44.手紙
シェリーはアシュトンの両親に手紙を書いた。
『シェリー・ホワイトと申します。突然のお手紙を失礼いたします。アシュトン様には、大変お世話になっております。ご挨拶の為、今度の週末にお伺いしたいのですがよろしいでしょうか?』
「……婚約のご挨拶に伺うためのお伺いって、こんな感じで大丈夫かしら……?」
シェリーはかき上げた手紙を両親に見せて相談した。
「まあ、大丈夫だと思うぞ?」
「ありがとう、お父様」
シェリーは安堵の息をつき、手紙に封をした。
「シェリー、失礼の無いように気を付けるんですよ。手土産は何を持っていくつもりなのかしら?」
シェリーは母親に笑顔で答えた。
「アプリコットのパイを焼いて行こうと思っています」
「手伝いましょうか?」
「いいえ、お母様。私、自分で作ります」
シェリーは使用人に手紙をアシュトン子爵の両親に渡すよう頼むと、アプリコットのパイを焼く準備を始めた。
「材料はそろっているようね。……明日、一度焼いてみてお父様とお母様に味見をしてもらいましょう」
翌日、シェリーはアプリコットのパイを焼き、昼食のデザートとしてメイドに配膳させた。
「おや、今日はデザートにパイがあるのか。めずらしい……」
「お父様、それは私が焼いたものですわ。お父様とお母様に味を見てほしいの。……大丈夫そうだったら、アシュトン子爵の家に持っていくつもりなんです」
「そうか、それでは一口いただこう」
カルロスはシェリーの焼いたアプリコットのパイを一口食べて、にっこりとほほ笑んだ。
「うん、おいしいよ、シェリー」
シェリーの母のグレイスも、アプリコットのパイを食べて、笑顔で頷いている。
「良かった。それじゃあ週末に持っていけるように、もう一枚焼きますわ」
シェリーもパイを一口食べ、ふう、と息をついた。
「うん、良く焼けています」
シェリーたちは食事を終えると、それぞれの部屋に戻っていった。
「さて、ご挨拶にはどのドレスを着ていこうかしら?」
シェリーはクローゼットを覗き込んで、いくつかのドレスを取り出し、見比べていた。
「……このさわやかな水色のドレスがいいかしら?」
お気に入りのドレスを見つけたシェリーは、水色のドレスを着てみた。
「悪くないわね……じゃあ、このドレスでご挨拶に行きましょう」
シェリーはクローゼットの一番取り出しやすいところに水色のドレスをかけ、クローゼットの扉を閉めた。
「ああ、ドキドキしてきましたわ」
シェリーはアシュトンの家への挨拶を控え、緊張していた。
「アシュトン様は、私のことをどんなふうにご両親に紹介しているのかしら……?」
「お嬢様、シリル・クラーク様からお手紙が届いております」
「はい、ありがとう」
シェリーは手紙を受け取ると、丁寧に封を破いた。
「ああ、アシュトン様のお父様からお返事が来たわ。……丁寧なお手紙ありがとうございます、当日お待ちしております……。うん、まずは大丈夫だったみたいですね」
シェリーは、ふう、と息をついて手紙を戸棚にしまった。
「週末……うまくご挨拶できると良いのだけれど……」
そう言うと、シェリーは机に向かい本を読み始めたが、気もそぞろだった。
気づけば、窓の外には夕暮れが迫ってきている。
「シェリー様、そろそろ夕食の時間です」
メイドが扉の外からシェリーを呼んだ。
「まあ、もうそんな時間? すぐに行きます」
シェリーは読みかけの本を置き、食堂に向かった。




