入団会見
ニューヨークに着いた。
ジョン・F・ケネディ国際空港だ。
そこから車でちょっと走ってマンハッタンだ。
あべのハルカスがいっぱい建っている。
佳子はガイドブックを見て
メイシーズという百貨店にいきたいと思っていた。
木で作られたエスカレーターがあるのだ。
車はブロードウェイを北上してタイムズスクエアの前を通ってくれた。
水のない道頓堀みたい。
「セントラルパークの北側にマンション借りるから」
と川口が言った。
コンビニがあるならどこでもいい。
と佳子は思っていた。
でも、24時間営業のお店はほとんどないのだ。
セントラルパークを南下してバッテリーパークに向かった。
その自由の女神の前で記者会見するのだ。
「あ、あれがマジソンスクエアガーデンですよ」
とほのかが言った。
やかましい、おまえしゃべるな。
と佳子は心の中で思った。
通訳なのにすごい悪意だ。
車はバッテリーパークに着いた。
「ここから船に乗ります。気を付けてください」
とほのかがサッと手を引いてくれた。
すごく親切である。
お前は何に乗るねん。男しかおれへんやろ。
と佳子がまた失礼なことを思っていた。
船が自由の女神の前に着く。
記者会見場まで少し歩く。
へー、こんな大きな舞台なんだ。
すごいスターが来るんかなぁ。
佳子は自分が主役だということを忘れていた。
すごいマスコミ。ニューヨークはすごいなぁ、と思った。
ほのかと川口に押されて舞台の上に上げられる。
え、私が上がるの、と思って上がったらすごい拍手。
フラッシュで前が見えない。真ん中に立たされた。
ごにょごにょごにょ。
とスーツのおっさんが言う。
ごにょごにょごにょ。
とほのかが答え、佳子に言った。
「年俸7億円での入団です。女子として初めてのプロです。どう思いますか」
何、この情報量。7億? 女子初めて? そんなことどうでもいい。
「母親がアメリカと大阪のアメリカ村を間違えてました」
と一言いうとその言葉をほのかが通訳して会場はドカンと笑った。
佳子の顔が赤くなる。
何、受けてるの?
「ニューヨークはどう思いますか、だって」
うるさい、ババア。と思いながら
「地元の日本一高いビル、あべのハルカスがいっぱい建っていると思いました」
またほのかが訳す。
会場はまた笑いで包まれた。
その日、野球の帽子をかぶせられ、おっさんと握手して写真を撮らされた。
「川口さん、自由時間あるの」
佳子は完全に観光気分だった。