STEP2-0 ミーナと読む『アユーラのほし・エリカひめのおはなし』~1.海をわたってきたふたり~
2019/05/04
ご指摘いただき、ありがとうございます。
誤解を招いてしまうので、表現を一部追加修正しました。
49行目:
そして、べんりな道具のつくり方や……
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そして、島の人たちに、さばくの国でまなんだちしき――べんりな道具のつくり方や……
わたし、ミネット・エウレカも、こどもむけの本で読んだことがあります。
このアユーラの、むかしむかしのものがたりを。
私の親友と同じ名前の、つよいつよいお姫さまが、しあわせになるまでの物語。
――それはとても、ロマンチックなものでした。
* * * * *
どの国でもそうなのですが、アユーラの国も、むかしは国ではありませんでした。
そのあたりはただ『西ノ島』とよばれていました。
『西ノ島』は、いのちのあふれる楽園でした。
ひとびとも動物も、ゆたかな自然のめぐみに感謝しながら、なかよく楽しくくらしていました。
ある日、西の海から船にのって、たくましい若者とうつくしい娘がやってきました。
西ノ島のひとびとにむかえられたふたりは、うれしそうにいいました。
ここはなんて、すばらしい土地なのでしょう!
わたしたちの国は、しゃくねつのさばくとわずかな草原におおわれた、まずしく、気候もきびしい場所です。
このままではみんな、暑さと飢えで死んでしまう。そう思って、おとなたちはわたしたちを海へ、新天地をさがすたびへと送り出してくれました。
わたしたちは、赤んぼうのころから聞かされつづけていました。
この世のどこかに、みどりしたたる『やくそくのくに』がある。
そこをみつけることができれば、みんなみんな、幸せになれる。
ああ、やっとやっと、たどり着くことができました。
どうかわたしたちを、そして家でまっている父母たちを、このすばらしい国にむかえ入れてやってください。
たくさん、たくさんはたらきます。こきょうで学んだ役にたつことも、みんなみんなお教えします。
ですからどうか、おねがいします。
西ノ島のひとびとは、やさしい人たちでした。
だから、にこにこ笑ってこういいました。
もちろん、いいとも。
『国』というのがどういうものかはわからないけど、ここはとてもいいところだよ。
きみたちには、あたらしい家をわけてあげよう。
そこで、お父さんとお母さんに孝行しておあげなさい。
さあ、おいで。
その伝書鳥にごはんを食べさせ、休ませてあげたら、すぐにこきょうに送っておあげ。
きみたちも、旅でつかれているだろう。
今日は長老の家でごはんをおなか一杯に食べて、ゆっくりとお眠りなさい。
なんとあたたかくやさしいことばでしょうか。若者と娘は感謝の涙を流しました。
そしてやさしいひとびとに、ありがとうございます、ありがとうございますとなんども頭を下げたのです。
ふたりは、毎日たくさんはたらきました。
そして、島の人たちに、さばくの国でまなんだちしき――べんりな道具のつくり方や、作物をじょうずにそだてる方法、動物の病気をなおす方法など、いろいろなことをおしみなく教えてくれました。
まじめでやさしく、かしこいふたりのことを、島の人たちもみんな、すぐに大好きになりました。
まだものごころつかぬエリカひめや、エリカひめのおねえさんたちも、もちろんふたりが大好きでした。
毎日あそんでもらったり、ささやかなお手伝いをしたりして、いっしょになかよくすごすのでした。