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STEP1-1 探検しようぜ! ~しかし言いだしっぺの俺は行けないようです~

 呼ばれて出てゆけば、確かに大変なことになっていた。

 遠く南東の沖合いが、泡立っているのが見える。

 はるかな海底から響いてくる、振動と地鳴りは徐々に大きくなっていく。

 やがて、海面がぐわっ、とばかりに盛り上がり――


 姿を表したのは、遺跡らしき塔を擁した、小さな岩のような島だった。


 もちろん、俺の結論はひとつだ。

「よしっ、ちょうどいい! みんなで探検しようぜ!」

「いくわよ、もちろん! ねっミーナ!」

「ふえええ?!」

 真っ先にノッてくれた美少女は、アユーラ国大統領令嬢・エリカだ。

 赤いリボンで結ばれた、まばゆい金色のツインテールが誇らしげに揺れれば、大きな紺碧の瞳もキラキラ輝く。

 もっとも、ふわふわみつあみ眼鏡の相棒、ミーナはあわあわしているようだが――


「私もお供いたしますよ、もちろん」

「ゆーさんまで~!!」

 竜樹国公子のユーさんことファン 宇航ィユハンは、背中で束ねた黒髪をさらりと流しつつ、姫君に対する騎士のごとく一礼する。

 ああ、これはミーナ、押し切られたな……

 だが、この俳優はだしなオリエンタルビューティー(♂)の隣でゆらゆらしてるピンクの熊のきぐるみ、あれは一体なんだったろう。俺が疲れているんだろうか。


「まあ、楽しそう。ね、遥希はるき

「……そうだね、遥儚はるな

 朱鳥あすか国のロイヤルファミリーというべき瑠名るめい家。その本家の子女であるふたごの姉弟は、顔を見合わせて笑う。

 だがそのしっとりと黒い瞳はなぜか、不思議なほどに緊張感を伴っているようにも見える。

 遥希くんはちらっ、と誠人さんのほうを見るが、誠人さんは気付いていないのか、そのふりをしているのか、ひたすら沖を見ている。

 そしてそれは、遥儚さんも同様だ。


「あの位置だと、ギリギリウチの領海に接するかどうかのところだね。

 場所的に、あたしたちがホストになったほうがいいのかな」

「そうだな。建国間もないユキマイでは負荷も大きかろう。

 あの海のことなら俺たちがいちばん詳しいしな」

 センティオ諸島連合の代表、ユーリさんとホークさんが、ありがたくもそう言ってくれる。

 小麦色の肌に健康的な体躯の持ち主、気持ちもさっぱりとしたお兄さんお姉さんが自信に満ちたご様子で言ってくれると、たのもしさMAXである。


 ……というか、言い出したのは俺なのに、なんてきっぷのよさだろう!

 俺は感謝とともに頭を下げた。

「いいんですか? ありがとうございます!」

「では、医薬品関係はわが国で担保させていただこう。いいな、我が王」

「うん、もちろんそうさせてもらおう。お世話になるなら、できることをやらなきゃな!」

 サクのナイスフォローにもちろん俺はGOを出す。


「じゃあ、調査の装備品や機材関係はウチかしら?

 まかせなさい、アユーラの科学力は世界一よ!」

「エリカ! こういうのはおじさまが……」

「いいだろう、やってみなさい」

「ミーナちゃん、エリカのことをお願いね」

「ええええ! あわわわ、はっはい! がんばりますー!!」

 エリカの独走とみえた提案にサラッとGOの大統領夫妻。すごい太っ腹ぶりだ。哀れミーナはまたしてもわたわたしているが。うん、ちょっと気の毒になってきたぞ。


「と、いうことは、我々にはやはり情報面を担当せよと……

 さすがは我が姫、お目が高くていらっしゃる。

 お任せください、この海底探査に必要な情報は何なりと取り揃えてご覧に入れます」

 ユーさんはたおやかに微笑む。

 竜樹国は古きを重んじ、新しきを愛する商業と学問の国。その分担は妥当である。

 ……うん、なぜかただのエリカねらいにしか見えないのは気のせいだよな。

 そしてとなりのピンクの熊……うん、気にするのはやめておこう。


「我々は、そうですね。この『生まれ』を提供するのがいちばんでしょう。

 あの島はおそらく、偉名王宮南塔。

 東西南北の守りの塔、ひいてはその中心に眠る偉名王宮本殿を探索するに当たっては、我らの血が――

 偉名王家ゆかりの血が有する『権限』が、かならずやお役に立ちましょう。

 遥儚、遥希、行ってくれるな。

 もちろんその他にも、できる限りの支援をさせて頂くとお約束します」

「はい、父上」

「かしこまりましたわ、お父様」

 瑠名家当主・遥明はるあきさんが落ち着いた口調で言い出したのは、驚きの提案だった。

 本家の子女である遥儚さんと遥希くんを、本家の子女だから、という理由で派遣すると申し出てくれたのだ。

「い、いいんですか? たしか遥希くんて、大学生で……」

「いいんだよサクヤ。卒論はとっくに提出した。

 今の僕は研究生だ。つまり、研究調査は僕の本分だからね?」

「そういうことでしたら……」

 そういうことなら、断る理由はない。

 遥希さんと遥儚さんは誠人さんと長年のお友達だというし、ちゃんと話してみたかったのでこれはナイスタイミングだ。

 まあ遥希くんについては、俺の頭を調べたい、とか言い出させないように注意は必要かもしれないが、根っから悪い人ではないのはわかる。


「それじゃあ俺も……」

 だが、言いかけるとサクがにこやかに俺の言葉をぶった切った。

「では、こちらからの人員はのちほど厳選してご連絡致しましょう」

「ええちょっと! 俺行き……なんでもないです……」

 振り返ったサクのごーじゃすすぎる笑顔には、さきのチョップなみの気合が入っていた。

 そのため俺は、やむなく口をつぐんだのであった。

 そんな俺の肩を、おなじく口をつぐんだイザークがぽんぽん、と叩いていた。

20190412 二箇所表現を修正いたしました。

 遠く、南東の沖合いの海面が→ 遠く南東の沖合いが

 まあ、俺の頭を調べたい、とか言い出させないように注意は必要かもしれないが、根っから悪い人ではないのはわかる。

 誠人さんとも長年のお友達だというし、ちゃんと話してみたかったのでこの機会はナイスタイミングだ。

 遥希さんと遥儚さんは誠人さんと長年のお友達だというし、ちゃんと話してみたかったのでこれはナイスタイミングだ。

 まあ遥希くんについては、俺の頭を調べたい、とか言い出させないように注意は必要かもしれないが、根っから悪い人ではないのはわかる。


2019/05/04

初出ルビぬけを修正いたしました。

朱鳥あすか


表現を一部追加修正いたしました。

竜樹国公子・ファン 宇航ィユハンは、

竜樹国公子のユーさんことファン 宇航ィユハンは、


2019/07/17

誤字修正いたしました。

ゆーさんはたおやかに微笑む。→ユーさんはたおやかに微笑む。

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