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STEP1-2 『却下だ!』

「なーサクー。俺行きたい! 海の遺跡探索!」

「あたしもー! ねっしゃちょー、いいでしょ? サクっちはあたしがちゃんと守るし!」

 そして、ここはその後の会議室。

 俺と、シャサさんがはいはいっと挙手するが、サクはつれない。

「“陛下”には建国間もない国を支えるという責務があるだろう。

 警備セクションチーフも忙しくなるんだぞ。そんなヒマがあるのか?」

「でもさサク。言い出したの俺なんだよ? それが行かないって、せっかく息子さんと娘さんを預けてくれる遥明はるあきさんに、申し訳ないじゃんか……」

「だよね。

 それにあたしのほうだって、そろそろ体制転換を考えといたほうがいいタイミングじゃない?

 ここまではつねにあたしが指揮系統にはいってた。一度、あたしが完全に外れてもちゃんとできるか、見ておくのもわるくないと思うけど?」

 俺たちがさらに言葉を継げば、サクはふうっ、とため息をついた。

「逆に考えろ。

 このユキマイから王が調査にきてしまったら、他の国々はどうすればいい?

 センティオは調査のためのベースをおくからまだいい。

 だが、朱鳥あすか、アユーラ、竜樹国はいずれもユキマイより北にあり、距離も遠い。

 総理大臣、大統領、太君ら本人がもし来れるとしても、一日程度の訪問がやっとだろう」

「あ……」


 そう言われてみるとそうだ。朱鳥はユキマイの北、アユーラは北西、竜樹は北東。

 ユキマイの南にあるそこにたどり着くには、ユキマイを経由、もしくはそのわきを通って南下してゆかねばならない。

 いくら現ユキマイが『島』レベルの小国だとしても、無視はでき得ない。


「それに何度でも言うが、今ユキマイは建国したばかり。国の礎を築く、大事な時期なんだぞ。

 基本的な法令や制度、人員はすでに整っているとはいえ、運用と修正はこれからだ。

 しかも、婚姻の制度は『サリュート制』――我らの多くには、なじみのない制度を採った。

 トラブルはいくらも起きるだろう。そこで最終的に責任を持ち、決定を下すのはサキ、お前だ。この国はいま、お前なしには立ち行かない状態なんだぞ。

 それはシャサ、お前についても同じだ。

 サキが国の王なら、シャサは国の守りの王だからな。

 新ユキマイの社会システムがきちんと稼動し始めれば、お前たちの負担も軽くしていけるが、いまはそのシステムを作りあげている状態だ」

「うー……」

「仮にそれを全てどうにかするとしても、サキ、“アレ”は大丈夫なのか?

 そいつがどうにかならない限り、海底遺跡なんかに入らせるのは不安すぎるぞ。

 シャサ、お前は東雲研究所で自分がしようとしたことを覚えているな。

 公海に沈む遺跡の中であんなことをしたら、国際的にも大変なことになるだろう。

 それに炎属性のお前は、海中では不利なんてものじゃない。そんな危険な戦場に放り込むなんてことは、俺にはできない。

 ふたりとも、気持ちはわかるが、今回はやめてくれ。そのうち、なにか機会も作る」

「っ……」


『ぐう正』とはまさしくこのことだった。

 俺はいまだ“シックハウス症候群”が完治していない――昨年末にも、現場で一度倒れている。

 シャサさんのアレについては、うん、わるいけど俺も弁護できない。

 俺たちはそろってガクッとうつむいた。


「ごめん、サク。お前の言うとおりだよ。

 俺、ほんっと未熟だな……」

「ごめんしゃちょー……あたしもうかれてた。

 なんかいつもしゃちょーにばっか、こんな役目させちゃって……ほんと、ごめんね」

「いつものことだ。

 俺たちは仲間だろう。お互い、できることをすればいいんだ。

 こと警備や戦いとなれば、シャサは俺より優秀だ。

 サキは、あまり聞きわけがいいと逆に不気味だからな、これでいいんだ」

「ううう……ありがとー! がんばるからねあたしー!!」

「なんかすっごく納得いかない!!」

 サクが優しいイケメンスマイルを見せれば、シャサさんは奴の手をとり、ぶんぶん上下に振った。ちょっと痛そうだ。だが、俺の心はもっと痛い。

「お前はあまり褒めると調子に乗るからな。

 ……お前あっての俺たちなんだ。何度言わせれば気が済む」

 思わず叫べばサクは、ツンデレかまして俺の頭をわしゃわしゃ撫でた。

 くそう、そんなんされたら許しちゃうじゃないか、ひきょうものめ。

「……サクのたらし」

 照れ隠し半分、むくれ半分で言ったら、案の定チョップされたのであった。



「えーとっ。

 そういうわけで、ロクにいさんが立候補してますぜ、皆々方?

