STEP-??? 『シミュレーション結果:Sakuya I. Mayが日記をつけていたならば より抜粋(3)』
アレをまた夢に見た。
パンドラの箱を開けた愚か者である俺が見るのは構わない、応報であり戒めとなるのだから。
だが、他には絶対に見せたくない。
YUIに残る関連記録を他者が閲覧できぬよう、手は回してあるが、完全とは思えない。
サキは神だ。かつてあの男が海に落ちたとき、開放された奈々希の記憶を精神感応で見たともいっていたし、アレもいずれ、なにかの拍子で見ることだろう。
早期にさらなる手を打たねばならないが、どうしたものだろうか。
奴がゆきを通じ懇願してきた。
『俺が此花に触れることがないようにしてくれ。絶対に繰り返したくない』
『せめて此花と奈々緒に恩を返すまで、頼む』と。
ここまで殊勝になられては、消すこともしがたい。
これまでは事情を知ってなお憎しみが優に勝ったが、今はそのバランスが揺らぎかけているのを感じる。
仏心が邪魔になるなら俺はそれを捨てねばならない。
サキが心配なら部屋を一緒にしてはと言い出した。
それだけは絶対に駄目だ。
縁談の邪魔にしかならないことだ。
しかし、心配は止められない。サキが俺を案じているので心苦しいが。
あのときルナを側仕えに置いてくれてさえいたなら……。
あの男は陸星、奈々緒とともにしばらく海洋探索に行くことになった。
その間は大丈夫だろう、少しだけほっとする。
奴がやらかそうとするなら始末せねばならないが、下手な仕方をすれば、奴の精神から記憶が流れ出し、サキもそれを見てしまう。
だが物理的に奴がいなければそれもまずないだろう。
英気を養いつつ、ルナ、スノーとの縁談に注力しよう。
そうすれば全てがよくなるのだ。
シャサにツメられた。あいつらはうすうす、気付いている。
見せろ、と言われたが、アレだけはだめだ。
俺の心の準備も要る。なにより万一にも、サキにもれることがあってはならない。
アレをまた夢に見た。
俺の下でおびえた顔がそれと重なった。
俺はいつもサキをおびえさせてばかりいる。
なのに、泣きそうになったのは俺で、サキは俺をなだめてくれた。
サキは立派な王だ。けれど、まだ駄目だ。
素直で優しいこいつには、見せられない、見せたくない。
サキはスノーとルナにプロポーズを果たした。
これでいい。とても、幸せな気持ちだ。
これでいい。これだけでいいのだ。
サキは真実にたどり着きかけている。
致し方なく圧倒した。
そこへイザークがやってきた。反対派がいたのだという。
奴は仲裁とともに、助力を誓ってくれた。
『俺は、殺したい』。
そんな言葉を告げたのに、うなずいてくれた。
試すための呟きに、一瞬の迷いとてみせることなく。
心から感謝する。そして頼む。
我が良き友、今や唯一の親友よ。
どうか俺とともに、あの忌まわしい過去を殺してくれ。
2019/05/05
この「部分」初出の要ルビ名(人名・地名など)にルビを追加いたしました。




