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18アリーの家族はなんとか誤魔化したい

「キィィエエエエェェェェェェェエエエエエーーーー---ッ!!!!」


書斎で奇声を発してしまったのはグラキエスの家長ジャックだった。


「そ、そんなバカな! アリーは魔力もろくにない無能だぞ!」


彼がプルプルと震えてしまったのも無理はない。


それは国王の押印がある王立魔術協会の公式書簡だった。




『グラキエス家三女アリーに関する要望書』


貴殿の三女アリーに関し、七賢人が一人氷の魔術師の見解を示す。


【要望】空席である七賢人の一人として至急迎えたい。ついては王都までアリー嬢にお越しいただきたい。


【才能評価】ぶっ壊れ


【希少度】SSS +++


【戦闘力】不明


【重要度】SSS +++


【緊急度】SSS+++


【危険度】SSS+++




ジャックは才能評価レベルがぶっ壊れという意味が分からなかった。


氷の魔術師のアリーの才能に対する嫌味だったのだが、唐突に言われると訳がわからない。


アリーを七賢人に推薦したということだが、評価基準の意味がわからない。


魔術師の評価は通常、低い能力から順にF,E,D,C,B,A,S,SS,SSSと評価される。


ちなみにジャックの魔術師協会から得た評価はシンプルなAだった。


過去100年間の最高評価レベルは現在の七賢人の長、「夢見の魔女」のSSSだ。


過去の評価基準では評価しきれないレベルの能力ということか?


「意味がわからん!」


攻撃魔法にしか興味がなかったジャックにとって、常人の1/10しか魔力がないアリーにこんな評価が付くことに理解ができる訳がなかった。


要望書には更に魔術協会の会長からのメッセージが入っていた。


『アリー嬢を要国家管理レベルの人物と認定。直ちに魔術協会へ招待したい。アリー嬢との友好関係を構築することが急務と判断する』


「クソがぁ!!! よ、要国家管理レベル? そんなの大聖女や勇者並みの扱いだぞ!」


女神の使いであり、人類の守護者たる大聖女、人族最強の能力者である勇者はそれ自体が戦略兵器だ。対魔物戦、他国との争いにおいてその国の明暗を分ける存在である。


それがアリーに対する評価だと言うのだ。


ちなみに通常能力鑑定に危険度という記載はない。


危険度は通常魔物に対してなされるものだ。


そして最強の魔物であるエンシャントドラゴンですら危険度SSSである。


つまりアリーの能力は災害級のエンシャントドラゴンの危険度 SSSを上回る存在となる恐れがあると言うことだ。


ちなみに北の国エジンバラがエンシャントドラゴンによって300年前に消滅させられたことは誰もが知る事実だ。


つまり、アリーが怒るとこの国が消滅する恐れすらある。


更に魔術協会からのメッセージはこう綴られている。


【魔術協会に引き渡すべし。そして我が国との友好関係を構築することが急務と判断する。】


これは国王直下の組織である魔術協会へ引き渡し、アリーとの友好関係を国単位で行うということだ。


一人が国と同格ということである。


プルプルと震えるジャック。


「もし、アリーを追放したことがバレたら……」


ぞっとする。


ジャックは国家を危険に晒したテロリスト同様の措置を受けるだろう。


だが、そんなことは断じて認めないジャック。


「アリーは無能なのだ。私に落ち度はない。ないのだ」


ジャックはあくまで自分の価値観を曲げなかった。


「アリーには死んでもらおう。勝手に家出して、どこかで野垂れ死にした」


ジャックの顔に歪んだ笑みが浮かぶ。


「ある意味、私の措置は褒められてしかるべきだろう」


そう、危険人物を追放し、抹殺するのだから。


「私に落ち度はないのだ。全てはアリーが無能なのが悪いのだ。私に間違いなぞない」


七賢人の言葉にも、国王の指示にも聞く耳を持たないジャック。


「栄誉あるグラキエス家から七賢人に選ばれるべきは……長女のエリザベスなのだ」


ジャックは自分の判断に間違いがあるはずがないと、魔術協会に嘘の報告をしたためるのである。


アリーは勝手に出奔した。


それがたまたま危険な才能の持ち主だった可能性があっただけ。


今頃、アリーは勝手に野垂れ死にしている筈だ、という訳だ。


お金も水も食料も持たせず、質素な衣服のみ与えて追放したのだ。


生きている筈はない。


「そうだ。万が一、冒険者にでもなって生きていると困るな」


魔術協会の会長へのメッセージをしたためた後、ニヤリと笑う。


ジャックはそれがグラキエス家の未来を閉ざしてしまうことになる、などと知る由もなかった。

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