~ライブハウス「PEPPER・LAND」~
~主な登場人物紹介~
●皆本頼光・・・「源綴宮」の宮司の一人息子。母の「天狗」の血を引き、自身も天狗の亜種「白鳳」の能力を持つ。その生まれ故に伊勢や鞍馬から「禁忌の子」と蔑まれる。赤い瞳を持ち、色白で小柄。女の子顔なのを気にしている。空手は黒帯の腕前。明芳学園高校一年二組。
●吉田香澄・・・頼光の幼馴染みで、小五から頼光に絶賛片想い中。身長は高くは無いが非凡な跳躍力を生かしてバスケ部で活躍している。ショートヘアの元気娘。ノリが良く、友人も多い。頼光の良き理解者。明芳学園高校一年二組。
●有松美幸・・・頼光に一目惚れした女の子。腰まであるロングヘアでおしとやかな雰囲気。新入生人気投票で1位を獲得する美貌だが、本人は全く気にしていない。意外にスポーツガールで、鴻池スポーツセンターでテニスをやっていて、腕は地区大会上位レベル。明芳学園高校一年一組。
●石川紗彩・・・美幸の一学年後輩で今でも美幸を「先輩」と慕っている。頭は良いが少々落ち着きに欠け、天然な娘。一人称は「紗彩」。ツインテールの髪型で居ることが多い。碧山中学三年四組。
●笹山修一・・・紗彩のクラスメイトで気の弱い感じの男の子。紗彩に恋している。彼が妙な「石」を手にした事により、今回の騒動が始まった。
●杉浦健明・・・頼光、香澄の小学校時代からの友人。音楽一家の生まれでギターやヴァイオリン、ピアノといった多くの楽器が扱える。185センチの長身であるが、スポーツよりインドア派。バンド「WHAT’S THE MATTER?」のギターを担当。明芳学園高校一年二組。
●篠崎正臣・・・頼光、香澄の小学校時代からの友人。原宿系ファッション雑誌「JUST」の読者モデルをも務める美形キャラ。言葉遣いはオネェ。頼光と同じ空手道場「創心館」の門下生で黒帯。バンド「WHAT’S THE MATTER?」のベースを担当。明芳学園高校 服飾科一年。
●中村佑理・佑美・・・小柄な双子姉妹。原宿系ファッション雑誌「JUST」の読者モデル。正臣とは読モの仕事で知り合う。手芸、裁縫が得意。バンド「ろりぽっぷ」を結成して活動している。明芳学園高校 服飾科一年。
●黒田崇弘・・・源綴宮の禰宜を務める青年。伊勢の退魔部隊「鬼狩り」の一員。知性派で冷静沈着。頼光の頼れるお兄さん的な存在。
●黒田博通・・・源綴宮の権禰宜を務める青年。伊勢の退魔部隊「鬼狩り」の一員で、崇弘の弟。大柄で豪快な性格。
●皆本義晃・・・源綴宮の宮司で頼光の父。かつて伊勢の退魔部隊「鬼狩り」の一個中隊を束ねていた。今でも「雷帝」の名で恐れられている。彼もまた、出生にいわくを持つ。妻「紅葉」は頼光が三歳の頃、この一家を快く思わない勢力によって殺されてしまった。
●香月涼子・・・頼光のバイト先、甘味処「雪月花」の女将で二十代後半の美女。紗彩が姉のように慕っている。
五月最後の土曜日の午後7時半。
陽が落ちて星の光がはっきりと輝き、日中の暑さも和らぐ。吹く風が心地よい。
中心街の鴻池駅から東へ一駅離れた高島駅。
その西口から南へと一人の少年が歩いている。
道の端の方を、少し背中を丸めて歩く彼は周囲をしきりに気にしていた。
校則に準じた髪型に、ボタンをしっかりと留めた青いポロシャツ、チェック柄のチノパン、外側のすり減った黒いスニーカーという出で立ちの彼は、駅から離れた路地裏の緑色のコンビニ看板の方へと歩いて行った。
隣接する歯医者の壁を過ぎる。
