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50アリーは初めての友達を得る

入学式当日は、爽やかな晴天だった。


入学前に購入した制服に身を包み、寮の自室の鏡に映してみる。


王立魔法学園の制服は、白のブラウスの上に魔法を象徴する青をベースカラーとしたブレザーとプリーツスカートを着こみ、胸元には赤のリボン、足元は白のニーハイソックスといったいでたちだ。ちなみにアリーの学年はブレザーに差し色として赤が入れてある。


更に胸元には、貴族の証として、グラキエス家の紋章である暗黒竜が描かれた襟章をつける。


「お姉ちゃん……制服効果ってすごいね。2倍位可愛く見える」


「あら、アリーは元々可愛いじゃないの?」


そう言うソフィアも同じように制服に身を包む。ブレザーの差し色は2年生を示す濃紺である。


初めて鏡に映った自分を見て、アリーは目をまんまるにした。まんざらでもない気分で眺めて、髪を整えたりする。


すると、鏡の中に、黒髪の自分によく似た顔立ちの少女、姉のソフィアが写り込んだ。


「アリーもようやく女の子らしく身だしなみが気になる年頃になったのね?」


「う、うん。でも、私、その......お姉ちゃんにそっくり」


「......んん?」


ソフィアはアリーの言葉の意図がわからなかった。


実はアリーは初めて自分の容姿をはっきりと見た。


グラキエス家では姿鏡はおろか、手鏡すら持たせてもらえなかった。


なので、美少女の姉と自分がそっくりと言うことは.....そういうことだ。


アリーは手をコネコネ、モジモジして恥じ入っている。自分のこと可愛いかもと思ったことを恥ずかしく思っているのだ。


「もう、アリーたら、何を恥ずかしがってるの! 可愛い♡」


そういうとアリーにダイブして抱き着いて来る。


「お姉ちゃん、ギブギブ!」


久しぶりの姉の胸の強力な装甲に押しつぶれそうになるアリー。


そんな感じで、姉妹水入らずの時間を送ると、アリーは何気にスカートを腰のところで巻いて、丈を短くしていた。


「ア、アリー? どうしたの? そ、そんなにスカートを短くしたら、み、みえちゃう! ダメよ! アリーのを見てもいいのは私だけなのよ!」


「え? お姉ちゃん、古代図書の本に、この制服によく似たのがあったのだけど、こんな感じでスカートの丈を短くしてたんだよ。可愛いんじゃないかな?」


スカートを膝上15cm位にし、太ももを半分位を露出しているアリーを見て、ソフィアは。


「か、可愛い!」


そう言うと、自分のスカートの丈も直した。


こうして、入学式に挑んだアリーとソフィア達だが、当然目立ちまくった。


男子生徒は言うに及ばず、女子生徒からも熱い注目を浴びた。


後日、魔法学園の女子生徒の膝丈が短くなったのは言うまでもない。


入学式が終わると、そのまま自分達の各クラスに向かった。


「お姉ちゃんとは別々のクラスだね」


「仕方ないのよ。アリーは1年生からだけど、私は2年生からだから」


「うー」


不満げな声を出すアリー。しかし、ソフィアは地元の学校に通っており、2年生に進級できる資格は既に持っていた。学年事態が違うのである。

ドキドキしながら、自分のクラスの教室に入って適当な席に着くと、誰かが話しかけて来た。


「ねぇ、あなた?」


どうしていいかわからず、じっとしているアリーに声をかける人物がいた。


「(こ、これって、私に話かけてるの? もし、人違いだったらどうしよう?)」


聖剣はそんなこと気にする必要ないだろうと思って、声をかけようとしたが、それより先にトントンと肩を叩かれる。


「ねぇ、あなたに話しかけているんだよ」


アリーはビクッと肩を震わせ、オドオドと顔を後ろに向けた。


後ろを振り返ると、アリーをじっと見ている可愛い女の子がいた。赤い髪の少女だ。色白で、目元はぱっちりとしていて、少々釣り目なところから勝ち気そうなことが想像できる。髪型はツインテールで、髪留めには可愛い装飾がされてある。制服の上にはカーディガンを羽織り、少し制服を着崩している。ばっちりお化粧もしていて、かなりのおしゃれ上級者なのは間違いない。


