表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
咲也・此花STEPS!! 3~もと・訳ありフリーターの俺たちが青い空へと旅立つまで~  作者: 日向 るきあ
STEP9.そして俺たちは、旅立ちを決意する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/49

MIDDLE STEPS ~そして俺たちは、旅立ちを決意する~

 目の前に手を持ってきてみると、手先の部分を若草色のポイントカラーに彩られた、白い、こねこの手。まだちっちゃな爪が引っ込んでないから、生後一ヶ月経ってない。

 裏返してみればくもりひとつない桜色のぷちぷちしたにくきゅう、これもかわいい。

 っていやいや、そうじゃない!!

 なんで俺は子猫になってんだ? それも突然!!

 問いかける声は依然、ミィミィという鳴き声にしかならない。しかし、サクは俺の言いたいことを理解している様子で、申し訳なさそうにこうのたまう。


「申し訳ないが、しあなの薬を使わせてもらった。いまのお前とスノーは、ただの子猫だ。

 解毒剤を使わなくとも、12時間もすれば元にもどれる。

 それまでの間にどうにかする。

 たのむからここで大人しくしていてくれ。余計なことは考えないで」


 いや、いやいやいや!!

 どうにかするってなにを?! もしかしてサクのかかえた悩みごと?!

 猫にされてまで隠されなきゃならないような、そんなことなの?!

 大事な相棒のことなのに、俺はなんにもできないの?!


「ミ――、ミ――!!」


 ろくに走ることもできないいまの身体では、やつを追いかけることはできない。

 最後の手段で必死に鳴けば、サクは泣き出しそうな顔になる。

 それでも、振り切るように背を向ける。

 そして、部屋のドアを開け……後ずさった。

 そこに立っていたのはいつもの笑顔のイザークと、彼の後ろに控えたティアさんだった。


「よ、マブダチ。

 実はさ、俺のかわいい弟分ちゃんたちからレスがぜんぜんねーんだわ。

 どーやら、どっかのにゃんこ大好きおにーさんの手でかあいいこねこちゃんにされちまったみたいでよ……

 俺がモフってからでいいからさ、元に戻してやってくんねーか?」

「それは、……大変なことだな。

 で、それはどこの弟分たちだ?」

「お前の後ろでねむってるスノーちゃんと、ミーミー泣いてるサキちゃんだ」

「っ……。」


 サクは俺たちの入ったバスケットをかばうように立ちふさがるが、イザークも引かない。

 そういえばイザークとティアさんは、今日の朝もうユキマイ入りしてたんだっけ。

 しかし二人は、いま迎賓館でやすんでいるはず。なぜいま、ここに?


「残念ながら、反対派がいたんだ。全部割れてるぜ。

 なあ。ここは俺との友情に免じて、コトをおさめちゃくれねえか。

 サキには待ってもらうよう説得するし、お前の行く先に俺も付き合う。そして、秘密は絶対に守る。命に代えてもだ」

「………………。」


 すると、サクはなにか、小さな声でイザークに告げた。

 イザークは間髪いれずにうなずいた。


「もちろんだ」


 こうして、サクの『クーデター未遂事件』は、始まってほんの数時間で、終わりを告げたのだった。


 * * * * *


「申し訳なかった、我が王、我が主。

 これは私のみが行ったこと。

 一重に御為をのみ思うがために。

 どうか、イザークを目付けに、一夜だけの猶予を。

 事成って帰還した暁には、いかなる処罰も受ける覚悟に存じます」

「やめてくれよ、サク。俺のためのことなんだろ?

 お前はいつでも俺のためにがんばってきてくれた。そのお前の善意を疑うことなんかないし、その上でしたことに罰なんか与えられない。

 小学校の文集に書いた、ホンモノの猫になるって夢もかなったしな!

 しあなの薬がすごいってのも確かめられた。だからチャラだ。な?」


 解毒剤を飲み、元に戻った俺たちに、サクは膝をついてわびた。

 けれど俺が手を取って立ちがらせると、ありがとうと笑みを見せ、目元を拭いた。


 やつは、いますぐ行きたいところがあるのだという。

 そこに行って、帰ってくれば、問題は全部解決している。なにも隠し事はなくなる。

 だから、待っていてくれ。明日の朝には帰ってくるから。そう約束してくれた。

 そうしてサクとイザークは、しあなお手製の小型飛行機エアビークルにのり、はるかな大空へと舞い上がった。



 ――しかしふたりは夜が明けても、帰ってくることはなかった。

 さらにそこにナナっちが転げこんでくるにいたり、不安はピークに達した。


「サクやん! サクやんどうしよう!

 ふたりが、アズと亜貴がいない!

 部屋に、こんな手紙だけ残して……!!」


 ナナっちが手にした便箋には、宛名と署名を除けば、たった一行だけが記されていた。








 過去を殺しに行ってくる。夜明けまでには戻るから、絶対お前たちは追っかけて来るな。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