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咲也・此花STEPS!! 3~もと・訳ありフリーターの俺たちが青い空へと旅立つまで~  作者: 日向 るきあ
STEP3.過去との再会/天使のごほうび

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STEP3-2 過去との再会~奈々緒の場合(下)

2019/05/04

この「部分」初出の要ルビ名(人名・地名など)にルビを追加いたしました。

花菜恵はなえ遥儚はるな遥希はるき

 三階にあったのは、またしても認証式の扉。

 そしてその向こうに息づく、コントロールルームだった。

 見た感じ、東雲研究所の地下研究室にも、唯聖殿のセントラルシステムルームにも似ている。

 真ん中の謎の円筒や、ぷにふわ感のあふれる青いシート、壁ぎわにしつらえられた、コンソールとモニターはぴかぴかだ。

 まるでつい昨日、設置されたかのように。

 ロクにいがコンソール前の椅子にかけると、前面にずらりとならぶモニターにいっせいに灯がともる。

 そうして、ユーリさんやユーさんの助言も受けながら、必要事項の確認が始まった。


 ――まず、この七瀬の塔そのものについて。

 コンディションオールブルー。浮上維持OK。

 七瀬の転生組たる俺たちと、現人神の花菜恵はなえには、現時点でも全機能の使用が可能。


 ――他の各塔と城本体の位置、警備カメラで見る中の様子。

 位置は、ユーさんたちが調べてくれておいたものと一致していることが確定。

 状況はどれも、休止モードだ。

 しかし、警備をはじめとするシステムは生きていて、俺たちがもつ“公子”権限をもってすれば、内外各所に設置された警備カメラでの状況把握も問題なくできた。

 塔内部には空気が入っていて、特に荒れた様子もない。

 浮上さえさせれば、中の探索は今日同様に、障害なくすすめられるだろう。

 塔の中に入ること、その後の機能回復の指示、浮上もすべて、問題なく可能のようだ。

 それぞれの塔をつかさどる一族ゆかりの者が、そこを訪れれば大丈夫でしょう、とワダツミはいう。


『タダシ、ソレラハアクマデ一時的ナモノニ留マル見通シデス。

 ナゼナラ、コレラノ動力源ハ、イワユル『れい・らいん』カラ得ラレル『えねるぎー』、ソシテ各家ノ巫女ニヨリ集メラレシ信徒ラノ祈リノ力。モシクハ神ソノモノカラ与えラレル力デアルタメデス。

 具体的ナ例ヲ……』

 ここでアズールがわりこんだ。

「にゃー和田さん。わりぃが、おめーのしゃべり方ちっと聞き取りづらいんにゃ。

 もーちっとこうにゃ、ふつーの気楽な感じでやれにゃーにゃー?」

『コンフィグ:言語セット切リ替エ――コマンド実行、成功しました。

 それじゃ、続きを話すねー。

 たとえばこの“七瀬ノ塔”はね、七瀬の現人神・花菜恵さまからの神力がきてるから、こうやって浮上もできたし、いろんなこともできるようになってるんだ。

 でもね、他の塔については、ちょっときびしいかなぁ。

 だって、巫女さんや信徒たちはいないし、女神さまもいないでしょ?

 だから、いまためてある分をつかっちゃったら、それでおしまい。また休止モードに戻っちゃうから、浮上とかはできるけど、一時的なものになっちゃうの。

 いじょー、説明おわりっ! おっす!』

「いやあのよ……まあいいか……」


 うん、俺もちょっとぼーぜんとしてる。

 ワダツミのふつうって、なんだろう。

 それ以前に誰だろう、こんなカジュアルすぎる言語セット登録したの。

 うしろで笑い転げているユーリさんたちの声を聞きつつ、俺は当時の関係者全員の顔を思い出そうとした。

 けれど、二秒でそれを諦めた。

 たとえば万一、それが陸也ろくや兄上だったりしたら……

 今後しばらく俺は、ロクにいとどんな顔で話せばいいかわからない。

 そんな禁断の箱をあける勇気は、今の俺にはなかったから。



「とりあえずの見通しは立ったな。

 場所はわかった、探査はできる。

 一時的ながら浮上も、機能の使用もできなくはない。

 今日の調査が終わったら一度、ここは閉めよう。ハナエちゃんに負担をかけることになるのは、心苦しいからね」

 ともあれユーリさんはひととおり笑い終わると、優しくそういってくれた。

 ロクにいが微笑んでかるく一礼する。

「ありがとうございます。

 ではベースに帰還後すぐ、花菜恵たちと話してみます。

 必要なときにだけ力を送るようにすることで、負担をセーブしつつ、調査の協力もできるかもしれませんから」

「ありがとう。

 連絡取れたらすぐに知らせて。夜中でも早朝でもかまわないからね」


 * * * * *


 ベースに戻った俺たちは着替えももどかしく、通信室にとびこんだ。

 テレビ通話システムを使い、唯聖殿を呼び出すと、花菜恵はすでに待機していた。

 自信にあふれた笑みで伝えてくれたのは、この上なく頼もしい言葉。

『待ってたわ兄さまたち。わたしの力を使えないかってハナシよね?

 もちろんだいじょぶよ。っていうか、この程度だったらとくに負荷にもなってないし、調査終了まであけっぱでもかまわないわ。

 さすがに、他のみっつにも融通してほしいとか、戦時モードにするときはひとことほしいけどね!』

「ほ、ほんとに?」

「それはうれしいが、花菜恵、おまえに負担はないのかい?」

『ないない! だってわたしはユキマイの化身の半身でもあるのよ! そのくらいよゆーのヨンさまよ!』

「それはよかった、ありがとう」

「でもイザってときは俺たちやみんなに言ってくれよ。

 みんなならきっと、お祈りもしてくれるはずだから」

『うん!

