「バカには見えない服とは、バカをあぶり出すには良さそうだな」
むかしむかし、あるところに一人の王様がおりました。
ある日、仕立て屋を名乗る二人の男が国を訪れました。
二人は大層珍しい布を使って、素晴らしい服を仕立てると吹聴し、その噂は王様の耳にも入りました。
王様は早速この二人に服を仕立てさせることにしました。
二人は「今回使う布を使った服は、バカには見えない服」と言いました。
王様は「城内のバカをあぶり出すにはうってつけだ」とさらに興味がわきました。
二人は早速手付金を拝領すると、服を作り始めました。
さて完成が気になる王様は、二人の元に国の大臣を遣りました。
大臣は二人の元へ赴くと、作業の進捗を確認しました。
しかし機織りや裁縫をしているように見えますが、肝心の布や服が見えないのです。
様子を王様に聞かれた大臣は「あれほど素晴らしい服は見たことがありません」と応えてしまいました。
また他に遣った召使いたちも、口を揃えて「見たことがない服、素晴らしい」と言うのです。
仕立て屋は作っている服に必要だ、と言って高価な宝飾を要求しました。
大臣や召使いはそれを了承し、届けました。
そしていよいよ服が完成した、と王様の元に届けられたのです。
大臣はやはり素晴らしい服、この上ない色合いだと褒め、
召使いもこのような服は見たことがない、と褒めました。
その様子を見ていた王様は、
「ははは!そんなとんちで騙せると思ったお前たちがバカに見える服か?」
と二人をその場で切り捨て、大臣と召使いも一緒に切りました。
「なるほど、城内のバカをあぶり出せたわい」