64.王の許し
カルロスが王へ手紙を渡し二週間が経った。
まだ肌寒い早朝、馬に乗った若者がホワイト家の門兵に声をかけた。
「ホワイト辺境伯はいらっしゃいますか? 王からの手紙を届けに参りました」
突然の来訪者に、ホワイト家の門兵は慌てて執事を呼んだ。
「ご足労ありがとうございます。お預かりいたします」
執事が王の使いから手紙を受け取ると、王の使いは帰って行った。
執事は手紙を持ってカルロスの部屋にむかう。ドアをノックし、カルロスに声をかけた。
「ご主人様、朝早くに失礼いたします。王からお手紙がとどきました。いかがいたしましょうか?」
「ああ、やっと来たか。扉を開けていいぞ」
執事が部屋の扉を開けると、カルロスは寝間着にローブを羽織った姿でベッドに腰かけていた。
「ご主人様、こちらです」
執事は手紙をカルロスに渡すと、一礼をして部屋の扉まで下がった。
「もう戻っていい」
「はい、失礼いたします」
執事が部屋を去ってから、カルロスが手紙の封を開いた。
「ふむ、『ご息女のご結婚を心から祝福する。今後も国の発展のためご助力いただきたい』か。シェリーの結婚は問題ないということだな」
カルロスは安どの笑みを浮かべ、手紙を丁寧にたたみ、封筒に戻した。
朝食まではもう少し時間がある。カルロスは手紙を机の引き出しにしまい、ベッドに戻ったが落ち着かない。召使を呼んで着替えると、中庭を散歩しながら朝の空気に触れながら、これからのことを考えた。
「ご主人様、朝食の準備が整いました」
いつのまにか、カルロスのそばに執事が立っていた。
「わかった」
カルロスは食堂に向かった。そこには、まだグレイスもシェリーもいなかった。
カルロスが席に着くと、カップに紅茶が注がれた。
「ありがとう」
カルロスはメイドに声をかけた。メイドはいつになく機嫌のよいカルロスに、少しおどろいたあと「もったいないお言葉です」と言い、微笑んだ。
カルロスが紅茶を一口二口飲んでいると、グレイスとシェリーが現れた。
「おはようございます、あなた」
「おはようございます、お父様」
「おはよう」
カルロスが返事をすると、グレイスが尋ねた。
「良いことでもあったのですか? なんだかあなた、とても嬉しそうですわ」
カルロスはグレイスとシェリーを見た後、口を開いた。
「王から、シェリーの結婚の許しを得た。今日の朝、手紙を受け取ったのだよ」
グレイスが両手を口元に当てて微笑んだ。
「まあ、よかった。これで一安心ね、シェリー」
「……ええ」
見つめてくるグレイスにシェリーは微笑み返す。
「食事が終わったら、クラーク家に婚約の日取りの相談をするために手紙を書こう」
カルロスが言うと、グレイスが頷いた。シェリーは心がざわめくのをこらえた。
「シェリー、今日はドレスの仕立てをするために職人が来る予定になっているわ。忙しくなりそうね」
「楽しみです」
三人が話している間に、スープとパン、ハムやチーズ、卵焼きが食卓に並べられた。
「それでは、食事にしよう」
「ええ」
カルロスが目を閉じ、神に祈りをささげる。
「神よ、この良き日に感謝いたします」
「感謝いたします」
三人はそれぞれ食事を口に運んだ。