 あ、あとイメイ宮ね。サキのチカラが動力源として使えるはずだから、そのときには連絡して。こっちからパワー投げるから!』

「ほんと? たすかるよ!」

「すみません、咲也さん。お忙しいところを……」

 花菜恵のとなりでサクやんも、いつものように笑って言ってくれる。

『だいじょぶですよ、ロク兄さん!

 どんなカタチでも協力できるなら、俺もうれしいですし!』

「ありがとサクやん。ほんと、助かるよ。

 じゃ、またね花菜恵、みんな。なんかあったら、連絡してね」

『りょーかいよ! 兄さまたちも、こまったときにはすぐにいってね!』

 かわいらしく笑う花菜恵のうしろで、口々にエールを送ってくれるサクやんたち。

 心がぽかぽかするのを感じながら、俺はユーリさんに報告を上げたのだった。

「……ぐう」

 そのとき聞こえた変な音に振り返ると、アズは俺たちのずっと後ろ、通信室の壁にもたれて居眠りしていた。


 * * * * *


 明日の予定は、東の塔の探索となった。

 理由は、ベースからの距離を考えると、東か西を次にするのがよさそうだったこと。

 それと、東の塔ゆかりの人物――ユーさん本人の主張からだった。

 自分は情報担当だ。よって、はやめに鍵の役目をすませてしまい、情報分析に集中できるようにするのがもっとも効率的だという。

 さすがは情報担当というべきか、その言葉には説得力があった。


「今日行った人たちは、明日は休んだほうがいいんじゃないかな。

 とくにエリカ殿たち。あさってはあなた方が主役ですからね」

「えー。今日も大したことしてないし、カラダがなまっちゃうわ!」

「では私とふたり、熱いダンスパーテ」

「あら、やっとフェンシングの練習に付き合ってくれるのね? それじゃ」

「すみません急用ができまして。かわりにジゥがお相手しましょう」

「え~。わたし剣とかできませんよ若~。

 それにひとりで姫のお相手したらあとからヤキモチやかれて大変じゃないですか~。

 仕事、もとい若のストーキングにも支障が出ますし~」

「ジゥ……あんたいろいろダダモレよ……」

「はわわわ……」


 竜樹国コンビとエリカが軽口をたたきあえば、ロクにいはほのぼのニコニコ、ミーナはあわあわ。

 そこへ遥儚はるなさんがいい解決策を出してくれた。

「それでは、支障のない範囲でマリンレジャーを楽しんではいかが?

 海水浴用の水着も持ってきているのでしょう、エリカ?」

「そっ! そそそそれはそう、だけどっ……!」

 とたんに真っ赤になってもじもじしだすエリカ。なぜかそっぽをむいてる遥希はるきさん。

 あれ、これって……?

 はたして遥希さんはいいだした。

「そ、それなら遥儚も、参加したらどうかな。明日の調査は、僕が同行するからさ」

「まあ、いいんですの遥希? あなたの水着姿を見たい方もいらっしゃるかもしれなくってよ?」

「そんな頭おかしい男がいたら速攻海に沈めるね。」

 とたん、にこやかにしかしじろっと見られ、アズは心外だと声をあげる。

「にゃー! なんでこっちを見るのかにゃー!

 無実だにゃ! 絶対確実に無実だにゃー!!」

「……うん、むしろ逆にムカついた。」

「やだー! たすけてナナちーん!」

 アズは瞬時に俺の後ろに隠れた。

 遥希さんはというと、メイちゃんと亜貴をたして二で割ったかのような笑顔。

 これは助けないわけには行かない。うまくいく自信なんかぜんぜんないけど、なんとか仲裁を試みた。

「あ、あの遥希さん、えーと、そう、遥希さんは女性陣にすごく人気だから!

 女性だったらいいんだよねっ?」

「…… は?

 人気? 僕が? なんで?」

 すると遥希さんは、あっけにとられた顔になり、エリカと遥儚さんがにこーっと笑った。

「それは……ねえ?」

「ミーナ。ひとつ、鈍感な弟に説明してあげてくださらない?」

「ふええっ?! そ……それはそのっ!!

 わ、わ、わたしなんかが、そのっ……お、お、おそれおおいですっっ!!」

 ミーナはみるみる真っ赤になって、会議室を飛び出していった。遥希さんはぽかーん。

「ミーナは第二デッキがお気に入りだったね、確か。

 これ。後でいいから届けておいてくれないかい、ハルキ?」

 そこへユーリさんが取り出したのは、かわいらしいマフィンの入った小袋だ。

「これは……」

「ホークからの差し入れ。はい、こっちはハルキのぶん。」

「ど、どうも……」


 ホークさん。今日この場にはいないけど、いたらとんでもない存在感を放っていたはずの人。

 身長も胸囲も確実に2m近くあって――なんというかそう、羽飾りとトマホークを身に着けて、小さな子供を三人くらい腕にぶら下げてるのが似合いそうな人。

 あれで俺たちとそう違わないんだから、遺伝子ってのはわからない。

 そのホークさんが、このかわいらしいマフィンを作ったというのだから、人は見かけによらないというのか、なんというのか。


「で、これはみんなの分。

 明日の調査にくるのは竜樹プラス、ハルナかハルキぬきの朱鳥でいいね。

 よし、それじゃあ解散!」

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