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七人の亡霊
歴史から抹消された七人がいた。
彼らはかつてこの世界を救った英雄、〝神託者〟と呼ばれる神の遣いだ。
魔法とは異なる不思議な能力を身に宿し、ヴァルアネスの地に災いが訪れし時、その力をもって打ち払うといわれている、神聖な存在。
人々は、そんな彼らが罪など犯すはずがないと心から信じきっていた。
けれどそれは、無情にも裏切られた形となる。
彼らは普通の人間と同じく、あっけなく罪を犯したのだ。
ある者は能力を悪用して詐欺や盗みを働き、
ある者はそれに加担し、
ある者は暴走により災害レベルの被害を招き、
ある者は人を拉致して未知の方法で体を乗っ取り、
ある者は民を心ごと支配して奴隷のように働かせ、
またある者は、浮遊する双剣で民を殺して回った。
残りの一人は、生死の不明を理由に消されたが――それは、幼き神の物語にて語られる事だろう。
この物語の主役は、彼のような光を目指し昇っていく英雄ではない。
その逆の、どこまでも地に堕ちていった男。
何百人もの民を殺し、自国を血の海にしたとされる残虐な少年王、ジェクス・アルスタッドが主人公だ。