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咲也・此花STEPS!! 3~もと・訳ありフリーターの俺たちが青い空へと旅立つまで~  作者: 日向 るきあ
STEP5.おねだんはプライスレス/『神かっ!』

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STEP5-2 偉名宮攻略・作戦会議!~奈々緒の場合~

「北の塔と偉名宮は、あらかじめ浮上させられるかもしれないね」


 東の塔の浮上およびコントロールの確立はつつがなく成功。

 その報告を終えたユーさんがしてくれたのは、驚きの提案だった。


「おのおのの塔、そして偉名宮は、特別なネットワークでつながっている。

 それが生きていることは、七瀬の塔から他の塔や宮殿の状態を確認できた時点から明らかだった。

 これを利用して、塔と城の遠隔コントロールが可能なのではないかと思うんだ。

 四家による大会議のさいには、おのおのの領地に立つ塔から、通信を用いて会議と投票を行ったと記録にある。

 そして多数決により、大掛かりな術式を展開したこともあると。

 七瀬チームの諸君、間違いはないよね?」

「はい、そのとおりです」

「僕もお城から見てた記憶があるにゃ。

 たぶんいけるんじゃないかと思うにゃー?」


 ロクにいとアズが肯定する。

 俺は残念ながらこれには詳しくない。

 俺が塔のお世話になるのは、通信を使って演説したり、法案を提起したりするのが主で、投票をする側にはならなかった――そのあたりは父上や兄上、時に母上がやってくれていたから。

 そのため黙っておくと、ユーリさんは察してくれたらしい。うん、とひとつうなずいて、話を先に進めてくれる。


「なるほど……興味深いね。

 もしそれができるなら、今後の調査にもそれは応用できる。さし当たっては北の塔と偉名宮への潜水アクセスが不要になる。時間も労力も大幅にセーブできるはずだ!

 明日は予定では西の塔に行く予定だが、そこが使えるようなら東、南の塔にもう一度行って、通信を――北の塔への浮上要請をしてみればいいんだね?」

「はい。

 そしてそれができるなら、すぐに偉名宮の浮上要請も試します。

 もっとも塔や城の扉そのものまでは開けないでしょうから、やはり朱鳥あすかチームのお二方には、現地に赴いていただくことになるかと存じます」


 ユーさんの視線を受け、遥儚はるなさんが軽く一礼した。


「お役目を果たせるのでしたら、喜んで。

 北の塔と偉名宮へはわたくしが参りますわ。弟ばかり働かせては姉失格ですもの。

 ですが、そのさいには梓さまにもご同行を願いたく存じます。

 と申しますのは、わたくしたち瑠名るめい家は偉名の王の血筋。宰相様とはことにゆかりの深い一族です――もっと言うなら偉名王は、宰相様の傀儡、しもべでいらしました。

 よって王の、それにつらなる瑠名の権限は、宰相様御自らの承認があってはじめて使用できるように、設定がなされている可能性があります。

 帝政末期は混乱の時代ですわ。宰相様の転生たる梓さまとわたくしたち、どの登録がロック解除に必要かは、実際試してみないとわからないはず。

 二度手間をかけるよりはと存じますが、いかがかしら」


 俺の隣、アズはぽかんと口を開けて驚いていた。

 演技でなく、間の抜けた口調でのたまわる。


「あのえっと……いや、ちょーさは複数チームでいくことになってるしそれはいっけど、俺はでりけーとな改造人間だからナナちんとかの介護がないとダメなんだ……にゃ?」

「もちろん、心強いですわ。陸星ろくせい様、奈々緒様、よろしいかしら?」

「わかりました、参ります。奈々緒、いいか?」

「もちろんです。がんばりますっ!」


 これまでのいきさつで、二人の距離が近づいてるのは感じていた。でもまさか、ストレートで指名されるとは……アズのやつも隅に置けない。

 となれば、当日はうまいこと距離をとってやらなきゃ。

 そのあたり、亜貴や遥希はるきさんとも打ち合わせておかねばならないだろう。

 そう考えていると、ユーリさんが話を進めた。


「それじゃあ明日、西の塔にいくメンツはどうする?

 エリカたちアユーラチームは確定として、ほかにどうしてもって人がいないなら、あたしたちセンティオチームが行くのがいいと思うんだけど。

 七瀬はあさって北に行くし、竜樹は今日ですでに二連出てるからね」

「私は姫が心配ですので」


 するとさらっと言い出すユーさん。うん、こっちもこっちでド直球だ。

 もっともとうのエリカはつれない。


「なにいってんのよ、今日でもう二連出てるんでしょ?

 大人しく休んどきなさい、あんたのほうがよっぽど心配だわ!」

「お美しい姫の泳ぐ姿を拝むことが叶えば、私めはいくらでもがんばれますよ」

「がんばらなくていいから必要な仕事しなさい。」

「ああっ、なんと思いやりに満ちたお言葉……

 かしこまりました、不肖私、全力で姫のご無事をお祈り申し上げて待っております!」

「寝てろっ!」


 恒例のやり取りに笑いが起きたところで、遥希さんも微笑んで発言した――

 アズをにこやかーに直視して。


「僕も遥儚と一緒にいくよ。

 七瀬チームを信用してないわけじゃないけど、姉ばかり働かせるのは弟失格だからね?

