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夢よ、解釈違いです

      ◇

 学院の保健室だろう場所で、攻略対象達に囲まれ、ベッドに横たわっている。体が重い。彼らの視線も痛い。いいところないな。

 悪夢だからだろうか?

 


 一応寝転んだままは、不敬にならないかとかふっと思わなくもなかったけれど、ま、夢だろう、夢で気にしないことにした。


 その前に、ベッドで休んでいる女の子のところに押しかけてきているのはどうなのだろうね。

 保健室だろうところの扉も開いているみたいか。まぁ私などどうでもいいレベルだろうしな。まぁ不自然でも夢だろうからそんなものか。


 ――でも、これ、きついな。


 空気が重い。なんだか息苦しいくらいの重みをなんとなく感じる。圧迫感を感じるというのか。

 なんていうのか。責められている? なんだろうね。責められたい願望もないけどな。



 ま、どうせ好感度ゼロだろうし。嫌われているし。マイナスになろうが、いいか。不敬罪はやめて欲しいけれど――


 それより何より何故ここにいる。


 嫌われているはずだろうに、彼らが何故こんなところに集まっているのかさっぱりわからない。



 やはり夢だからか? いや、嫌われているだろう人達に集めて、嫌われていることを実感したい願望など、私にはないつもりだけれどな。

 好かれている人達に集われるならとにかく、わざわざないですよ。深層心理にとかもないだろう。


 とりあえず集めておくねという雑な感じかも。夢に辻褄を求めても仕方ないか。それでも急に場面でも変わらないかなとか思ってしまった。





「何故だ」

 思案にふける私に、銀髪、緑の瞳の第三王子様、アリシフェル・サレリミシア殿下が重々しく口を開いた。


 気に入らないのなら近づかなきゃいいのに、わざわざ来ておいて何故だってなんだろう?

 私の方が、何故と聞きたいですよと言いたいところを堪える。


 青い髪、水色の瞳に黒い魔道士姿のシライレス・カラリア公爵令息と、赤い髪に橙の瞳の騎士服、ライアネト・レライン侯爵令息も私を何故か見つめている。


 状況がわからなさすぎて、口をつぐみ続けていると、殿下が大きく溜息をついて、私を強く見据えた。


「サリシア・リデイラ嬢、単身で魔王討伐へ向かおうとしているという噂に耳にしたのだが……」

 殿下は一旦言葉を止めて、まっすぐに私の瞳を探るように見つめた。

「それは、どういうことだ?」

 あなたたちがやる気ないからですよと口から出そうになったがそこは堪えておく。


 

 どうも時列はソロ魔王討伐に向けて準備していた頃っぽい。

 やりすぎて倒れたことあったっけな? でもこんなイベントはなかった。なかったよ。


 しかし――私、詰問されたい願望はないと思うのだけれど。


 美形でもね。だからこそなんか怖いかな。迫力あるし。緑色の形良い双眸で鋭く見据えられるとか。

 怖いよ。王族怖い。美の結集のような姿に威厳をがんがん乗せてくるよ。


 そう、かなり美形だからって何でも許されると思わないでね。


 権力者だから外面はおもねるけれど。権力ふりかざされたらね。物理で首飛ぶし。でも、内心何思うかは勝手よね。学院内とはいえ、やはり権力者は権力者でしょうからね。


 私に無邪気に何を言われてもニコニコ笑顔で、気付かず、全てを邪気なく薙ぎ払うように、振る舞う。無理。不敬? なんですか? それ? よくわかりませんは無理だったからね。

 選択肢にはあったけれどね。ないわ、無理ってやめたもの。





「何故だ?」

 私が答えないからだろうか? アリシフェル殿下が不服そうに重ねて言う。


 顔立ちは綺麗でも、眉を顰め、表情で台無しにしていて、口から、美声なはずなのに、聞いていると疲れてしまうくらい不快の色が見える。

 とても高貴な面倒で偉そうな人だ。まぁ王族だし身分高いからそういうものなのかな。

 

 一方、無言で佇む青い髪、水色の瞳のシライレス様。

 無口で会話がつながらない。声を出せるのかすら謎だ。

 ちゃんとゲームでは声の人はいたから、話せないはないと思うのだけれど。


 皆不快そうとまとめていたが、彼の場合、実のところ機嫌が悪いのかすらよくわからない。

 やけに白い肌。光の灯らない水色の瞳。ぴくりともうごかない表情。顔立ちは綺麗なのでより人形感がある。

 だが、妙な存在感。

 あるのかな? 仕事しないの? と思うくらいのやる気ない表情筋。

 常に無表情。無言。なのに重い存在感。

 

 話しかけても、声も発さず、全くまともに話してくれないので、対話を諦めた覚えがある。嫌いだから口も聞きたくないのだろうなって。


 その隣、赤い髪、橙の瞳のライアネト様は、筋肉いや騎士候補だ。

 凄くムキムキとかそうまではいかないけれど、そこそこ体格がよく精悍な顔立ちをしている。己を鍛えることが好きなようで、暇があれば鍛錬に打ち込んでいたかな。


 でも、中身が力こそ正義みたいで、会いに行くと、か弱い女がとかなんとか言われたりで、面倒になって放置した。

 魔王討伐は行きたくなくても、役柄的に行かないと仕方ないし。


 確かにと思うけれどね。青少年に魔王討伐任せる大人達よとか思うよ。

 王子、公爵令息、侯爵令息、伯爵令嬢でとか言われてもね。

 まぁ王族貴族、果たすべき役割をとかかもだけれど、ヒロイン、元々平民なのだけれどなは確かにあったよ。


 いっそ大人出てきなさいよという気分になりますよね。まぁそこはゲームだし、そういう設定だから仕方ないかな。



 ヒロインが見た目か弱くても仕方ないじゃない。いっそ彼としては、ムキムキ筋肉ヒロインとかならよかったのかな? 横に並び立てたかな? それ乙女ゲーム需要あるのかわからないけれど。でもちょっとそういうスチルあるなら見てみたいかも?


