15、湖2
「セリシアに良い友人が出来たようで嬉しいです」
ユリアス王子がそう言って微笑むと、シェリーは顔を赤くした。
「シェリー様、社交辞令ですよ?」
ジルが水を差す。
「セリシア王女を悪の道に引きずり込まないようお願い致します」
「まあ、ジル様! そんなこと致しませんわ!」
シェリーが主張すると、セリシアが目を輝かせた。
「悪の道ですって!? ドキドキしてしまいますわ」
「やめて下さい、セリシア様。私は悪の道に染まってなどおりません」
シェリーがそう言うと、セリシア王女はがっかりした表情を浮かべた。
「ところでシェリー様。貴方のいらっしゃる国のアルバート様とはどのような人物ですか?」
「え!? あ、アルバート様は仕事には誠実な方だと思っておりましたが……」
ジルが口を挟む。
「国境警備に女性を連れ出したり、婚約破棄をしたり、女性関係はいささか不安が残りますね」
「シェリー様の前で、そんなことを言わなくても」
セリシア王女の言葉を聞いて、シェリーは首を横に振った。
「いいえ、ジル様のおっしゃる通りですわ。ただ、私の居る国で、一番強い魔法騎士であることは確かですわ」
「なるほど」
ユリアス王子は真面目な顔で頷いた。
「何故、そんなことを聞いたのですか?」
シェリーが訊ねると、ユリアス王子は答えた。
「実は、北のギアチの国に視察に行く予定がありまして。できればアルバート様にご同行願いたいと思っております」
シェリーは苦笑いしながら言った。
「でしたら、私ではなくお父様におっしゃってください」
「そうですね」
ユリアス王子は微笑んで答えた。それは、あまりに美しい表情だったのでシェリーは見とれてしまった。
「それでは、お父上によろしくお伝え下さい。私は城に帰ります」
ユリアス王子はそう言うと、城に帰っていった。
「私たちは、もう少し遊んでいきましょう」
「そうですわね」
セリシア王女とシェリーが話していると、ジルも言った。
「お茶もお菓子もまだ残っていますよ。新しい紅茶をどうぞ」
「ありがとう」
三人は湖の畔で、ティーパーティーを楽しんだ。