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4アリーはお尻にぶっ刺したい

「(いいかい。君はまだ吸血鬼のことを良く知らないし、僕の力を半分も使いこなせていない。鍛練しないと十分に力が身につかないからね。君たち人間だって、そうだろ? 鍛練して経験して武技や魔法が強くなる。同じなんだ、だから)」


「ぶすっ」


「(って、何やってんのぉー!)」


「きゃいん、きゃいん!」


今まさに、最下層の階層主に止めを刺さんと、後ろに回った瞬間にアリーが勝手に体を動かした。階層主は火竜だった。人間の冒険者が簡単に倒せる筈がない魔物。


その階層主のお尻にアリーは聖剣を突っ込んだ。


火竜は慌てて逃げだした。部屋の隅でがくがくと震えてこちらをチワワのようなつぶらな瞳で涙目で訴えてる。


「(魔剣さんを魔物のお尻にぶっ刺して、放置する作戦、上手く行くかなーって思って、えへ♡)」


「(だから、僕の話を聞いていた? 僕がいないと、君は本来の力が発揮できるように鍛練できないだろ?)」


「(そこまで強い力はいらないかなーって、思った、うふ♡)」


「(いや、ここまでほとんど僕が君の体を操っていたから、君は全然強くなってないよ! それに、ここで僕を手放して、万が一僕が壊れたら、君も死ぬよ!)」


「(そうだったね。......それにしても)」


「(なに?)」


「(魔剣さん、臭い)」


「(誰のせい?)」


結局、聖剣は火竜を倒した。チワワのように怯えるところは可哀想だが、この火竜を放置すれば、いつかダンジョンから出て人界に被害をもたらす。


魔物は基本、人間に害をなす。動物との違いはあいまいな点が多いが、人間への害の大きさで決まる。


火竜は間違いなく災厄であり、知性も低いので人と分かり合える筈がない。


故に魔物なのだ。


火竜が死ぬと、アイテムがドロップした。


「(魔剣さん、これ何?)」


「(それは神装のドレスだよ。かなり防御力が高いし、魔力を10倍にする効果があった筈だよ)」


「(魔剣なことは認めたのね?)」


「(違うよ。君がわざと言ってることに気が付いて、いちいち突っ込むのを止めただけだよ)」


「(バレたか☆てへ☆)」


アリーはボロボロな服から神装のドレスに着替えた。


「(見違えるように綺麗になったね、君)」


「(えへ♡ 馬子にも衣装ってやつね♡)」


違う、アリーはほんとうに綺麗に生まれ変わった。痩せこけた少女は美しく変貌した。


こけた頬に肉が付き、くぼんでいた眼窩もふっくらとして、ガリガリだった体は女性らしい曲線を描き、今のアリーは別人のような美人になった。


もちろん聖剣はそれをアリーに改めて伝えたりはしなかった。


絶対調子に乗るからである。


「(階層主は倒したから、明日までこの部屋は安全だよ。今日はここでゆっくりお休み。いくら吸血鬼でも、もう3日も寝てない。そろそろ休まないと、体に良くないよ)」


「(ありがとう、聖剣さん)」


『!?』


初めて聖剣と呼ばれて、思わず嬉しくなったが、本来当たり前のことと気が付く聖剣。


『こんな最下層では適合者に出会えない。少なくとも中層までは......それまでにはこの子を諦めるかどうか、判断しないと』


アリーには聞こえないが、聖剣は一人思案する。


だが、聖剣にとって、その判断はとても辛いと感じていた。


一人の少女の命を奪うのだ。


正義の目的を果たすためとは言え、アリーに犠牲を強いるには、彼はあまりに善人過ぎた。

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