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29ソフィアはアリーを助けたい

「アリー、お姉ちゃんはあなたのことが心配なの。お父様が万が一、あなたの才能に気が付いたら、きっとろくでもないことにあなたを利用するわ。だから、あなたをこの家から守りたいの」


「お姉ちゃん、どういう意味? アリーはお姉ちゃんと違ってミソッカスだよ。嫁に出す価値もないから追放されたんだよ。お姉ちゃんの方こそ心配だよ。この家の赤字補填のために何処かの金持ちの......どこの誰とも知らない人とお姉ちゃんが結婚させられるかと思うと......虫唾が走るの」


「私のことを想ってくれているのね?」


そう言うと、アリーの頭を撫でるスピードが更に加速する。既にアリーが何処を撫でれば心地よさそうにするか熟知しているソフィアはこれでもかと自分の熟練度を披露する。


「お姉ちゃん。アリーのことを心配してくれるのは嬉しいけど、お姉ちゃんの方が心配だよ」


「ア、アリー! わ、私、別にアリーの勘違いなんだからね! 私たち相思相愛だねとか、姉妹以上の深い関係だねとか、別にこの隙に乗じて、もっと深い関係になりたいとか、恋人なるとか、お似合いの2人になるとか、未来のお嫁さんにしたいとか、婚約届けは今から準備した方がいいとか! アリーの可愛い顔や、頭を撫でると心地よいから国宝に指定した方がいいとか! 思ってる訳じゃないからね!」


『えっと、このお姉さん、すごくまともそうだけど……かなりイケナイ方向に爆進中?』


聖剣は姉妹の愛情に心をうたれていたが、ちょっと行き過ぎた姉の言動にヤベェと思い始めた。


「お姉ちゃん、私も同じ気持ちだよ」


「同じなの? アリーはお姉ちゃんのこと好き?」


「ええ!? アリーの事! 運命の人って、あわわわわわわっわわ!? そんな急に、そ、そんなに急に駄目なの! イケないわ。未だ早いの!? ちょっと待って! お姉ちゃん! 落ち着いて!」


『いや、落ち着くべきはアリーの方だろ? もしかしてこの子たち、頭のねじどっかとんでる? やはり、アネモネの解毒薬を処方した方がいいか? しかし、効きそうにないような。いや、そもそも病院行きの案件か?』


「私達、そんなにお似合いかしら? ねぇ? どうしましょう? ぐへへっへぇ~」


だらしなく緩んでしまったアリーの姉ソフィアの顔は美貌が台無しだった。


しばらくお互いギュッと抱きしめ合う二人だが、ソフィアの方から話しかけて来た。


「アリー。いいこと。あなたは王立魔法学園を受験しなさい、来週に教会に試験官が来る筈だわ。特待生になれば、学費も寮費も無料の上、奨学金がもらえるの。今の王様が5年前から始めた制度なの。私たちみたいな弱い立場の女の子が独立して社会に進出できる唯一の方法なの」


この国の王は人材を集めることに躍起になっていた。前王の時代に外戚からの圧力でこの国の政治、官僚は腐敗した。それを正したのが現在の王である。


しかし、外戚を排除したものの、腐敗したこの国にはまともな人材は少なかった。その為、ソフィアたちのように立場の弱い優秀な女性を社会に進出させて、人材を得るため、この国最高峰の学問機関である王立魔法学園に特待生の受験システムを設立した。


「本当は私が受けようと思っていたのだけど、アリーを残して行くことにだけが不安だったの。こんな家にあなたを残して一人だけなんて……でも、アリーに魔法の才能があることがわかって、アリー、あなたが魔法学園の試験を受けなさい。そして、こんな家から自由になるの」


「お、お姉ちゃん」


姉の優しい言葉に思わず涙ぐむアリー。そして、またアリーの頭を撫で始めるソフィア。


ソフィアの撫で方は、今度はゆっくりだった。アリーのことを熟知している彼女は丁寧にアリーの柔らかい髪を堪能した。


アリーも姉のあまりに自分の気持ちいいところを攻められて、よだれが出て、寝てしまいそうになる。だが、そこははっとして、我に帰る。


「お姉ちゃん、お姉ちゃんと一緒がいい。お姉ちゃんも受けようよ」


「受験料は金貨1枚なの、少しづつ貯めたのだけど、一人分しかないの、だから」


姉の気持ちにアリー涙が溢れそうになる。自分のために苦労して貯めた筈の金貨1枚を差し出そうとしているのである。


「お姉ちゃん、私、冒険者になって、お金があるの。だから一緒に受けよ!」


「私はダメよ。だって、私には……才能がないから」


「そんな訳が!」


ソフィアは下を向いてしまった。


「(アリー、君のお姉さんは回復術士のスキルを持っていたし、魔力も強いんじゃなかったの?)」


聖剣が黙ってられず、アリーに話しかける、ソフィアには聞こえないが、聖剣もこの姉を放って置けなかった。


「(お姉ちゃんは……スキルがもう一つ使いこなせないの)」


『なるほど、多分魔力障害だ。それ以外に考えられない』


そう、ソフィアは魔力障害だった。つまりそれは、先日の小悪党なギルド長と同じく。


「(アリー、よくお聞き。今まで黙ってたけど、君の作るポーションは君には毒だけど、普通の人間にはちゃんと効く最上級の薬なんだ。だから、例のアネモネから作ったポーションで、お姉さんの魔力障害は治る。君のお姉さんは魔力障害だと思う)」


「(え? お姉ちゃんは治るの? ていうか、あれ、毒じゃなかったの?)」


そして、手をついて、膝をついてしまう。


『そんなに悪事になってなくて、がっかりするかな?』


聖剣は真相をアリーに話したものの、アリーのリアクションがあまりに残念で、呆れたが、三人の意識を根こそぎ持って行っていく言葉が投げかけられた。


「あなた、ハズレのアリーじゃないの? なんでこんなところにいるの?」


それは長女のエリザベスだった。

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