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5.

彼に会ったあと、私は知恵熱なのかなんなのか、高熱が出て何日もうなされた。この小さな体では受け止めきれなかったんだと思う。



熱が下がってもボーッとしているので、両親はずいぶん心配していた。それでも両親には「生まれ変わった」ことは言わなかった。たぶん気が付いているだろうけれど、話したくなかったし、話したとしても理解されるとは思えなかった。



私はこの世界でどう生きていくのが正解なんだろう。あの人みたいに、自分の知識や経験を人のために使うのがいいのか。



私はこの不便でのんびりした世界が好きだ。私のいるべき場所じゃないんじゃないかって思うときもある。なんで私はここにいるんだろうって。でも、私はもうユーリなのだから、ユーリとして生きていたい。



「ママ」

「なぁに?おやつ?」

「ママ、私は結婚しないかも。そうだったらずっと一緒にいていいでしょ」

「うーん、そうねぇ」

「嫌なの?」

「ママはパパとずっと一緒にいたいの。ユーリが大きくなってまた2人になったら、また昔みたいに旅行にいったりお茶したりゆっくりして過ごそうねって約束してるのよね」

「…ユーリが邪魔ってこと?」

「そうね、邪魔ってわけじゃないけど今がんばれるのはそれがあるから。パパと結婚できて幸せだけど、今は2人で戦ってるって感じなのよ。生活もそんな裕福じゃないし、子供もまだおチビちゃんだしね」

「じゃあさ、弟か妹つくって!」

「は!?…アハハッ!!なーに言ってんだか」



照れすぎでは?



彼は相変わらず、この世界のために「レイ様」としていろいろと頑張ってる。そこは素直に関心する。一度、騒動の後にパパに「もうレイ様に会いたくない」って伝えたら「わかった」って短く言われた。涙ぐんでると「なーに泣いてる!」と大笑いして、私をぎゅーっと抱きしめた。



「俺たちには俺たちの生き方がある。レイ様みたいにならなくていいんだよ」



パパは全部見透かしてたみたいだった。私が何に悩んでるのか。私は転生したのかもしれないけど、この世界でひっそり生きることにした。ううん、ひっそりじゃなくて「普通」に。



彼からはなんのアクションもなかった。そういうところは転生前と同じだった。何か言いたげな表情で、それでも私から完全に離れてはくれなかった。今回は本当に離れたようで、私も平穏な気持ちで日常を過ごすことができた。






甘かった。私は彼のこと、全然わかっていなかった。

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