 いや、まぁレベルMAXまで上げても、姿は変わらなかったけれど、魔王ソロ討伐したヒロインはそこそこムキムキでもおかしくはなかったかな。レベルやスキルとかあれこれ考えると。限界突破とか、そうしたら姿変わったとか? いや、ゲームの種類が変わるかそれは。


 姿は可憐なヒロインが、剣振り回すのもある意味いい絵な気もしたけれどね。


 実は着痩せするのですかもだし。剣、長剣だったかな。ダンジョンの奥深くに眠っていたもの。勿論、単独アタック。

 絶対真似はしないようにってやつだけれど。


 支援系魔法、ヒロインがヒロインにかけていたしね。オールマイティキャラすぎて、ゲームしながら、笑いがこみあげたっけな。そしてこんなに伸びるって、ソロにならざるを得なかったらわからなかったなと寂しくなったっけ。




 


   ◇

「……何故私に声をかけない?」

 と殿下が溜息混じりに言い放った。

 私は耳を疑った。


 かけたよ、かけたけれど、何をしにきたとか今忙しいとか、塩塩だったよね?


「何故オレのところにこないんだ?」

 筋肉、いやライアネト様も声高に話しかけてくる。あなたも塩塩だったよ。今何故こんなことを言われているかわからないくらいに。


「……なぜ、もう…………きてくれないのか?」

 言葉話せたんだ。無口、シライレス様まで話しかけてくる。訳がわからない。


 夢よ、夢。いや、塩対応で嫌になっていたけど、こんなデレ方、解釈違いだよ。むしろキャラ崩壊しているよ。

 夢以外ないだろう。でもね、混乱するよ。なんだこれ?

 

 目を伏せ、

「何故倒れるまでひとりで……」

 言いながら途中で口籠もる殿下。





 もしかして好感度ゼロじゃないとか? 


 ゼロとかマイナスとか勝手に言っているけれど、キャラの上に数字が見えるとかでもないのよね。


 ある場所でなら、知りたい攻略対象の好感度を知ることがやる気なら出来るのだが、わざわざ見るまでもなく、めんどうでもあるので初めはとにかく、いちいち見にも行かなくなっていた。

 後はひたすらヒロインのレベル上げに傾倒していたしね。


 なんだこれ? そうであればよかったのになという願望? 

 ないよ、そんなの。ソロ魔王である意味満足しましたよ。


 夢よ、願望を捏造はやめて。




「手も空き、次に声がかかればと思い待っていれば、このようなことになっている。ひとりで魔王と対峙しようなど、何を考えているのだ?」




 何? 回数制だったの? 閉ざされた門を規定回数叩けば、開くとかそういうかんじなの? 会いに行く回数足りなかった、後一回とか何かなそれ。

 

 

 お百度参りかな。


 もう少しでかなったとかかな。夢だからか。そうか、夢だからかもね。


 


 まさか、機嫌が悪かったのは、頼ってくれないと拗ねていたとかいうことかな? 


「か弱い令嬢がわざわざ行かなくても、オレ達がどうにかすると再三言ってきていたのだが、もしかして伝わっていなかったのか?」

 筋肉、筋肉よ、脳まで筋肉か? 一欠片も伝わらなかったよ。


 そして黎明の乙女の特殊魔法でないと、消せないのだけれど? 設定上。だから私がいないは無理。ソロも私だったからどうにかなったのよね。攻略対象達だけなら、恐らくバッドエンドでしょう。



「僕……女性と、話すことが、うまく出来なくて、でも、来てくれる、君のこと………………気になっていた……」

 俯く無口。白い顔が恥ずかしそうで、そして少し赤らんでいるように見えなくもない。動くのか表情。変わるのか顔色。能面レベルだと思っていたのに。


 まさかのまさかすぎて、どうしてそうなるのかわからない。わからないよ。

 魔道士候補というから魔道使えるはずだし、言葉は使うかな? でも、全て無詠唱というならなくてもいけるか、わからないけどとか思っていたよ。

 私が女性だったせいで、無言だっただけだなんて。




 頭を抱えてみると、何故かわたわたする攻略対象達。より解釈違いすぎて、頭が痛い。



 あの好感度、見たかんじだめだめでも実は着実にあげていた? まさかね。なんでも行動していたらあがるのか? ないよね。


 ああ、そうか。夢だからか。自分のいいようにねじ曲げてきた訳かな。


 いや、解釈違いだから。そこまでしなくていいよ、夢。余程私は癪に障っていたのかな? 何の補完かな? いや、いいよ、わからないサービス精神いらないから。


 それにこれ、彼らに答え求められているのかな? いるけれど、なんで答えたらいいの? むしろ彼ら連れて魔王討伐リターンなの? 扱いがさっぱりわからないよ。


 目覚めようよ。違う意味で眼差しが怖いよ。嫌っていると信じていたのに、なんかこの空気ないわ。


 ――これ、ちゃんと目、覚めるんだよね? 





          end


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