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4.

「お前、バカだなーーーー」


あれから気まずいまま僕とユーリの父親は別れ、村の人に案内された宿に入った。そこから宴会、2次会、3次会と続き、しこたま呑まされて帰ってきた。秘書としてついてきたこの男は、ゲラゲラ笑いながらベッドに転がっている。


「クソッ」

「おやおや、みんなの憧れレイ様がそんなお言葉を」

「……」

「おー怖い、その顔をみんなに見せてやりたいな」

「…作戦変更だ」

「俺はもう諦めた方がいいと思うよ?あの子、本当に嫌いだと思うよーレイのこと。その上、ご両親にも不審がられて。客観的に見てもう無理だろ」

「……チッ」

「まぁ、もともと無茶な作戦だったよ。お前の計画では、前世の身分を明かさずにユーリちゃんに近付いて、人柄で心を開いて信頼を勝ち取ってまた結婚だろ?無理だって普通に」

「無理…じゃない、はずだったんだよ!」

「じゃあさ、なんですぐ言っちゃったわけ?」

「それは……」

「それは?」

「言っちゃったんだよ、思わず」

「なんで?」

「…エゴだよ。やっぱり、自分のこと見て欲しかったんだろうな。会えてよかったって思ってもらえるかもって期待してたんだろうな」

「待て待て、お前の話だと前世に50年は別居してたんだろ?それなのに?」

「うん…」

「どんだけピュア?」



僕が死んだ時、神様らしき人が現れた。

そして、僕が転生することを告げた。



「君をこことは違う世界に転生させることにしました」

「転生?どうして?」

「そうだなぁ、気まぐれかねぇ」

「そんな感じでいいんですか?」

「え、神様なんてそんなもんだよ。君もよく分かってるでしょー」

「まぁ…」

「ふふ、いま気分いいから願い事があれば聞いてやらないこともないよ?」

「じゃあ、僕の妻も同じ世界に転生させてください」

「えー」

「そうでなければ転生しなくていいです」

「んー」


神様は僕のことをじっと見た。何もかも見透かされているような、不思議な感覚にドキドキする。


「なんで?」

「僕は妻ともっと一緒にいたかったんです」

「ふーん。ま、いっか。他に何かある?」

「他は特に」

「欲がないね。彼女が好きそうな見た目にするとか、チートモードにするとかあるよ?」

「別にそこは、いいかなぁ」


神様はふふんと笑って、僕の頭をサラッと撫でた。


「君みたいな子がいるから孤独な僕も楽しみができる」


神様はしばらく何かを考えた様子で、腕組みをしながらチラリとこちらを見るとにっこりと笑った。


「ま、楽しみなさい」


僕は何か温かいものに包まれて意識を失った。



僕は神様の言う通り何かに生まれ変わっていた。それに気が付いたのは首が座っていたから生後3か月くらいだろうか。そこからたくさんあるのどかで豊かな時間を、ユーリとどうやり直すか考える時間に費やした。



生まれたのがさして裕福でもないけれど商家だったこと、この世界が日本に比べて文明がそこまで進んでいなかったことが幸いして、いろいろな商品を発明しては売って「神童」となった。実家がすごいスピードで「大企業」になり、その莫大な資産を慈善活動にも費やし、国中に名前をとどろかした頃には僕は10歳になっていた。



この国の王に名誉ある賞をもらったのも同じ年だ。

そしてその表彰の場で、打ち明けた。



「僕は別の世界から生まれ変わった人間です。生まれる前の記憶があるのです。今までの商品はその世界で使っていたものたちです。僕のほかにも転生している人が必ずいるはず。もし、あなたの子供が訳のわからない言葉を使ったら、例えば『あなたは誰』みたいな言葉を話し始めたら、必ず僕に知らせてください」



これまでの活動と、この世界の住民の素直さが幸いしてか、この告白を受け入れてくれる人が多かった。そして、いつのまにかみんなが僕を「レイ様」と呼び出した。僕はそうして、必ず生まれてくるであろう僕の妻と会うために時間をかけて準備した。



「準備したんだよーーー何年かかったんだよ俺!!」

「そうさなぁ…18年か?」

「そうだよ、18歳までかかるなんてと思ったよ。彼女が長生きしてくれて嬉しいって気持ちと早く会いたいって気持ちと」

「えーと、12歳差か?まさか6歳まで目覚めないなんてなぁ」

「…色々と誤算はあったよ」

「まぁな、でもまぁ確実なのは初対面は失敗だったってことだ」

「立ち直れない…」

「いいさ、これからだよ。こんだけ執念深くひとりの女を追ってるやつなんかなかなかいないし、神様公認なんだ。なんとかなるさ」



秘書はベッドからパッと立ち上がると上着を掴んでニコーっと笑った。


「まさか…」

「こういう時は酒しかないだろ?夜の街の方が楽しいぜ」

「俺はいいよ」

「ふーん、じゃ俺は行ってくるわ。じゃね」

「おい!ヒュー!」

「あ、帰ってこなかったらそういうことだから、な!」

「な!じゃねーよ」

「いやーん、こわーい」


秘書という名目ではあるが、幼馴染であり親友だ。全てを打ち明けてるのは両親とこの幼馴染しかいない。女癖の悪さが気になるが、かなり助けられている。

これからどうするか、またひとり作戦会議だ…。

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