~妖狐 対 手の目~
年季の入った黒光りする柱と真っ白な漆喰の白壁で構成された、まるでどこかのお寺の宿坊のような場所。
板張りの廊下を進んで、大きく『弐八番』と筆文字で書かれた襖の前に立つ。
「やあ、崇弘とアカヨロシだね。どうぞ入ってくれ。」
声を掛ける前に襖の向こうから声がした。
崇弘が作法通りに両膝を突いて襖をスライドさせると、布団の上に浴衣着で上体を起こしている青年が、目を閉じたままこちらに向いていた。
「久しぶりだね、キクニサカヅキ。四年ぶりぐらいかな。」
挨拶をした崇弘が膝でにじって部屋に入り、後に続いていた少年が襖をそっと閉めた。
「そうだな。久しぶりの再会がこんな所で味気無くて悪い。アカヨロシも、わざわざニンゲン界までご苦労だったな。」
ルーディー×マッシブに整えた、現代的で落ち着いた髪型の青年は崇弘に次いで、その隣の少年に微笑んだ。
「これでも結構楽しませてもらいましたよ兄さん。聞いていたよりニンゲン界は盲人に優しくなっていました。パラリンピックを見据えての政策の影響と言うことでしょうか?」
「為政者の不純な動機が発端でも、それなりに社会は動いて行くものだからな。さて、急ぎ呼び立てて申し訳なかった。崇弘。」
浴衣着の青年、キクニサカヅキが肩をすくめて苦笑いを浮かべた。
「ああ、急いで来たので手土産が『瀬戸大橋まんじゅう』だけになってしまったよ。」
崇弘は冗談混じりに笑って、紙包みを畳の上に差し出した。
キクニサカヅキはひょいと左手を掲げて、その掌の中央にある大きな目をそちらに向けた。
「はは。お茶請けにありがたくいただくよ。それでだ、早速本題なんだが、ニンゲン世界で妖狐がらみの事件は起きているかい?」
「いや、いくつか妙な事件は起きてはいるが、妖狐がらみのモノは今のところ聞いていない。」
「そうか・・・」
短く唸ると、キクニサカヅキははらりと浴衣をはだけてその背中を崇弘に向けた。
背中には晒が巻かれ、出血の跡が赤茶色く滲んでいる。
「この通りのザマさ。不覚を取ったものだ。後背を取られるとは、俺もまだまだだよ。せっかくいただけた『菊に盃』の名が泣くってもんだ。」
「・・・痛むのか?」
「まあ、全くの無痛とは言わないさ。この傷を喰らった経緯を話す。今後の対策に役立ててもらいたい。」
キクニサカヅキは、浴衣を羽織り直すと閉じた目のまま崇弘に向き直った。
大仏で有名な東大寺の北北西に位置する正倉院。校倉造りで平安期の多くの美術品を収蔵した高床式の建物。
現在は宮内庁が管理しているユネスコ世界遺産である。
貴重な美術品や歴史的資料を所蔵していることで有名であるが、決して表に出せない収蔵品も『目録』の中に記されている。
『里』の中の、大きな白壁と杉材で出来た長者屋敷風の平屋の建物に、六尺ほどの黒漆に藤巻きの杖を突きながらキクニサカヅキがその大きな引き戸の前に立った。
「御免! キクニサカヅキ、参りました。」
軽い音と共に引き戸が開き、禿の髪型をした童が彼の手を取って屋内へと誘った。
通された20畳ほどの広間には白い裃を纏った二人の長老と神職の衣装を纏った初老の男性が一人、お互いに向き合うように座り、それぞれの前に朱漆の御膳が配されていた。
「呼び立てて済まなんだな。まあ、近くに座れ。」
ぱっと見、仙人のような白長髪、長髭の人物が目を閉じたまま、キクニサカヅキに声を掛けた。
短く返事を返すと六尺杖を小脇に抱え、右掌の目で場所を確認してそこに座った。
すぐに禿頭の童が朱塗の膳とお銚子を運んで来た。
「さて、お主を呼び立てたのはほかでもない。」
仙人の隣に居た坊主頭の長老が、お猪口を膳に置いてキクニサカヅキに目を閉じたままの顔を向けた。
「こちら、春日の鬼狩り辻井殿じゃ。」
この長老は左手をかざして神職装束の人物、次いでキクニサカヅキをその掌の大きな目で捉えた。
神職装束の男性は軽く頭を下げて口を開いた。