コンビニの敷地に入った彼は、店舗前にたむろって喫煙している少年3人組を見てビクっと足を止めた。
「おおっと。病人がこんな遠くのコンビニに歩いて来たぜ。」
3人組の一人が彼を見つけてあざ笑い、声を上げた。
慌ててやって来た方向に踵を返すが、わざと大きな靴音を立てて3人組がその少年を取り囲んだ。
「よおよお。元気になったのか? 何勝手にガッコ休んでんだよぉ。」
「持ってくるもん持ってこないと俺らが困るんだよね。おかげで課金アイテムが揃えられねぇじゃんよ。」
「あん? そんなモノよりハッパだよ、ハッパ。今のが最後の分なんだぜ。この後、クラブの兄さんから貰わなきゃな。」
「今、持ってんだろ? 迷惑料コミで出してもらおうじゃん?」
妙な煙の匂いをさせた3人組は、追い込んだ少年の横のブロック塀を乱暴に蹴った。
「ひぃ・・・そんなこと言われても、今は必要な分しかないよ。」
少年はおどおどしながら体を縮める。
「ああん? そんな事で良いのぉ? ガッコのトイレで隠し撮りした写真見ながらオナってたこと言っちゃうよぉ。『ああっ、石川さん、紗彩さぁん』って。さ。」
少年たちはけたけたと甲高くはやし立てた。
3人は酒にでも酔ったように高揚している。
うつむいて耳まで真っ赤になった少年はぼそりと呟いた。
「こいつら・・・やってくれ・・・」
ひとしきり嘲笑が収まると、その一人が紙巻を咥えたままブロック塀に手をついて覗き込んだ。
「で、さっさと出すもん出さないとどんな目に・・・ん? なに、おまえ、ペットと一緒に買い物に来てんの? ははぁ、しゅうちゃんはかわいいのが好きだねぇ。」
少年のポロシャツの胸ポケットからフェレットのような生き物が白い顔を覗かせた。
その生き物がぴょんと飛び出し、真正面の少年の肩をとんと蹴って地面に降りた。
短い呻き声を発すると、その少年は咥えていた紙巻をポロリと落とし、膝から崩れるように地面に伏した。
「あん? ツトムどうした? 倒れるほどの大麻じゃないだろ。」
ふうと煙を吐いて倒れた仲間を見る。
アスファルトに降りた生き物はくるりとこちらに振り返った。
金褐色に光る体に白い顔の毛並みのこの生き物は、胴体ほどの太さのふっさりとした尻尾をぱたりと揺らした。
「ん? なんだこりゃ? 小キツネ?」
紙巻を指に挟んだまま少年たちはその生き物を凝視した。
次の瞬間、その小動物がボルゾイ犬ほどの大きさになり、真っ赤な口を開けて近くの一人の顔をばくりと咥えて宙に放り投げた。
「ふ、ふわああっ!?」
突然の事態に、残った一人が悲鳴をあげて後ずさる。
その喉笛目掛けて白面の獣がその牙をむく。
一瞬で3人の少年がアスファルトに横たわった。
獣はぺろりと舌なめずりして、先端の白い、ふさふさの尻尾を優雅に振った。
『うむ。久々の魂魄は美味じゃ。』
エコーのかかった、艶のある女性の声が響いた。
「こ、殺しちゃったの?」
壁際にもたれ掛かったままの格好で、少年はおずおずとその獣に声を掛けた。
『殺めた・・・ふ~む? 魂を喰らっただけで心の臓は動いておるぞ。まあ、今後目を覚ますことは無かろうがな。』
白面の獣は振り返り、怯えるその少年を見つめた。
緑がかった金色の瞳に縦長の瞳孔が浮かび、額から尖った鼻先にかけての体毛が白銀に輝いている。
余韻を楽しむように真っ赤な舌でふわふわの頬毛の辺りまでをぺろりと舐め、前脚でくしくしと顔をぬぐった。
「・・・何も怯えることは無い。おぬしの気鬱のひとつが消えただけのこと。わらわはおぬしの味方ぞ。障りが降れば払うてやる。遠慮なく申せ。」