 どちらにせよ偉名宮突入前には休養日を設ける予定だろう。問題ないよ」

「信用されてないっ?!」

「そんなことないよ、アズサ君。そこのところ含め、後でゆっくり話そうか。

 ナナオ君も一緒に、ね」

「はい、わかりました」


 ここでホークさんが挙手した。


「議長。俺としては、今夜この船で中央海域に移動し、以降できるところまでを一気にすすめる体制をとることを提案する」

「よさそうだね、ホーク。具体的には?」


 * * * * *


 結果からいうと、ホークさんの提案は採用となった。

 ざっくりというと、こんなかんじだ。


 ここまでは、一つずつ塔を攻略していた。

 けれど、明日は西の塔に入るのもシステムコントロールの確立もすんなり可能と仮定のうえ、東と南の塔に竜樹チームと七瀬チームがスタンバイしておく。

 そうして西の塔のコントロール確立後、即座にユーさんの提案を試してみる――すなわち、一緒に北の塔や偉名宮の浮上要請を出す。

 うまくいけば、四つの塔のうち、三つからの投票による多数決で、塔と城が浮上するはずだ。


 だが、そこはユーさん、さらに一手上を行っていた。

 東の塔には今日、ユーさんの意志で動かせる式神を置いてきた。そのため、システムに指示を出す程度ならば、わざわざ竜樹チームが行かなくてすむというのだ。

 式神にしかるべき権限を持たせておけば、塔のシステムを操作できることも、東の塔で確認済みだという。


 これはものすごく、便利だ。

 というより、塔からの遠隔操作ができるとしても、そのために塔まで行くこと自体がそもそも不便なのだから、ここまでしてはじめて、その意味が十全なものになるといってもいい。

 満場一致で、他の塔にも式神を配備することになった。


 その式神をどうするか。そこもユーさんはぬかりなかった。

 これを予測して用意しておいたということで、各チーム用に一式ずつ、『完全プラグアンドプレイ式☆かんたん式神セット』を提供してくれたのだ!

 まるで通販商品のようなそれを、これまた通販のお兄さんみたいなノリでユーさんが紹介してくれたところによれば――


『セット内容は二点。

 式神を生み出すための『卵』、そこから生み出された式神を制御するための宝珠だけ。

 使い方もカンタン!

 式神のあるじとなる人が『卵』にえいっと気合を注入すれば、本人そっくりの姿で式神が生まれてきます。

 そしてその式神と、制御用の宝珠を通じて交信できるようになるのです!

 むずかしい知識も操作もいっさい要りません。

 これで今日からあなたも、憧れの式神使いです!』


 もっとも交信といっても、このタイプの式神は自分で考えたり、しゃべったりはできない。

 あくまで、あるじからの指示や、プログラミングされた命令で作業をしたり、情報を送ったりしてくるだけの、ロボットのような存在だ。

 それでも、宝珠をつかって視覚と聴覚、動作のリンクなんかができるため、ただの作業用ロボットよりずっとずっと便利なものである。

 なお、式神を動かすエネルギーは、当面は式神のあるじのもつ精神力となっている――すなわち、あるじのもつ精神と生命のパワーが、操作のさいに宝珠に吸い取られ、式神へと送り込まれることでまかなわれる設定になっている。

 ただ、このタイプの式神はできることが少ないぶん、低燃費ですむので、ただ待機させておく程度だったら負担は小さく、ほとんど気付かないレベルでしかない。


 そんな説明とともに、式神セットが各チームのリーダーに渡された。

 東以外の各塔に明日、式神をおいてくる予定である。

 ちなみに偉名宮の式神のセットは、調査チームトップのユーリさんに託された。

 こちらは偉名宮のコントロールを確立できたら、そのときにおいてくる予定とされた。


 * * * * *


 そんなわけで俺たち七瀬チームは、にわかにあわただしくなった。

 明日、ロクにいは式神セットをもって南へ。

 俺とアズは朱鳥チームと随伴して北へ――場合によっては偉名宮まえにも明日中にいくこととなる。

 そのための準備と、休養が必要になったからだ。

 遥希さんとのお茶会もまたいずれ、ということで中止となってしまった。


 ……とはいえ、俺の気持ちは浮き立っていた。

 せっかく習ったダイビングが使えるかもしれないし、別の塔の中も見てみたかったし。

 なにより、故郷とのやりとりは俺を幸せなきもちにさせた。

 サクやんはやっとちゃんとプロポーズしたのだ。

 うちに帰ったら、家族会議がまっている。

 俺たちなら賛成だからそのまま進めてくれていいのに。俺もロクにいもそういったが、親父には少し、時間と機会が必要のようだ。

 すこし落ち着いたところで、俺たちから直接言ってほしいのだ。

『サクやんがやっとおやじの息子になるんだから、迎えてやってよ』って。


 そこまで考えたところで下段のベッドから、アズの声が聞こえてきた。


「おまえらってホント、仲いいよな」

「なに言ってんだよ、お前だってもうその一員じゃん」


 どこかさびしそうな声音に、思わずかぶせるように言っていた。

 すると小さくありがとよ、という声がして、それきり静かになった。

2019/05/04

ご指摘頂き、ありがとうございます。

少し迷いましたが、直したほうがすっきりまとまるのでこちらにさせていただきました。


53行目:

 七瀬はあさって北に行くし、竜樹は今日とですでに二連出てるからね」

 七瀬はあさって北に行くし、竜樹は今日ですでに二連出てるからね」


2019/05/04

この「部分」初出の要ルビ名(人名・地名など)にルビを追加いたしました。

ユーリ「さん」が抜けていたのを修正しました。


フライングですが、混乱するので削りました

 サクやんはやっとちゃんとプロポーズしたのだ。花菜恵と、ルナさんに。

 サクやんはやっとちゃんとプロポーズしたのだ。



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