26.ジルの家
ジルの手紙には、王宮とは違う住所が書かれていた。
その場所は王宮から近く、迷うことはなかった。
「シェリー様、つきました」
従者がシェリーに言った。
「ここがジル様の住むお屋敷……」
ジルの住む家は、シェリーの家と同じくらい大きかった。
装飾はシンプルで、家の前や庭には異国の植物が植えられていた。
「何か御用でしょうか?」
家の前で馬車から降りたシェリーに、ジルの家のメイドが声をかけた。
「あの、ジル様のお見舞いに参りました。私、シェリー・ホワイトと申します」
「ああ、シェリー様ですか。少々お待ちくださいませ」
メイドは家に入っていった。しばらくすると、先ほどのメイドが戻ってきて言った。
「ジル様がお待ちです。どうぞこちらへ」
「はい」
シェリーはメイドの後について、屋敷に入っていった。
屋敷の中には、いろいろな国の絵画がかざられている。
「ジル様の部屋はこちらです」
メイドはドアをノックしてから言った。
「シェリー様がいらっしゃいました」
「はい。どうぞお入りください」
メイドがドアを開ける。
「お怪我の具合はいかがですか?」
シェリーはベッドに寝ているジルを見て、悲しそうな顔をした。
「まあ、足を怪我されたんですね」
「おかげで動けません。こまったものです」
ジルは笑って言った。
「お見舞いにお菓子と本、お花をお持ちしたのですが……」
「ありがとうございます」
ジルはシェリーの見舞いの品を受け取ると、花はメイドに飾るように言い、本とお菓子はベッドサイドの机に置いた。
「痛くはないのですか?」
笑顔で接するジルに、シェリーがたずねた。
「そりゃ痛いですよ。でも、一日中しかめつらをしていても、治るわけじゃない」
そう言って、ジルは怪我を治すために固定している足をなでた。
「本は……ああ、町ではやっている恋愛小説ですか。シェリー様らしいですね。お菓子は……わあ! チョコレートは大好物です。ありがとうございます!」
ジルはおもちゃを見つけた少年のように目を輝かせて微笑んだ。
シェリーはその笑顔に、ドキリとした。
その時、ドアをノックする音がした。
「メイリーン様がいらっしゃいました」
「ああ、通して」
「はい」
メイドの陰から、かわいらしい少女が現れた。
「こんにちは、ジル。あら? そちらの方は……?」
「メイリーン、こちらはスオロ国辺境伯令嬢のシェリー・ホワイト様だ。シェリー様、こちらは僕の幼馴染のメイリーン・アルコットです」
ジルの紹介の後、メイリーンはシェリーに向かって挑むような笑顔で言った。
「私、ジル様の婚約者のメイリーンと申します」