白面の獣の目が怪しく光った。
その1時間ほど前に遡る。
鴻池駅の噴水広場の前を横切って道路を渡り、大型電気店の前の通りを行くこと約100メートル。
ショッピングモールが設営される以前には地域一番の大きな百貨店の、手前の小道を北へと。
この古びたアスファルト道沿いには新進気鋭のラーメン屋や雑貨屋と共に、昭和の雰囲気を守っている揚げ物屋さんや赤ちょうちんを掲げた一杯飲み屋さん、焼き鳥屋さんやたこ焼き屋さんがモザイクのように、色とりどりに並んでいる。
そんな小道を進むこと50メートル。
真鍮色の箱文字で、前面の入り口の上部いっぱいに「タチバナ楽器堂」と銘打たれているレンガ調サイディング外壁の店舗がどんと建っている。
大きなガラス壁からは店舗の中が良く見えた。
エレキギター「BUSKER'S」のレスポールBLS300や初心者用に人気のBSEシリーズがギタースタンドに立て掛けられて展示してあり、奥の壁の前には3基のシンバルスタンドと5種のドラムに「ZENN」と銘打たれたメタルブルーのドラムセットがピンスポットに輝いている。
その脇にはヤマハの電子ドラムDTX502やMEDELI電子ドラムDD-504J、キーボードスタンドにカシオCTX-3000の姿も垣間見える。
店舗入り口には『本日休業』の立て看板が掲げられており、その店舗の前を、黒ずくめでスタッズがたくさん付いたベルトやアームレットを身に付けた黄色い髪のお兄ちゃん2人組が通り過ぎ、すぐ隣の建物に入って行った。
真っ黒で光沢のあるタイル調の窯業サイディング外壁のこの建物からは、先ほど扉が開いた時、ベースとドラムの重低音が漏れ聞こえた。
掲げられたネオン看板には『PEPPER=Land』(ペッパー・ ランド)の文字が青く輝き、横に設置された殺虫灯に時折パチンと火花が走る。
外開きの大ぶりな扉の脇には一畳はある大きなコルク板が壁面に据えられていて「本日の出演アーティスト」と彫られた真鍮板がネオンライトに輝き、出演バンド紹介のポスターやメンバーの写真がピンナップされている。
ロングヘアーの女の子のデュオや全身スタッズな衣装の五人組、着物姿の女性ボーカルの和装グループ、上半身裸のムッキムキで良い笑顔のビルダー四人衆、それぞれが個性豊かに自分たちをアピールした作りになっている。
そして双子の女の子中心にむぎゅっと言う感じで集まった8人の少年少女の笑顔写真がカラーペンで「ろりぽっぷ&WHAT`S THE MATTR?」とデコられて掲げられていた。
「私、こういう所来たの初めて。何と言うか・・・すごいわね。」
ペッパー・ランドの中のテーブルに就いて周囲を見回した有松美幸が少し怯えながらも驚嘆の声を上げる。
腰まである栗色のロングヘアーをゆるく三つ編みに束ねて後ろに垂らした彼女は、短めのワンピースに黒のボレロ、市松模様のタイツ、ドクロチャームの付いた黒革のチョーカーというパンク仕様の出で立ちで、そわそわしながらカウンターの方に目をやった。
建物の最奥に幅5メートル、奥行き3メートルの塩ビタイル張りのステージが、1メートル程高く据えられて多くのスポットライトが当てられて輝いている。
ステージと向き合う形で屋外設置型のSnow Peakワンアクションテーブルが10基設置されていて、ここでライブを見ながら簡単な食事も出来るようになっている。
ステージを正面に右側の壁沿いにバーカウンターが設置され、カウンター席に数名の男女がグラス片手にライブ演奏に見入っていた。
