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夢を見るならいい夢が見たい

    ◇

 目を開くと、視界にぼんやりと薬の並んだ棚とかが見えた。なんだか重厚感がある気がするけれど保健室っぽい? そんな雰囲気。


 ベッドの上なのか、寝具の感触。私は何故か横たわっている。 



「……サリシア嬢」

 耳に、美声だが、何故か苛立ちが含まれるように感じる低い声が聞こえた。


 聞いたことがあるようなないような? 妙にひっかかりを覚える。


 ――サリシア? 


 声の方へ視線をやれば、銀髪緑の瞳の王子様風、青い髪水色の瞳の魔道士風、赤い髪に橙の瞳の騎士風の人達に、何故か見据えられていた。


 ――なんだこれは? もしかして、夢? 

 

 つい、まじまじ見つめて思っていると、銀髪の王子風が、不愉快そうに眉を顰めながら声を放った。

「何をじろじろ見ている」

 やはり不機嫌そう。




 ――しかし、なんだろう? この煌びやかな人達。

 ありえないけれど、見覚えがあるような? 


 その前に、ここどこなのだろう?


 しかし、どんな設定だ? 私寝転んでいるし。なんなんだろうこれ。


「サリシア・リデイラ嬢」

 この名前。ふと記憶に蘇ったそれ――





 乙女ゲームだっけ? いつだったか、ふとした気まぐれで購入したもののヒロインの名前だった。


 内容は、ヒロインは黎明の乙女とか呼ばれていたかな? 

 サリシア・リデイラ。元平民。白っぽい金髪、淡い紫色の瞳。

 教会から黎明の乙女だと見出され、みるみるうちにリデイラ伯爵家の養女となる。


 あらすじは、特殊な聖なる魔法を使えるようになるヒロインと攻略対象者達が、学園で出会い力を合わせて、共に魔王を倒すようなストーリーみたいにパッケージにみた限り解釈したかなだったと思う。




 私はとりあえずプレイを始めて、早々に色々と諦めた。

 絵がとか話がとかではない。


 攻略対象達と力を合わせることを諦めた。


 ――これ無理かなって。


 本当、攻略対象者なのだよね? 

 そう思うくらい彼らの好感度が中々上がらない。上がらないのに下がりやすいみたい。

 私か、私の選択肢が悪いのかとか思わなくもなかったが、とりあえずゲームを進めてみていた。



 このゲーム、ヒロインに対する好感度を高めないとついてきてくれないみたいで――



 まぁ教会には見出されているが、能力の顕現していない少女が、なんとかの乙女だかなんだかとかいって、魔王討伐に共に向かうとか言われても、普通邪魔だろうしね。

 足手まといと思うよね。連れていきたくないだろう。そりゃ。


 わからなくないよ、ないけれどね。でもそういう設定なのよ。仕方ないじゃない。


 そう、好感度上がれば甘くなるのだろう。なるのかな? 多分きっとなるのだよね? 門前払いレベルではなくなるよね? だよね?


 それが上がらない。難易度高い気がする。まぁ、足手まといの大役果たしそうなの連れていきたくないし、かかわりたくない気持ちはわからなくもない。ないけれどね。


 