「お初にお目にかかります。春日大社の鬼狩り、辻井泰孝と申します。『手の目』の中でも遣い手のキクニサカヅキ殿に助力をお願いしたく、参りました。」
「文書や通信を使わないところを見ると、大ごとが起こっていると考えて差し支えないでしょうか?」
六尺杖を傍らに置いたキクニサカヅキは、右掌の大きな目を開いて泰孝を見つめた。
妖に凝視されるのには慣れていないのか、少し泰孝の目が泳ぐ。
「は、はい。・・・『殺生石』はご存じですか?」
「平安京を混乱させた妖狐の骸と聞いております。石と化してもその魂はまだその中に宿っているとも。」
「その殺生石の破片が正倉院で保管されていたのです。」
泰孝はツキニサカヅキの顔を見つめた。
「ほう? あの地に結界が施されておるのは知っておりましたが、封印出来るほどの呪では無かったはずでは?」
「はい。ですから美術品や資料とは別に、中倉の『呪物品』に関しては宮内庁から委託されて、春日大社の鬼狩衆が管理を行っております。」
少しずれた烏帽子を直して、泰孝はふぅと息をついた。
「先日、そこで管理を行っていた若手の鬼狩りが『殺生石』に魅入られてしまいまして・・・それを持って出奔してしまいました。」
「そこでお主に春日との調査、回収に協力してもらいたいのじゃ。」
仙人のような長老が口を開いた。
「我らの『視力』はニンゲン達の見えぬものも捉えるそうじゃ。その出奔した鬼狩りの足跡を辿って、回収してくれ。もし九尾の妖狐が復活するような事が起これば、17年前の大戦の再来ともなる災いになりかねん。」
「ほう、春日鬼狩りからの依頼か。伊勢に報告が上がってこなかったって事は、出来るだけ内々に処理したかったんだな。」
ここまでの話を聞いた崇弘は、顎に手を当てて唸った。
「ああ、ニンゲン達の言う『オトナの事情』と言うヤツだろ? 春日鬼狩りの精鋭3名と一緒に、その出奔した奴の『残像』を見ながら捜査して、こともあろうに、君の居る鴻池市郊外に行き着いたって訳さ。」
苦笑いに頬を緩めたキクニサカヅキは肩をすくめた。
そして話は強制回収の場面に移った。
「天神橋駅」の西側。線路を挟んで東側の住宅街と異なり、商業施設が立ち並んで賑やかな雰囲気のエリア。
その中の一角。表通りから一本入った通りに面した改修中の雑居ビルが、工事を半ばに作業がストップしたまま放置されていた。
黒漆塗りの愛用の六尺杖で足元を薙ぎながら、キクニサカヅキは街灯も少ないこの裏通りを、そのビルに向かって進んで行く。
その速足に遅れまいと、スーツ姿の三名の屈強そうな男たちが続く。
「よく、この暗がりをこの速度で歩けるな。」
男の一人が話しかける。
「うん? 特に考えた事なかったな。俺の種族はニンゲンの言う可視光線の影響は受けないから。」
「ヤツの居場所が追跡出来るのは『匂い』なのか? 警察犬みたいに。」
「説明すると、この大気中には霊力に反応する粒子が漂っていてね。君たち鬼狩りのように一般人よりも強い霊力はその粒子に長く軌跡を残すんだ。個人で異なるその色の残照を追うことで、その目標の人物を探っているんだよ。」
ツキニサカヅキは鬼狩衆の方を見て微笑んだ。
普段閉じている両目が開き、水晶のような光沢の真っ白い眼が街灯の薄明りを反射した。
やがて4人は一見廃墟のように見える建設途中のビルの前に立った。
「ここだ。ここの3階から『霊光』が漏れ出ている。ターゲット本人が居るはずだ。」
「よし、後は俺たちが取り押さえる。ご苦労だった。」
三人は赤外線感応のナイトゴーグルを装着して、真っ暗な廃墟の中に踊り込んだ。
「いや、俺も参加させてもらうよ。」
ひとり呟いてキクニサカヅキも六尺杖で足元を薙ぎながら遅れて後に続いた。
コンクリートむき出しの階段を上がる事しばらく。
二階の階段の踊り場を過ぎた辺りで三人の男たちがすごい速足で足踏みをしていた。
その横を悠々とキクニサカヅキが通り過ぎる。
(ふむ? 幻影結界を敷いているのか?)
