表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
咲也・此花STEPS!! 3~もと・訳ありフリーターの俺たちが青い空へと旅立つまで~  作者: 日向 るきあ
STEP4.ため息の騎士長/調査二日目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/49

STEP4-4 迷い~遥儚の場合~

「もー! あたしはべつにっ、ナナオのことは……っ!」


 エリカは顔を真っ赤にして、必死に言い訳をします。

 先程も、あんなに奈々緒さんにみとれていたのに。

 そんな様子がかわいらしくて、ついついからかってしまうのです。

 ……ユーさんの気持ちがよくわかります。

 ころころと変わる表情。にぎやかな受けこたえ。エリカといると飽きません。


「だいたいあたしっ、ああいう子はタイプじゃないし!

 たしかに優しいしいい子だしかわいいけどっ!

 でも可愛い子枠だったらあたしにはミーナがいるもん! ハルキのおよめさんになったってミーナはずーっとあたしのミーナだもん! ねっミーナ~!」

「ふえっ?! あわわわ、それはその……」


 今度はエリカの腕の中でミーナが真っ赤。

 あわててごまかそうとするけれど、ごまかせていません。

 もう、そんな必要はないのに。

 こちらもたまらなくかわいくて、思わずよしよしと頭を撫でてしまいます。


「そそっ、そんなことより!!

 ほんとにだいじょぶなの、昼間の?

 その、……」

「わかってますわ。

 ありがとう、エリカ。心配してくれて」


 そう、わかっています。

 あの『式』はユーさんのもの。おそらくはエリカに頼まれて置いていった。

 わかって、あえて足を引かれるにまかせたのですから。


 ――あのときじかに触れたあの方の腕はとても熱く、そして力強くて、思い出すだけで胸が高鳴ってしまいます。


 あの方は、朱鳥あすかがユキマイに“押しつけた”剣。

 朱鳥の姫たるわたくしが、婿として娶ることはできません。


 それにあの方の目はいつも、奈々緒さんに向けられていて……

 きっとそこには、単なる友人以上の感情があるのです。


 でも、だからこそなお、追ってしまうのはおかしいことでしょうか?



 気付けばわたしはひとり、自室でスマートフォンを手にしていました。

 誠人まさとさんに送るメールが、書きかけで止まっています。

『式』のことはたぶんもう、遥希はるきから知らされているでしょう。

 きっと心配してくださっているはず。だから、送ろうとしたのです。

 海水浴は楽しい思い出となったので大丈夫、と。

 みんなで撮った写真を添えて……


 と考えたのに、なぜでしょう。その写真を改めてみると、とても恥ずかしいのです。

 子供の頃から鹿目かなめ家の皆様とは、一緒に海水浴を楽しんでいました。ですのでいまさら水着姿を披露したところで、恥ずかしいわけなどないのに。

 ――あの方も、一緒に写っているからでしょうか。


 そのとき音声着信。誠人さんからです。

 わたしは、出られませんでした。

 スマートフォンをサイドボードにおいて、隠れるように距離をとり……

 メッセージ預かりサービスに吹き込まれていく、気遣わしげで暖かい、優しい声をほのかに聞いていることしかできませんでした。


 どうしちゃったんだろう。

 どうしちゃったんだろう、わたし。


 ふいに泣き出しそうになりました。

 困ったときはいつも、誠人さんに話を聞いていただいてきました。

 でも、こんなこと、どうやって相談すればいいのでしょう。

 そもそも、何を相談すればいいのでしょう?


 スマートフォンをそのままに、わたしは屋上のデッキに出ました。

 怖いくらいの星空が今日はちょっとだけにじんで、なんだか叱られた後の子供のような心地です。


「あれ、ハルナ。

 どうしたの、なんだかしょんぼりして」


 けれどそこへ、あたたかな声。

 振り返ればそこには、ユーリさんが笑って立っていらっしゃいました。

 思わず打ち明けていました。といっても、わたし自身もよくはつかみきれていない気持ちです。どうしても、とりとめのない、つたない話となってしまいます。

 けれどそんな話を、ユーリさんはいやな顔ひとつせず聞いてくださいました。


 ――迷うなら、とにかく話してごらん。

 あたしや、そのふたり。

 ハルナ自身とも、ゆっくりとね。

 いつでも相談に乗るよ。まってるから。


 そうして、そんな力強い言葉をくださいました。

 わたしはだから、そのメールを書き上げて送りました。

 みんなで海水浴。ちょっとしたハプニングもありましたが大丈夫、楽しい思い出になりました。写真は、はずかしいからなしです。帰国したらお見せします、と。


 そう、わたしはそもそもまだ、あの方とあまりお話しできていないのです。

 なにもかも、まずはこれから。

 調査の折り返し点も視野に入る今、ぼうっとしている暇はないのです。

2019/05/04

この「部分」初出の要ルビ名(人名・地名など)にルビを追加いたしました。

朱鳥あすか誠人まさと遥希はるき鹿目かなめ



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