 乙女ゲームわからない。乙女の夢って、貴公子達にこんなふうに言われることかな? どこまでもツンツンな塩対応だけれど。


 わからない。わからないよ、乙女の夢。と思って早々に諦めた。


 そりゃあ、まぁ関わりもしないうちから好感度カンストとかないよね。魅了疑うよね。


 まぁ現実考えてみれば、関わっていってからの好感だよね? まぁ関わり間違えば、アウトだろうけどね。

 間違えたのか。

 だから関係が詰んだのか。普通か。普通だな。


 でもゲームでまでひたすら塩対応されたい訳じゃないかな。


 そういうとこリアルにしなくていいのじゃない? 制作の中の人の好みなのかな? でもこれちょっとつらいです。


 関係は築き上げるもの。確かにそうだろうけれど、私には乙女ゲームよくわからない。

 やはり選ぶ選択肢が間違っているのかな。


 もっと手軽にさくっと攻略出来たらよかったよ。


 ゲームだし、ご都合でいいのにそういうところを現実的にしてしまったのね。攻略対象達の心を解きほぐすゲームだったのかもしれない。

 私は早々それリタイアしたけれど。




 仕方なく何か協力を願うにも、迷惑そうだったり、断られたり。しぶしぶだったりならいらないやと。

 さくっと攻略対象からフェイドアウトした。


 私の心は頑なになったよ。ひとりでいいって。


 選択肢、間違えすぎたなのかもしれないけれど、疲れてしまって。


 難易度高とかでしていないのに、何このゲームバランス。攻略対象がちがちの要塞のよう。関わり合いになる気力が削げていくよ。がりがりってね。

 



 でも一応クリアはしたかな。


 ソロで魔王倒したエンド。ソロ討伐出来るルートがあってよかっただった。そうでなきゃクリアもせずに投げていたかも。


 


 ヒロイン魔法も剣術も磨いたよ。特殊魔法もばっちり。かなり頑張った。レベルを上げに上げた。打てばこたえてくれるからね。頑張ればヒロインのレベルは上がるからね。


 攻略対象をあてにする方が大変だから、ならひたむきにレベル上げの方が気楽だった。ちゃんと上がるし。下がらないし。


 恋愛エンド? 知らない子ですね? 魔王倒すゲームですよね? 乙女ゲーム? 一応ヒロイン女性だから乙女ですね。かよわい乙女でも魔王を倒せるように鍛え上げるゲームですね。


 ソロで討伐です。ソロでダンジョン潜り倒したりもしましたよ。鍛えるしかないし。元平民パワーを見せてやれと。


 どこまでもひたすらヒロインの魔力武力を磨きましたよ。磨けば光る子でよかったね。


 絵面はちょっとどうかな? と思ったけれど。ソロで無双。何故かちゃんとルートもスチルもあった。だから間違えてはいないはず。


 いい笑顔で光を放ち剣を振るうヒロイン。


 まぁ構えた剣の放つ特殊魔法の光を、がんがんぶつけていく感じなのだけれど。本当なら攻略対象達に付与したのかもしれない。


 段々殺伐としてきたヒロイン、戦闘狂へまっしぐらかな? 

 まずくない? 乙女ゲームよね? 攻略対象へのフラストレーション魔物に全部ぶつけていない? 


 とか思いながらの無双プレイ。


 自分の仕立て上げたヒロイン、ちょっと格好いいとか思っていた。

 攻略対象を、本来なら格好よくするのだろうけど、いないしソロだし、ヒロイン格好いいからいいかって。



 魔王、ヒロインレベルMAXまで上げていたからか、数発光ぶつけたら消えてしまったよ。

 なんだか弱い者いじめした気分になった。



 あっけなさすぎで、これで世界を救えたのか? 魔王一応消えたけど、魔王を滅ぼせばどうにかなるのか? この世界。消したの孤高のヒロインだけどと、ひとりつっこみしながら、ゲームをしていたよ。



 魔王は滅び、魔王を敵として団結していた人間達の醜い争いがこれから始まるじゃないかなとか思いながら、ひとりぼっちのエンド。エンドロールをみて、そのまましまいこんだっけ。


 一抜けたっとそう思ったかな。二週目する気力はなかった。






 そして、髪を一房手に取ると目に映ったのは白っぽい金髪。この嫌な眼差しを一身に受けている私はヒロイン役か。やめて欲しいな。



 攻略対象達の眼差しが痛い。これって、好感度ゼロかな? もしかして、ゼロかな。もしかしてマイナスとか? 




 ――夢よね。夢よ、夢。この夢、早くさめて欲しいな。




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