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9、自室にて

 夜が明けてシェリーが庭に出ると、馬の世話係のカーティスに声をかけられた。

「シェリーお嬢様、おはようございます」

「おはよう、カーティス」

 カーティスは気まずそうに俯いていたが、意を決した様子でシェリーに言った。

「お嬢様、馬に乗るときは私に一声おかけください。馬が調子を崩すこともありますので」

「……分かりましたわ。申し訳ありませんでした、カーティス」

 シェリーは昨日の遠出を咎められたような気がして、ため息をついた。


 カーティスは、深くお辞儀をするとシェリーの前から去って行った。

「もう、家の馬なんだから文句を言う事なんてないじゃない」

 シェリーが庭から部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、今度はハウスキーパーのサンディーが話しかけてきた。

「シェリー様、少々お時間を頂けますか?」

「なんですか? サンディー」

 

 シェリーは小さな頃から面倒を見てくれているサンディーが大好きだったが、時折見せるしつけの厳しさに辟易することもあった。今日はどうも、サンディーも機嫌が悪そうだ。

「シェリー様、一人で馬に乗って遠くまで出かけたそうですね」

「……ええ、もうしませんわ」

「そうですね。今日は、マナーブックを読み直して頂ければと思いまして、お持ち致しました」


 サンディーは三冊の分厚いマナーブックをシェリーに渡した。

「今日はお部屋でマナーについて復習して頂きたいのです」

「……分かりました」

 シェリーは今更、と思いながらもサンディーの言葉に従うことにして部屋に戻った。

 シェリーは自室の机にマナーブックを並べ、一冊目を読み始めた。おとなしく二冊目の半ばまで、あくびをかみ殺しながらマナーブックを読んでいたが、だんだんとジルの告げ口を思い出して怒りがわいてきた。


「私も行き過ぎた行動だったかもしれません。でもジルの告げ口さえなければ、こんな事には成らなかったのに!」

 シェリーが二冊目のマナーブックを読み終え勢いよく本を閉じたとき、窓の外から脳天気な声が聞こえた。

「シェリーお嬢様! お元気ですか!!」

「……この声は、ジル!?」


 シェリーが窓の外を見ると、ティーガーデンでのんきに父親のカルロスとお茶を飲んでいるジルが手を振っていた。

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