39.帰宅
自宅に着き、屋敷の中に入ると父親のカルロスがシェリーに言った。
「シェリーのことをポール王子に聞かれたよ。何のためにそんなに頻繁に隣国へ行っているのかと。とりあえず、親しい友人が出来たようだと言っておいたが……」
「……その通りですわ、お父様」
「隣国のトラモンタ国は、今は友好的だが、先代の王は戦争で国を広げていたからな。我がスオロ国はまだ警戒しているのだよ、シェリー。あまり思慮なく隣国へ遊びに行くのは危険かもしれないぞ」
「……はい、お父様」
しょんぼりとしたシェリーに、母親が声をかけた。
「シェリー疲れたでしょう? もうシャワーを浴びたら着替えて寝てしまいなさい」
「はい、お母様」
シェリーは浴室へ行き、温かいお湯で汗を流した。綺麗になった体を清潔なタオルで拭き、部屋着に着替えると自室に戻った。
「舞踏会、豪華だった……。ジル様とメイリーン様の結婚が決まったと言われたわ。……ジル様はあまり嬉しそうではなかったようだけれど……」
シェリーはベッドに腰かけて、窓から見える街の明かりをぼんやりと眺めていた。
「アシュトン様は……あんなにダンスが上手だとは思わなかったわ。今も手に、ぬくもりが残っているみたい……」
シェリーは自分の手を見つめ、微笑んだ。
「シャラ王女も、ポール王子も、私のことを気にかけていたみたい……。やはり、スパイをしているのかもしれないと思われてしまったのかしら?」
シェリーはポール王子の探るようなまなざしを思い出して震えた。
「スパイなんて恐ろしい……。やはり隣国に行くのは控えたほうがいいのかしら……」
そう言いながら、シェリーはアシュトンの優しい微笑みを思い出して頬を染めた。
「アシュトン様は……私のことをどう考えていらっしゃるのかしら」
シェリーはベッドに入り、目をつむった。
困ったような表情のジル、嬉しそうなメイリーン、屈託のない笑みを浮かべるアシュトン……次々と思い出したシェリーはゆっくり息を吐いて、頭を空っぽにしようと試みた。
「今日は疲れたわ……」
シェリーは自分の体が重くなるのを感じた。
ほどなく、シェリーは眠りについた。