そのカウンターに、身長185センチの長身の杉浦健明と160センチの小柄で色白な皆本頼光が注文の品の給仕を待ってカウンター内を覗き込んで佇んでいた。
演奏中なので、ライブハウス内は薄暗く照明が落とされているが、色白でエキゾチックな顔つきの頼光はよく目立っていた。
「美幸ちゃん、落ち着けないの?」
隣に座っている吉田香澄が声をかける。
モノトーンボーダーのロングTシャツにパーカー付きベスト、黒のホットパンツに黒いアコーディオン・ヒップパット巻いた格好の香澄は、リラックスした様子で組んだ両手の甲に顎を乗せている。
レースアップ・ロングブーツの脚を組み直し、美幸と同じようにカウンターの方へと視線を向けた。
ショートヘアの彼女の耳に、小さなイヤリングの赤い石がキラリと光った。
スタッズ衣装のヘビーメタルバンドの演奏が終わって、ライブハウス内の照明が少し明るくなる。
ステージを向いていた観衆がざわざわと歓談を始めた。
「香澄ちゃんはこういう所、良く来るの?」
「うん。健明がギグする時はよくチケットもらってるし。ライコウも何度か健明の音楽仲間に駆り出されて出演したこともあるんだよ。三味線と横笛で。」
「へぇ、皆本くんもステージに立ってたんだ。」
美幸はカウンターの方に視線をやると、灰色のトレーにグラス4つとサンドウィッチ2皿を手分けして運んで来る凸凹コンビが目に留まった。
「お待たせ~。ご注文のアイスティー・アイスコーヒー・クラブサンドでございます。」
黙っていれば女の子と見間違う程の綺麗な顔の彼は、紅い色の瞳をした目をにっこりと細めた。
SEXPOTのシャーリングTシャツにスタッズ付きのスキニーパンツ姿で、ヨースケのレースアップ厚底ブーツをコツコツ言わせながら、黒づくめの頼光がそっと商品を差し出した。
首の黒革チョーカーの真鍮金具がキラリと照明を反射する。
「はい、ありがと。ライコウはバイトで給仕してる分、持ち運び方がサマになってるわね。」
頼光はトレーをテーブルの天板に置いて二人と対面する席に座り、健明もそれに続く。
テーパード型のブラックデニムに胸元ドレープのロングTシャツを合わせた健明は正面の美幸に目を向けた。
「有松さんも来てくれて嬉しいよ。学校の合同授業とかじゃ私服姿なんて拝めないからな。クラスのみんなに自慢するから一緒に写真撮らせてもらって良いかな?」
健明はいそいそとスマートフォンを引っ張り出した。
ちょうど横を通りかかった蝶ネクタイ制服のホールスタッフに撮影してもらい、ゴキゲンで画像をチェックする。
「うん、良い感じ。それじゃ写真送るからQR良い?」
「ええ。」
美幸と健明がデータをやりとりしていると、張りのある声が後ろから聞こえた。
「よお、健明。こんなとこでナンパかい?」
健明は聞き知った声ににっこりと笑って振り返る。
「かわいい娘とは繋がっていたいもんですよ。カズさんも解るでしょ?」
振り向いた先には隆々とした両腕を組んで微笑んでいる一人の青年が立っていた。
タンクトップ姿で、ダーティブロンドの髪の毛を立たせた彼は、個性的なバイザーを顔に掛けている。
『スタートレック・ネクストジェネレーション』のジョディ・ラフォージのバイザーのような、こめかみから両目を覆う形のものである。
「香澄ちゃん、ライコウくんも久しぶり。元気してたかい?」
「はい。和樹さんもお元気そうで。今日のバイザーはライブハウス仕様のヤツですね。」
「ああ、普段使いのヤツじゃハウスの中は暗くて危ないからね。強い光だけをカットする特殊偏光仕様さ。」