「あたしはリリー・アーリントン」


名乗った少女は、アリーを顔をまじまじと眺めて、頬杖をつく。


「ねぇ、どうしてお化粧しないの? せっかく可愛いのに、それじゃ田舎娘みたいよ」


リリーの言う通り、アリーはお化粧をしていない。アルデンヌの街でエグベルド副ギルド長の奥様からお化粧を教えてもらったが、最近バタバタして忘れてしまった。髪を鋤くのも忘れている。


「や......やり方......分からなくて」


その一言で、なるほどとリリーは理解したが、同時に周囲も気が付いてしまった。


魔法学園の一般試験の受講者はほとんどが上級貴族か豪商だ。


下級貴族が入学するなどありえない。


例外は貴族でさえ遠慮するよりない豪商の娘位だろう。


それ以外だと特待生だが、試験に合格できる平民などまずいない。


平民は学校に行っている者事態が少ない。例外はあるだろうが、少なくとも10年に一人とか、そんなレベルだ。


そして上流貴族の令嬢も豪商の娘も侍女がつき、化粧や身だしなみを整えてくれる。


つまり、アリーは侍女を雇う金がない貧乏貴族であることを露呈してしまったのである。


「でも、そのワインレッドのリボンは素敵ね。それにスカートの丈を短くするなんて、あなたやるわね」


「わ、わた、私、そういうの、よ、よく......わからなくて......ごめんなさい」


アリーが謝ると、ちょっとリリーの気の強そうな眉が吊り上がった。


「ねぇ、どうしてあなたは謝るの?」


「............ごめんなさい」


学校に行ったことがなかったアリーはてんぱっていた上、ほとんど友達がいなかった。


唯一の親友には幼馴染の男の子を奪われただけだし。 


「嫌ねぇ、成金の男爵令嬢が、貧乏貴族を虐めているわよ」


「貧乏な方も悪いんじゃないかしら? 場違いよね?」


「全く場所柄をわきまえない下賤な輩には困ったものね」


小声ではあるが、アリーとリリーに聞こえるには十分な声量だ。当然悪意によるものだろう。


リリーは吊り上がった眉を今度はひくひくとさせていたが、その眉が突然下がった。


「聞いての通り、私の実家は去年、男爵に叙されたばかりの新参者よ。そうよ、お父様がお金で爵位を買ったのよ......でも......こんなわたしでも良ければ、その......友達になってくれない?」

「え! いえ、その、ええと」


「やっぱり、こんな成り上がり貴族、誰も相手してくれないのね」


そう言って、悲しそうに下を向いてしまった。


アリーは頑張らなきゃと思った。


学園に入ってやりたかったことリストの筆頭に可愛いお友達がある。


目の前に自分から友達になって欲しいという可愛い女の子がいるのだ。


恥ずかしくて言葉が続かなかったアリーだが、勇気を振り絞って言った。


「......お、お願いします」


「ほんと? いいの? お友達になってくれるの?」


「ふぁい」


嚙みながらもようやく自分の気持ちを言えたアリー。


そして、先程まで吊り上がっていた眉を下げて、花が咲いたような笑顔を浮かべて喜ぶリリー。


「じゃあね。あたしがお化粧を教えてあげる」


されるがままになったアリー。リリーは手慣れた手つきでアリーに化粧を施していく。


「凄い。あなた、なんで今までお化粧しなかったの? もったいないわよ」


そして、手鏡を渡される。


鏡をのぞきこんで、驚いた。


「お、お姉ちゃんがいる」


「お化粧なんて、簡単なんだから、自分でできるようになるまで教えてあげる!」


そう言って笑顔を見せるリリーと手鏡を交互に見て驚いてしまうアリー。


「……分かり、……ますた」


肝心なところでかんだ。

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