56.ジルとメイリーンの結婚式2
「それでは、これから結婚式を執り行います」
司会者が挨拶をし、神への祈りが捧げられた。
「新郎入場」
静かに大きな扉が開き、新郎が入場した。白いフロックコートに黒のタイと黒のポケットチーフがスマートな印象だとシェリーは思った。
「……ジル、緊張しているみたいだ」
小さな声でアシュトンが言った。
「ええ……」
シェリーもささやくような声で答える。
まっすぐに前を見つめ、静かに歩くジル。所定の位置に着くと、前を見たまま胸を張って立っている。
「新婦入場」
白いふわふわのドレスを身にまとったメイリーンがドアの影から現れた。
軽やかな足取りですべるように歩を進める。
「可愛らしいわ」
シェリーが思わずつぶやいた。
「ああ、とても幸せそうに微笑んでいるね」
アシュトンはそう言うとシェリーを見て口の端を上げた。
「君もあんな風に笑うのかな?」
「さあ」
シェリーはアシュトンに微笑み返すと視線をメイリーンに戻した。
中央の祭壇の前に新郎新婦が揃うと、神父が二人に言葉をかけた。
「あなた方はこれから二人で生きていくことを望みますか」
「はい」
「新郎、ジル・スウェードはメイリーンを妻とし、生涯愛することを誓いますか?」
「誓います」
「新婦メイリーン、貴方はジルを夫とし、生涯愛することを誓いますか?」
「はい、誓います」
ジルとメイリーンは見つめあって微笑んだ。指輪を交換し、それぞれ誓いの書類に署名をすると、誓いの口づけを交わした。
「ジルったら、ずいぶんすました顔をしているわ。メイリーンは泣きっぱなし」
シェリーが困ったように微笑みながらアシュトンに囁くと、アシュトンは目頭を押さえて首をゆっくりと振った。
「二人とも、お似合いだよ」
アシュトンは潤んだ目でシェリーを見た。
神父が主への祈りを捧げ終わると、新郎新婦は振り返り、入ってきた扉に向かって歩き出した。出口に向かう新郎新婦を皆、祝福の笑みをたたえて見守った。
二人が出て行くと、司会者が言った。
「これにて結婚式は閉祭いたします」
「良い式でしたね」
シェリーがアシュトンに言うと、アシュトンが頷いた。
「さあ、ジルの家でパーティーが始まります。お祝いを言いに行かないと」
アシュトンの言葉にシェリーが同意した。
ホワイト家とクラーク家に、アルコット家の主であるスミスが声をかけた。
「これからパーティー会場に向かいます。また、お会いしましょう」
「はい」
人々は教会を出て、それぞれ馬車に乗った。
結婚祝いのパーティー会場であるスウェード家にこんなにたくさんの人が入れるのだろうか、とシェリーは要らない心配をした。