和樹と呼ばれた青年は両手でバイザーのこめかみ部位をついと触って見せた。
「和樹さん、この娘、私たちの学校の子で、友達の美幸ちゃん。」
香澄が隣の美幸の肩をポンとたたいて和樹を見上げた。
「あ、はい。有松美幸です。ライブハウス自体が初めてなもので。よろしくお願いします。」
「はは。固くならなくて良いよ。ここのみんなは、見た目は相当なヤツも多いけど、純粋に楽しみに来てる連中だから。僕は遠藤和樹。隣のタチバナ楽器堂で店員をしてるんだ。興味があったら今度覗きに来てね。」
和樹はぴょこりと腰を折って美幸に笑いかけた。
目線のようなバイザーのレンズがオレンジ色に光を反射して、アニメのサイボーグ・アイをイメージさせる。
「あ、カズく~ん。ここにいたんだぁ。」
可愛らしい声がして、丸っこいショートボブヘアの小柄な女の子が二人、とてとてと小走りで近寄って来た。
二人ともコルセットドレスに膝丈のチュールパニエが覗くミニスカート、太いモノトーンボーダーのタイツ、リボンを結んだミニハットをちょこんと頭に乗せた、ゴスロリチックな格好で和樹のすぐ後ろに立った。
「あ、佑理ちゃん、佑美ちゃん。」
香澄が手を振る。
「やほ~。香澄ちゃん。」
「あ、美幸ちゃんも来てくれたんだ。」
小柄な双子姉妹はきゃいきゃいとテーブルの横についた。
「カズくん。スタッフのジュリアさんが次のバンドの電子ドラムとの調整が上手く行かないって半ベソかいてたから見に行ってあげて。」
ミニハットにピンクのリボンを結んだ中村佑美が和樹を見上げた。
「ああ、了解。あんまり手間取ってると間延びしちゃうしな。お客が帰っちゃウチとしてもつまらん。それじゃ、次の『暮帝美留』の後に俺ら『ろりぽっぷ+ WHAT`S THE MATTR?』だから楽しみに待っててくれ。」
和樹はひょいと右手を挙げるとステージ横のスタッフ通用口へと向けて歩き出した。
「お二人は何の楽器をするの?」
佑理と佑美を交互に眺めた美幸は、にこにこして隣に立っている双子姉妹に声を掛けた。
「へへ。私達はボーカル。ツインボーカルなんだ。」
ミニハットにイエローのリボンを結んだ中村佑理が得意そうに胸を張る。
「ツインじゃない時は佑理ちゃんがベース。リードボーカルが佑美ちゃんで、二人でのハモりが結構良いんだよ。」
頼光が美幸の方を向いて補足した。
『ううん。結構じゃなくて、『すごく』良いの。』
口をそろえて軽口をたたいた双子姉妹は、お互いを見合わせてくすくすと楽しそうに笑った。
「『ろりぽっぷ』と一緒ってことは、ギターもツインでやるの?」
頼光はクラブサンドを一口かじって健明を見た。
「いんや。ギターは楓ちゃんにやってもらって、俺はヴァイオリンだ。ベースはオミで、杏子がキーボード。ドラムはカズさんとかぶるから、祐輔が電子パーカッション。」
「すごい。何だか曲層が厚い感じ。」
「へへ。楽しみにしててくれよ。」
目を丸くする美幸に健明が親指を立ててニンマリとした。
ステージの上で半袖黒Tシャツのスタッフたちがわらわらとセッティングを行っている。
スタンドに乗った電子ドラムが据えられ、奥から別のタイプのアンプを抱えた和樹が出て来て接続作業を行う。
「そろそろ『暮帝美留』が始まるな。そんじゃ、俺たちは楽屋に戻るからみんな楽しんでくれよな。演奏が終わったらまた来るから。」
健明はひょいとカッコつけた挨拶をして、佑理・佑美姉妹と一緒にステージ横のスタッフ通用口の方へと歩いて行った。