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辺境伯令嬢の私に、君のためなら死ねると言った魔法騎士様は婚約破棄をしたいそうです  作者: 茜カナコ


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53/80

53.夕食

 雑談を終えたシェリー達は、用意された部屋でくつろいでいた。

シェリーが窓から外を眺めているとドアをノックされ、声をかけられた。

「シェリー様、お夕食の準備が出来ましたので、食堂でお待ちしております」

「ありがとうございます」


 シェリーが食堂に着いた時には、カルロスとグレイス、シリル子爵とシンディー夫人がもう席についていた。

「遅くなってしまい、申し訳ありません」

 シェリーが席に着く前にそう言うと、シリル子爵が笑って言った。

「いえいえ、どうやらアシュトンが最後のようです。皆様をお待たせして申し訳ない」


 シリル子爵が困ったように笑ったところで、アシュトンが食堂にやってきた。

「皆さま、お待たせしてしまい失礼いたしました」

 アシュトンは席に着くとシェリーを見て、微笑みながら会釈をした。

「揃いましたね」

 シリル子爵は全員そろったことを確認してから、食前の祈りをささげた。


「皆様のお口に合うと良いのですが」

 シリル子爵は焼いた鹿肉を切り分けて、ホワイト家の人間の皿に取り分けていった。

 他のごちそうもそれぞれが順にとり、夕食が始まった。

「先ほどもお話しましたが、ジル様の結婚式が楽しみですわね」

 シンディー夫人がグレイスに言った。

「ええ。とても人気のあるかたですから、涙した方も多いのではないかしら」

 グレイスは話しながら、ちらりとシェリーのことを見た。


「私は、心から祝福しておりますわ。お母さま」

 シェリーはすまして言うと、鹿肉を口に運んだ。

「結婚と言えば……アシュトンはシェリー様と、まだ正式に婚約の話をしていないのですか?」

 シェリーはシリル子爵の言葉を聞いて、緊張した表情を浮かべた。そっとアシュトンの様子をうかがう。


「私からシェリー様にはお話してご了承いただいております。カルロス辺境伯と父上へのご報告がおそくなり申し訳ありません」

 アシュトンが赤い顔で言いにくそうに弁解した。

「まあ、その話は改めて後日、行いましょう。アシュトン様の婿入りのこともありますし」

 カルロスが言うと、シリル子爵はかしこまった表情で頷いて言った。

「アシュトンは頼りないところもありますが、誠実さは保証します。よろしくお願いいたします」


 シンディー夫人が仕切りなおすように、微笑みながら言葉を発した。

「あなた、今は明日の結婚式のことを考えましょう」

「ああ、そうだな。明日はめでたい日ですな。先を越されてしまったな、アシュトン」

「ジルのおかげでシェリー様と親しくなれたのですから、順番としてはおかしくないでしょう? 父上」

 アシュトンはそう言って、シェリーの目を見て、はにかむように微笑んだ。シェリーもつられて、くすっと笑った。

 

「その通りですね。ジル様には感謝しないと」

 カルロスはワインを一口飲み、アシュトンとシェリーを交互に見てにっこりと笑った。


 祝いの空気の中、皆それぞれ食事と会話を楽しみ、夕食はおだやかに終わった。




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