16、帰宅
「そろそろ、ティーパーティーも終わりにしませんと、シェリー様のお帰りが遅くなってしまいます」
ジルの言葉に、シェリーとセリシア王女はハッとした。
「まあ、そんな時間でしたの? それでは帰る支度を始めましょう」
「そうですわね」
ジルと残っていたセリシア王女の従者は荷物を馬車に積んだ。
「それでは、シェリー様をお屋敷まで送って参ります」
「頼みましたよ、ジル」
セリシア王女が言うと、シェリーは遠慮がちに発言した。
「一人でも大丈夫ですわ」
「そう言うわけには参りません。何かあったら、大変ですから」
セリシア王女の台詞にジルは頷いた。
「そうです。それに面倒な方と鉢合わせしたときに、お一人では無用な気遣いをされるかもしれませんよ?」
ジルの言い分に、シェリーは口元を歪ませた。
「分かりましたわ。それではジル様、送って下さいませ」
「かしこまりました。シェリー様」
ジルはシェリーが馬に乗るのを手伝った後、自分も馬に乗った。
「それでは、今日は楽しかったですわ、シェリー様。また、お会い致しましょう」
「ええ、喜んで。セリシア王女」
シェリーとセリシア王女の挨拶が終わるとジルは馬を歩き出させた。
「それでは送って参ります。」
「よろしく頼みますよ、ジル」
セリシア王女の馬車が先に出発した。
「さあ、行きますよ? シェリー様」
「分かりました」
ジルの後を追う形で、シェリーも馬を走らせた。
馬が走っているときに、ジルはシェリーに尋ねた。
「シェリー様は自分の国の歴史や情勢に明るいですか?」
「……それなりに」
口ごもるシェリーを見て、ジルは微笑んだ。
「ユリアス王子の方が詳しいかも知れませんね」
「え?」
「勉強熱心な方ですから、隣国についても良く学んでいらっしゃいます」
シェリーは顔を赤くした。
「おや? シェリー様はユリアス王子がお気に召されたのですか? 残念ですね、出会ったのは私の方が先ですのに」
ジルががっかりした様子でそう言うと、シェリーは失笑した。
「また、心にもないことをおっしゃるんですね」
「いつだって私は真剣ですよ?」
ジルはおどけた表情で言った。
しばらく馬で走り、二人はシェリーの屋敷に着いた。
「ありがとうございました、ジル様。ユリアス王子とセリシア王女によろしくお伝え下さいませ」
「ええ。それでは、また。シェリー様もお疲れでしょう? 良く休んで下さいませ」
ジルが去ったのを確認してから、シェリーは馬を使用人に返した。そして、シェリーは屋敷の図書室に向かった。
「あら? シェリー様がご自身から図書室でお勉強をなさっているなんて、どういう風の吹き回しですか?」
サンディーが驚いてシェリーに声をかけた。
「たまには私も知りたいことがあるのですよ、サンディー」
サンディーは心配そうに、シェリーに尋ねた。
「熱でもあるのではないですか? シェリー様」
「まあ、酷い言い方ですわね」
シェリーは苦笑いをした。