 七瀬の力だってあるし、海洋物理学も学んでるし適任だと思いますぜ!」

 カノジョをさりげに奪還しつつ、イサが言う。

 そのわきで、ルナさんが控えめに挙手した。

「わたしも、お役に立てると思いますわ。

 海洋物理学、ならびに海洋遺跡探査についてはわたしも学びましたし、首長に近しいものとしても適任ではと……

 もちろん、総務のお仕事はわたしが抜けても大丈夫な体制をすでにつくってあります。皆様にご迷惑はおかけしないですみますから、安心してくださいませ」

 なんと。もともと優秀なのはわかっていたが、もうすでに権限委譲も進めてあったとは。

「ルナっちすごーい! うう、見習わなきゃ……」

「もともと、皆さんにたくさん助けていただいていたのを、形にしただけですわ。

 ここにきてからはYUIユイも助けてくれますから、ずっと楽になりましたのよ」

 シャサさんの賞賛にほんのりとほほを染め、謙遜するルナさん。いやいや、すごい、すごすぎるでしょう。

「……ちょっと待て」

 だが、なんだ。サクがまたなんか、不穏な雰囲気出し始めたぞ。

 愛してやまない妹様に向ける顔は優しいが、ゆきさん以外の俺たちは一様に距離をとる。

「ルナ? 今わかっている限りで、誰と誰がくる予定になっている?」

「はい、チームリーダーとそのサブとして、エリカさんとミーナさん、ィユハンさんとジゥさん、はるなさんとはるきさん。そしてホストのユーリさんとホークさんですわ」

「何をしにくるんだ?」

「各国チームリーダーとしてのおしごとが主ですわね。ダイビングは皆様可能ということですわ」

「海洋物理学、遺跡探索などのスキルの持ち主は?」

「ユーリさんとホークさんがどちらもおさめておいでですわ。

 ほかは、エリカさんはプログラミング、ミーナさんとジゥさんはボディーガード、ィユハンさんは各種情報処理、はるなさんは朱鳥国を主とした歴史学、はるきさんは総合政策……

 つまりそれらふたつについてはチームの方に助力を頂くカタチとなっているようですわね」

 とたん、サクは断言した。

「却下だ」

ご指摘ありがとうございます!

誤解を招くので、表現を一部追加修正しました(※)


25行目:

 しかも、婚姻の制度は兄弟国であるサリュート同様に、共有可能の一妻多夫制、同姓婚可能と、我々の多くにはなじみのない制度を採った。

 しかも、婚姻の制度は兄弟国であるサリュート同様の制度を採った。

 一妻多夫制、同姓婚可能。妻側の同意があれば夫が複数の妻に属することも不可能ではないなど、我々の多くにはなじみがないものだ。


※のちに『夫が妻二人に共有される形』がでますので、間違ってはいない、いないのですが、ぱっとわからない時点でこれは、アウトですよね。

ありがたく、修正させていただきました。ありがとうございました!


(改) しかも、婚姻の制度は『サリュート制』――我らの多くには、なじみのない制度を採った。

(削)『一妻多夫制、同姓婚可能。妻側の同意があれば夫が複数の妻に属することも不可能ではないなど、我々の多くにはなじみがないものだ。』

作中の実情(サキの縁談)とあわせるとむしろ混乱するので、ここはおもいきってバッサリといきました。

くわしくはのちほど、(2-1などで)ケーススタディ的に触れられます。


5/4夕刻、ルナさんのはるな&はるきさんの呼称を統一しました。(ひらがなが正しいです)。

また、部分初出ルビ抜けを修正しました→YUIユイ朱鳥あすか


度重なる改稿、混乱されたかと思います。申し訳ございませんでした!


2019/07/17

誤字修正いたしました。

チームレーダー→チームリーダー

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