くんくんと周囲の匂いを嗅ぐしぐさをして、一番奥の、かつてビリヤード場であった店舗入り口の横に立つ。
右手をかざして、その掌の中央の大きな目でドアの状態を確認する。
店舗の引き戸には鍵がかかってはいないようだが、扉の向こうにはガラス越しに、足元に塗料の空き缶が並べられているのが見えた。
(「鳴子」のような仕掛けか。真っ暗闇では有効な罠だ。と言う事は、侵入者に対して「即反撃」か「即逃亡」のどちらかの体勢を執っているな。)
キクニサカヅキは壁に右手をぺたっと押し付けると深く息を吐いた。
壁に3センチぐらいの無数の溝が浮かび、それがくわっと一斉に赤い光彩の眼を開く。
その眼がぐりんっと扉の上に視線を集めた。
「そこっ!」
キクニサカヅキは左手の六尺杖を逆手に構え飛び上がり、視線の集中する一点に向けて杖の石突を突き立てた。
多孔質の白いジプトンボートの一角に黒い六尺杖がめり込む。
その天井が苦しそうな呻き声を上げて渦を巻き、変じた白いモヤの塊が扉の内に流れ込んだ。
それと同時に後方からナイトゴーグルを装着した三名が駆けて来た。
「いっ、いつの間にっ?」
「そんなことより、来るぞっ!」
キクニサカヅキは六尺杖を右半身に構え、腰を落とした。
低い振動音が響く。
引き戸が吹き飛び、ひしゃげたアルミサッシと砕けたガラスが飛び散る。
ほぼ通路いっぱいに、ふさふさとした体毛をなびかせた大きなキツネが飛び出して来た。
金褐色の体毛に、顔と尾の先の白色が夜景の薄明りに輝く。
くまどりのような朱色の眼輪がくわっと見開かれ、金色の瞳が輝き、真っ赤な口からは鋭い歯列がこちらを向く。
大型犬の唸り声と共に、その獣は宙に舞った。
春日鬼狩りの一人が懐から数枚の和紙の札を取り出し、宙に撒く。
札は紙垂の形に展開して鎖のように繋がり、廊下の壁や天井・床にその端に根を下ろす。
紙の鎖にその獣がぶつかると、激しい電光と破電音が辺りを覆った。
獣は短く呻くと突き破った扉の方へとその身を躍らせた。
防御陣を張った鬼狩りが印を切ると、紙の鎖がはらりと切れて垂れ下がる。
身構えた四人がその獣を追って部屋の中に飛び込んだ。
かつてビリヤード場だったこの空間は、機材が撤去されてコンクリートの壁面が剥き出しとなり、柱や壁から飛び出した配線コードが枯れ枝のような姿をさらしている。
その部屋の窓際の柱の横に、身の丈よりも大きな金褐色の獣を従えた、パーカー姿の青年が立っていた。
「久米っ! その殺生石を渡せっ! 今ならまだ間に合う。」
ナイトゴーグルの一人が青年に向かって叫ぶ。
久米と呼ばれたその青年はニヤリと笑うとゆっくりと左右に首を振った。
「あなたたちこそ、彼女の話に耳を傾けてはいかがです? 私たちはその他大勢の輩と違って強い霊威を身に付けている。そんな私たちが、選挙期間中に名前を連呼しているだけの老人たちに顎先で使われているのは理不尽だと思いませんか?」
隣の獣がニヤリと笑ったように見えた。
「そいつは国の体制を狂わし、混乱を招いた元凶だっ。口車に乗せられるなっ。復活の足掛かりとしてお前の霊威を利用しているだけだ。」
