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170キロ

とにかく、何もない普通の毎日だ。

家族とはしゃべるが会社ではほとんどしゃべらない。

粉浜の駅で知り合いのおばさんとあっても頭を下げるだけだ。

しかし、ある日、困った問題が起きた。

会社で野球大会があるのだ。

CMで使っている元プロ選手参加で各部署ごとに女子もチームに入る。

野球は下手ではない。

弟が野球部なのでキャッチボールはよくする。

スピードは弟もびっくりする速さだ。

でも、まだ思いっきり投げたことはない。

思いっきり投げたらどうなるだろう。

弟以外野球する友達もなく試す機会はなかった。

野球大会の日がやってきた。

大阪城のグラウンドだ。

佳子の経理部はちょうど10人いた。

ポジションはジャンケンでサードになった。

総務部は第二試合だ。

佳子はボーッと持ってきた弟のグローブを眺めていた。

ここでもしゃべる人間は誰もいない。

ベンチの裏で静かにしていると試合の時間がやってきた。

礼をして試合開始。後攻だ。

佳子はとぼとぼサードについた。

第一バッター。

サードゴロ。

これは取れる、とボールを取って勢い良くファーストへ。

シュバーン。

「何だ今のスピードは」

セカンドの部長が騒ぎ出した。

佳子は注目されたくないのでサードからじっと動かなかった。

まわりも騒ぎ出した。

課長がそばにやって来る。

「部長がピッチャーやってみろって言ってるんだけど。スピードガンあるし、投げて。あ、川口さん、見といてくださいね」

スピードガンが持たれた。その後ろには元プロ選手の川口がいる。

佳子も自分のスピードが気になったのでその気になっていた。

この場合、動かないほうが目立つのだ。

佳子が全力でハイスピードの球を投げた。

何か川口さんたちが騒いでる。

「すみません。もう一球お願いします」

そう言われたので2球目はさらに速く投げた。

我ながら速い。ちょっと満足だ。これぐらい速く投げられたら弟も喜ぶだろう。

しかし、川口たちは大騒ぎしている。

「おい、あの子、なんなん、170やで」

と川口は言った。

「えつ」

佳子も野球の意識は一般程度にある。

160キロが速いということも。

まさか自分がそれを超えるなんて。

「ちょっと、君、こっち来て」

佳子は川口に手を引っ張られ、後ろにある大会事務所に連れて行かれた。

「おい、自分、野球はやっているのか」

川口は焦っていて厳しい言葉使いだ。

「弟とたまにキャッチボールやるぐらいです」

「女子で170は大ニュースだぞ。プロ野球の歴史が変わるかもしれない。ちょっと来てくれるか。京セラドームまで」

京セラドームなら大正から新今宮で乗り換えか。阪神で難波に行く方法もあるかな。佳子は帰りのことばかり考えていた。

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