のり弁で熱弁、ベンベン・ベベンベン
唐突ですが「のり弁」の話をしようと思います。ご存じですよね。あの「のり弁」です。説明無用の「のり弁」です。
私の大学時代、「ほっか○か亭」の「のり弁当」は350円だったと記憶しています。
それから幾年月…今だ20円しか値上げしてません。信じられますか?
今時、ホテルのレストランとかで食べると、ヘタしたらライスだけでもそのくらい取られます。
皆さん先刻御案内の通り、のり弁はご飯にショーユ味のオカカをのせて、さらに海苔をかぶせ、おかずは白身魚のフライと竹輪の天ぷら、きんぴらゴボウと漬け物を添え…というのが一般的です。
白身魚のフライ…あれは何の魚か知ってます?ホキです、ホキ。あのホキです。
知らんがな! ですよね。タラ科の大型魚だそうですが、私もどんな魚か見たことありません。
もうひとつのおかずは竹輪の天ぷらときたもんです。竹輪の天ぷら…セルフでトッピングをとっていくうどん屋さん以外では、まず見ません。(ちなみにトッピングのランキングでは常に上位だそうな)
この2点をドン!と載っけたのがスタンダードスタイルののり弁なのですが、ここがポイント。この2点がただ白い飯の上にのっかっていても、私たち人類はのり弁を「弁当の王」とは見なさなかったのではないかと思うのですね。
そう、弁当の蓋を開けた瞬間には、あたかもこの弁当のメインおかずは白身魚のフライと竹輪の天ぷらであろう…と見せかけて、陰で海苔先輩とオカカ先輩と顧問の醤油先生が「まだお前なんか顔じゃねえよ」と笑っているのです!!!!どうッスか!
…ちょっと興奮しました。申し訳ありません。
白飯の上に醤油と海苔、その間にカツオ節というのは日本人のDNAに刻まれた本能の味と言っても過言ではない、いやほんの少し過言かもしれないけれど、100人中99人が「ああ、日本人に生まれて良かった」という黄金の組み合わせでしょう。
あるいは海外に出て半年が経ち、ああ日本の味が食べたい…となったとき私たちのうち100人中101人は醤油味の海苔とカツオ節を食べたいと願う筈です!それに違いありません!!!どうなんだ!
…すみません、またエキサイトしました。
のり弁がのり弁たる由縁はまさにタイトル通り、海苔にあったのです。
私は「のり弁」は弁当の王である!いや神である!もしくはもう私の妻と言ってもよい、と側近に話をするのですが、あろうことかこの世間知らずの若い知人から「海苔なんておかずになるの?」と尋ねられ、仰天しました。
唐揚げ弁当には唐揚げがのっかっている。焼き肉弁当には焼き肉が、シューマイ弁当にはシューマイが…つまりメインのおかずというのがメインらしく主張するものではあります。
例えば「カニシューマイ弁当」に『嘘つけカニなんかほとんど入ってねえじゃん』みたいなクレームがつくのとは対極にある『フライも天ぷらもキンピラも入ってんじゃん!』と我々に言わせる「のり弁」の美しさ。
そう、メインは「海苔」と言い張るのがこの弁当の本質というか、もはや「米そのもの」こそ日本人の食事の原点であるという主張が見え隠れするわけです。
何度も繰り返しますように、この弁当の主役は海苔と醤油とカツオ節ですが、実は!実はこの3者と白飯のハーモニー、ひるがえって言うならば「日本人の心の原風景」こそが、のり弁のおかずなのです! そうなんですったら、そうなんです!!!!ドヤッ!…クラッ。
…ちょっと目眩がしました。しばらく休憩します。
弁当界の孤高の王者「のり弁」…こやつ、ルックスはともかく、その価格と反比例するがごとく、誇りとカロリーの高い奴なのでした。
このエッセイで最終的に「人は見かけじゃない」という結論を導き出そうとしていたのですが、何故か失敗しました。おかしいな。
ちなみに数ヶ月前にこののり弁への愛を「のり弁地獄変」という短編にして鼻息荒く投稿したのですが、その熱量に反してまったく反響がありませんでした。
世間ののり弁への理解の無さに落胆の色が隠せません。いや、今気がつきましたが、単に面白くなかったのでしょうか。ガーン。
だとしたらのり弁には申し訳ないことをしました。食材の…違った、贖罪の意味を込めて、明日は朝昼晩とのり弁を食べることにしたいと思います。すみません。嘘をつきました。
読んでいただいてありがとうございました。のり弁への偏愛が伝われば、それで幸せです。