「国が傾くのは、その体制のひずみが修復不能にまでになった結果だ。この妖狐の力と我らの実動力があれば、この国を刷新できる。かつての明治の志士達のように。」
久米青年の眼はどこか酔っているように遠くを見て、持論を語って大きく両腕を広げて見せた。
「・・・説得はムリそうだな。」
「・・・止むを得まい。」
三人の鬼狩衆は、懐から各自の武器を取り出して身構えた。
一人が両手に構えた釵を煌めかして踏み込む。
その時、キクニサカヅキが六尺杖を右八相に構えて飛び出し、青年の立っている二本隣の柱を打ち据えた。
ガキッというコンクリートの音と共に獣と青年の姿が掻き消え、打ち据えられた柱の陰から天井に向かって揺らいだ空間が飛び出した。
半透明な塊は徐々に透明度を落とし、大きな金褐色の獣とパーカー姿の青年の姿をそこに現した。
「ちっ、さすがキツネだなっ。」
クナイを手にした鬼狩りが二連撃で投擲する。
ターゲットは二手に分かれて身を翻し、五色糸で編まれた羂索鞭を振るった鬼狩りが久米青年を絡め取る。
クナイを投げた鬼狩りは呪符を掲げ、久米の額に押し付けた。
「ぬばたまのひかり・・・」
呪歌を唱え始めた矢先、ワラスボのような口を持った管状のモノが久米の頭をばくりと割って飛び出し、正面に居た鬼狩りの頭部を呪符と右手と共に喰いちぎった。
「岡本っ!」
他の二人が叫び、釵を手にした鬼狩りがその「口の生物」に釵の切っ先を突き刺した。
バチバチと電光が走り、薄煙を上げてその生物と宿主の体が床に崩れ落ちた。
「ほほほ。残念じゃったのぅ。その者の半身はわらわが取り込んでおる。」
少し離れた所に飛び退った妖狐は、あんぐりと口を開けて見せる。
その中に眠っているような久米青年の顔が見て取れた。
「おぬしら全員喰らって、霊威を取り込んでくれようぞ。」
嬉しそうに笑うと妖狐の周囲に数個の炎が浮かんだ。
キツネ火を纏った妖狐は室内を縦横無尽に飛び回る。
「ちっ、さすが速いな。」
身をかわしながら鬼狩り二人が和紙の束を投げ付けた。
和紙は紙垂に変化し、蜘蛛糸のように展開する。
和紙の網が妖狐を捉えた瞬間、その鎖は燃え上がった。
「!」
「ほほほ。所詮は紙よ。」
キツネ火が渦を巻いて襲い掛かる。
トンボを切って身をかわした鬼狩りのジャケットに燃え移り、彼はそれを脱ぎ捨てる。
その隙をついて妖狐の鋭い爪が襲い掛かった。
大きな鎌のような爪が鬼狩りを抉る前に、黒漆の六尺杖をかざしたツキニサカヅキが妖狐の前脚を受け止めた。
短く舌打ちをして妖狐が飛び退く。
「ふんっ。盲のくせにやるじゃないか。」
周囲を漂っていたキツネ火が分散し、雨ツブテのように襲い掛かる。
ツキニサカヅキは、バトントワリングのように六尺杖を回すが無数の火の弾が彼を包む。
それは大きな火柱となり部屋を明るく照らした。
その時、妖狐から絹を裂くような甲高い悲鳴が上がった。
天井の一角に身を翻した妖狐の脇腹がざっくりと裂け、鮮血が流れ落ちている。
