1回目 生きるために
「…………」
無言で歩いていく。
目的はない。
理由もない。
ただ、廃墟と化した町の中を歩いていく。
生きてる人間がいるのかどうか。
それすらもあやふやになっている。
まだ生き残ってる者がいるかもしれないが。
それを探すつもりもない。
そんな事をしてる余裕がない。
何せ、潜んでるのが化け物である可能性もある。
下手に探りを入れて、そんなのに遭遇したら面倒だ。
不意打ちを食らえば死ぬ可能性がある。
その危険をおかしてまで生存者を探す必要はない。
少なくとも彼には。
生きていくだけなら今のままで十分。
他人は必要がない。
むしろ、自分以外の誰かは危険だとすら思っている。
何せ、人がいきない化け物になるのだ。
たとえ今の時点でまともであっても油断出来ない。
何かの拍子に化け物に変化したら、手がつけられない。
そんな危険を抱えるくらいなら、一人の方が無難だった。
今日も一人であるき、生きていくのに必要なものを確保する。
それくらいなら何という事もない。
化け物は危険だが、それはいつだって同じだ。
むしろ、わかりやすくなっただけマシかもしれないと彼は思う。
(素直に襲ってくるからなあ)
これが人間だったら、何を企んでるか分からない。
上辺の笑顔を武器に近づき、ふざけた事を仕掛けてくる。
そんな人間よりは、化け物の方がマシだった。
対処が単純で済むのだから。
そんな化け物が建物のかげからあらわれた。
化け物になってまだ日が浅いのか、人間の特徴を残してる。
首が異様に長く伸び、目が飛び出しているくらいだ。
そんな人間もどきに向けて、銃を向ける。
死体になってた警察官からもらったものだ。
ためらいなくそれを化け物に向けて撃つ。
元が人間だからだろう。
それほど強くはない。
急所に銃弾が当たれば死んでくれる。
もっと変化が進んでいればそうもいかなくなるが。
目の前の奴はそこまで強靱ではなかった。
体に穴をあけると、そのまま倒れていく。
そして死体は蒸発するように気化していき。
後には小さな玉を残して消えていった。
その玉を手に取って歩いていく。