 何?)」
「(吸血鬼が太陽の下で灰にならない訳がないじゃないですか!)」
「(まあ、普通、そうだね)」
「(そうだねじゃないでしょ!)」
「(それより、君。早く隠れた方がいいよ。裸だからね)」
「へ?」
アリーはようやく夜になって復活して、聖剣と喧嘩してたが、重要なことを忘れていた。
「きゃぁあああああ!!」
「(まあ、灰になっても復活できるけど、服はできないからね)」
「(意地悪ぅ~!! どうすればいいの?)」
「(まあ、もう一回、ダンジョンに潜って、例の火竜倒せば神装のドレスが手に入るんじゃないかな?)」
「(また?)」
アリーは再びダンジョンに挑むはめになった。
「おい! 大変だぁ! 痴女だ! 痴女が出たぞー!」
当然、アリーのことだ。
「もう、嫌ぁあああああ!!」
そして、再度ダンジョンに挑んで、幸い神装のドレスを手に入れたアリー。
「(はあはあ。今度こそダンジョンから出れるよね?)」
「(さあ、さすがに僕も今が昼か夜かがわかんないな)」
恐る恐る外へ出る。
「(よかったぁ! 夜だぁ!)」
幸い夜だった。
意気揚々として、街へ向かうアリー、しかし。
「朝日がぁ! 日の出になるー!!!」
ダンジョンに向かって全力逆走するアリー。
聖剣の力もないのに、かなりのスピードだ。
「ああ! もうらめれす」
すっかり朝日がさして来て、観念するアリー。
「今度は痴女どころじゃないような気がするよー!」
「(まあ、昼間に素っ裸でいたら、わいせつ物陳列罪だろうね)」
「(私、わいせつなの?)」
「(女の子でも、そうね)」
「は、はは......は」
わいせつ物陳列罪でしょっ引かれる辛い未来を案じておかしい笑いがこぼれ出るアリー。
「あれ?」
何故か今度は灰にならない。
「(そうか、君は僕の力を随分と吸収したから、もう昼間でも平気なんだよ)」
ぎーこぎーこぎーこ
「(ちょ! 君、何? 何するの?)」
アリーは近くにあった岩石に聖剣でノコギリのように引く。
「(や、止めて!)」
「(絶対、全部わかっててやったでしょ! 意地悪!)」
「(ちょっと、待って、誰か来る! ほんとだから!)」
ん?
アリーは聖剣の感じた気配を共有する。
確かに誰か来る。咄嗟に身を隠す。
「ありがとうございます。昨日は私もゴブリンを倒すことができました」
「初めてで、怖かったろ? あまり無理しなくていいからな」
「本当にありがとうございます。初心者の私を中級冒険者のケンツさんのパーティーに入れていただくなんて」
「ははは。気にするなよ」
聞こえて来たのは、聞いたことがある声。男はアリーをダンジョンで見捨てたパーティのリーダー、ケンツだ。そして、聞いたことがない女の子の声はアリーと同じ初心者冒険者だろう。
「(魔剣さん、私に力を貸して。あいつら、私をダンジョンで見捨てた奴らだよ。きっとあの子も私と同じ目に会う。助けなきゃ)」
「(アリー、悪いけど、僕は人間同士のいざこざに関わるつもりはないよ。君の力でなんとかするんだね)」
「(そんな!)」
「(悪いけど、これは譲れない)」
聖剣は嘘をついていた。事情はアリーから聞いてわかっていた。いざとなれば、協力するつもりだ。だが、確かめたいことがあった。
それはアリーの正義感、そして、アリーの魔法の能力。
本当にアリーに魔法の才能がないのか?
聖剣の適合者の条件は正義の心と魔法に長けた者。
もし、魔法の才能が無いなら、アリーを諦める…しか…聖剣は悩んでいた。
アリーは神装のドレスの上に拾った魔法使いのフードを被ると冒険者達の前に顔を隠して姿を現した。
「あなた。その人達について行くと、捨て駒にされるよ」
「誰だ、てめえ」
「いや、この声」
「わかったぞ。お前、アリーだな。お前、声だけは綺麗だったからな」
「え? あなた、誰ですか?」
初心者冒険者はアリーと同じく、まだ年端も行かない少女だった。
「1週間前まで、あなた達のパーティにいた者なの。そいつらに捨て駒にされたの。悪いこと言わないよ。早く街に引き返して」
「え? そんな? 皆、いい人達です! 信じられません!」
「私もダンジョンで捨て駒にされるまでそう思っていたよ」
アリーは視線をリーダーのケンツに向けた、その時。
ズシャ
唐突に初心者冒険者の少女の胸から剣の刃が飛び出す。
「え?」
少女はあっさりと崩れ落ちていった。
「あぶねえ、あぶねえ。口封じだ。アリー、お前もすぐに殺してやるからな」
「こいつ、バカか? わざわざ自分から殺されに来るなんてな」
「違いないな。はははッ!」
次の瞬間。
『な、なんだって?』
聖剣はアリーから起き上がる魔力の奔流に驚きを隠せなかった。
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