火柱から少し離れた所に、六尺杖から仕込み刀を抜刀したキクニサカヅキが妖狐の方に身構えた。
「幻影が使えるのはキツネだけじゃないんだよ。」
妖狐が怯んだ隙に鬼狩りの二人は呪歌を唱え、握った水晶沙に呪力を込める。
「喰らえ、捕縛呪っ!」
節分の豆を撒くようにその砂礫を投げ付け、それを浴びた妖狐は放電の火花を纏って落下した。
「やったぞっ。」
嬉々として鬼狩りが駆け寄る。
「そこだっ!」
キクニサカヅキが叫んで、先程まで妖狐が張り付いていた天井の一角に仕込み刀の鞘を投げ付けた。
六尺杖をかわすように、黒い影がそこから降り立った。
妖狐の血に濡れた全裸の青年が怪しい眼の光をたたえて身構えている。
「久米っ?」
鬼狩りたちの方をちらりと見た彼は、廊下側の窓ガラスを突き破って外へと駆け出した。
久米の姿が離れると、床に落ちて倒れていた妖狐の姿が掻き消えた。
「くっ、『空蝉』かっ?」
鬼狩りの一人が追って外へ出る。
キクニサカヅキは仕込み刀を床に置いて両掌を付けて這いつくばった。
「はああああああっ!」
大きく気合をいれると、部屋の壁、天井、床に無数の溝が走り、それが一斉に赤い眼を見開いた。
間近に見る妖の技に鬼狩りが怯む。
赤い眼はざぁっと部屋の平面を滑り、廊下へと流れ出た。
廊下全体が赤く輝き窓ガラス越しに、むわっと熱が伝わって来る。
絶叫が響いた。
もう一人の鬼狩りが廊下に出ると、廊下の端に燃え盛る何かと、それを目前に佇む仲間の姿がそこにあった。
「大技を使わせてもらった。ひと手間だろうが、殺生石は消し炭の中から探し出してくれ。」
ぺたりと床に座ったまま、キクニサカヅキは扉の所にいる鬼狩りに笑いかけた。
「危ないっ! 後ろだっ!」
鬼狩の叫び声にキクニサカヅキは慌ててその身を翻した。
背中に激痛が走る。
右手の眼をかざしてそこを見る。
ワラスボのような細長い体を割れた頭から生やした人影が判別出来た。
放射状に突き出た牙を持つ、その大きな口が獲物を食い殺そうと迫る。
キクニサカヅキの閉じていた眼が開く。
ガラス光沢のあるその眼は真っ赤に染まっていて、赤い光がそこから放たれた。
ワラスボの口内に光が命中し、犠牲者の頭部から這い出したヤツは、口から炎を吹いてのたうち回る。
やがて火だるまになったこの異形は床のコンクリートを噛み砕いて下階へと逃亡した。
「大丈夫か?!」
「ちっ、油断した。殺生石本体は最初に倒したと思ったヤツにあった。追ってくれ。俺の『熱視線』をもろに喰らった。長くはもたないはずだ。」
「しかし、ヤツの姿も殺生石も忽然と消えてしまったって訳か・・・」
話しを聞いた崇弘が短く唸った。
「ああ。一戦交えてみて妖狐の狡猾さが分かったよ。直接戦闘もさることながら、心理戦にも長けている。一筋縄では行かない。」
ふうっと一息ついてキクニサカヅキは顔を向けた。
「こうなっては春日だけでは手に負えない。伊勢鬼狩りの君達の協力も頼む。」
こちらを向くキクニサカヅキの閉じている目が薄く開き、ガラスのような真っ白い眼がそこから覗いていた。