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47ラナは何故かざまぁされる

騎士ラナは実家に向けて馬車に乗っていた。普段実家へは騎士の装束で、馬に乗り帰省していた。


馬車で実家に帰るのは、勘当が解けたためだ。今のラナは一騎士としてではなく、伯爵家令嬢としての待遇を受けているのだ。


馬車の音がだんだん小さくなってきて、そして音が静まり、馬車は止まった。


「おかえりなさいませお嬢様」


「ありがとう。セバスチャン。こんな衣装を二度と着ることはないと思っていたのですが」


「何を仰る。お嬢様のような美しい方が着飾らないなど、美の女神への冒涜です」


ラナはふっと笑って、ありがとうと言い、屋敷の中に入って行った。


リビングで両親と談笑する。久しぶりでもないが、騎士の制服ではなく、令嬢らしいドレスで談笑するのは久しぶりである。


感慨深いものもあるが、まさか例の黒竜王討伐のとばっちりがまだあるとは夢にも思わなかった。


「ところで、ラナ。実は縁談の話が来ておってな」


「ぶッーーー」


ラナは令嬢にも関わらず、思わず紅茶を噴き出してしまった。


「父上。私は勝手な縁談話に反抗して家を出たのをお忘れか?」


ラナはつい先程までの令嬢らしい穏やかで優雅な口調から騎士らしい凛々しい口調へと改めた。


「まあ、まあ。ラナ。それはわかっているけど、あなたが我が家を出奔した本当の理由位、母はお見通しよ。先ずは縁談の内容をお父様から聞いてみてから考えてみて」


「お母さま、私はとうに二十歳を超えて騎士などをしている女です。こんな婚期を逃した女の縁談など、聞くまでもなくろくでもない......何より私は自分の伴侶は自分で見つけます」


ラナがぷりぷりと怒りを露わにして紅茶をずずっとすする。先程までの令嬢の品格が嘘だったかのようながさつさだ。騎士なんてこんなものだと見せつけんばかりだ。


「ラナよ、そうは言うな。それに、この縁談が来たのも、ラナが黒竜王を討伐してくれたおかげで、勘当が解けたからじゃ。じゃから、諦めてくれ」


「私が悪いと? 一体、私に縁談を申し込むなんてバカはどこのどいつですか? 全く、何を考えているのやら」


「うん? まだわからぬのか? 第一王子のアーサー様じゃが?」


「ぶっーーー!!!!」


紅茶を噴き出すラナ。本日二度目のことである。


「ア、アーサー? あのバカが?」


「ああ、お前が子供の頃、散々あのバカと呼んでいた、あのアーサー様じゃ」


アーサーとはラナの幼馴染だ。子供の頃、王城を抜け出してラナの家の屋敷で出会った頃からの付きあいだ。ちなみにラナの初恋の相手である。ただし、かなりバカである。


「そうよ、ちょうど、今日、いらしているの、うふ」


「はあ?」


ラナは狼狽した。何故ならラナが出奔した本当の理由はアーサーへの恋慕の情が捨てきれず、勝手に決められた婚約者を捨てて、魔法学園の特待生となり、実家から逃れたのである。だが、ラナはアーサーに対して素直になんてなれていなかったし、そもそも自覚がなかった。


「さあ、アーサー様。お待たせしてすいません。久しぶりにラナとお話になってください。とっても素敵なことと思うのですよ。幼馴染同志が結婚するなんて、うふ」


ラナの母親がそう言うと、ドアをノックして、一人の精悍な男性が入って来た。そして、挨拶をするとラナの隣に座った。


プルプルと震え、紅茶とアーサーを交互に見直すラナ。


「いや、僕もそろそろ婚約者を探さないとね。それで、ちょうどいい伯爵家の娘がいたんだ」


「……は?」


あれ? おかしいおかしい。なんか嫌な予感がする。


「結婚して欲しい」


「はい?」


ラナの頭はショートした。

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