ニューヨークヤンキーズ
翌日、佳子は会社に退職届けを出しに行った。
しかし、反応は全然違う。
ドラフトで社名が出るからそれまで辞めないでほしい。
向こうに入団したらCMキャラクターになってほしい、など
いろいろとお願いされた。
そして今日は社長と握手写真を撮ってほしいと。
バカなの。私だよ。底辺社員だよ。何で握手。手をつなぐの。
佳子は出来る限りの笑顔で写真を撮った。
もう来なくていいと言われたので今日は心斎橋にある
ビスケットドレスの特別臨時カフェに行くことにした。
ここでもクリアファイルを買う。
アメリカでもアニメは見れるかしら。
ネットチャンネルがあるからいいか。
心斎橋のパルコには少年ジャンプのお店やカプコンのお店もある。
全部見ておこう。
楽しいな。
アメリカではたぶんこんなことはできない。
今日はせっかくだからカラオケに行こう。
佳子はたまに一人カラオケに行く。
いつも心の中でしか歌わないアニメソングを歌うのだ。
でも、他人に見られるのが嫌なので
ジュースは自分で汲みに行くお店だ。
あ、月末ってもう再来週じゃない。
とりあえず、佳子はドラフトが決まってから渡米することにした。
それまでは私はけいおん!よ。
一人でアニメソングを歌いまくった。
帰り一人になれる一蘭を食べようかと思ったが
大阪の味、今井のきつねうどんを食べて帰った。
アメリカのドラフトの日。
いよいよ佳子の球団が決まる。
どこよ。どこ?
川口から電話がかかってくる。
ニューヨークヤンキーズに決まったそうだ。
今晩、飛行機でニューヨークに行くらしい。
パスポートはちゃんと取った。
佳子はこういう事務手続きは素早くやるタイプだ。
飛行機に乗るの初めてだけど、ラピートに乗るのも初めてだわ。
堺からじゃなくて難波からがいいかな。
でも、なんかもったいない。
普通の関空特急で行こう。
それなら電車賃も安いし。
佳子はリクルートスーツを持って関西空港に行った。
「わぁ、本当に海の上だ。ここで待ってればいいのね」
すぐに川口が来た。
後ろに女性が一人。
「井上さん、じゃあ行こうか。この人が通訳さんだ」
「井上ほのかです。名字一緒ですね。よろしくお願いします」
何が名字一緒じゃ。メスブタ。川口狙ってるんじゃないぞ。クソボケ。
佳子は文字通り愛想笑いをした。
それよりも飛行機だ。
あんなデカイものが空に浮かぶなんて。
席をゴソゴソしてるとアニメチャンネルがあることを発見した。
集中してそれを見ていた。
飛行機が初めてのプレッシャーにアニメが勝ったのである。
「井上さん、今から集中されているんですね」
通訳のほのかがそう言った。
単にアニメに集中してただけである。