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先輩

「おう悪いな、たまたま見ちまったもんでよ。それで無事か??」


砂煙の向こうから出てきた黒い鎧の男。アレンはサクラを起こしながらもその一挙一動を油断なく見続けていた。鎧の男が小さく肩をすくめた。


「あー、そうだな、俺から名乗らないとな。俺はホーク、都市唯一の単独(ソロ)Aランク冒険者にして『神速』のホークである!!」


アレンは一瞬で残念な人と直感した。


「……!?Aランク冒険者!?」

「そうだぜ、冒険者証だって見せてもいい。何せ俺!!だからな」


どこか癇に障る喋り方である。ドヤぁぁ、なんてよく分からない言葉をアレンは彼の背後に幻視した。

ポカンとしているとレオン達が集まってきた。


「自分達はDランク冒険者パーティー、"レイト・ブルーマーズ"です。私はレオン、そちらがアレンにサクラ、こちらがジークハルトとミーシャです」

「おっ、よろしくな。にしても流暢な敬語だな、もしかして貴族か??」

「ありがとうございます、母から叩き込まれたものですよ」

「あんたが『神速』と謳われる槍使い、ホークか!!俺あんたみたいな凄腕になりたいんだ!!」

「そうかそうか、俺みたいになりたいか!!」


わっはっはっ!!!なんて大きな笑い声が迷宮内に響く。レオンが自己紹介をしてジークハルトが食い付いた。同じ槍使いとして興奮しているのだろう。アレンは初めて会うAランク冒険者という理想像がガラガラと崩れていくのをその内に感じていた…



▷▶︎▷



「所でホークさんは何でここに??」

「俺か??迷宮探索から帰る途中だぜ」


そう話しかけるジークハルト、彼は迷宮探索を終えた後のようだ。アレンはその言葉を聞くが、彼は槍以外に大きな荷物を待っていない事に気付いた。


「ホークさん、なら魔石とか素材は何処に??」

「ん??お前らもしかして成り立て(ルーキー)か。」

「はい、今回も迷宮に初挑戦です」

「そうか、それにしてはよく動けてたな」

「ありがとうございます」


主にレオンが彼と受け答えする。ジークハルト以外は武器の手入れ等をしながら話を聞いていた。会話を聞く中、アレンは1つ疑問を抱いた。


「ホークさん、あんた俺達の戦闘が見えていたのか??」

「ん??あぁそうか、成り立て(ルーキー)なら知らなくても仕方ない、これはすぐには教えて貰わないものだからな」


レオンがすぐにアレンの言葉の真意に気付いた。犬顔人(コボルト)の群れとの戦闘中ホークらしき影は見当たらず、サクラを助けた一投は砂煙の向こうから狙ったものだったのだ。

アレン達が首を傾げる中、ホークが肩に担いでいる槍を取り出した。


「これはスキルだ」

「スキル??」

「あぁ、技の固定化、技能の昇華。これもジョブの恩恵の1つだな」

「ジョブにそんな力が…」

「俺がお前達の戦闘を見ていたのは、正確には見ていたの訳ではないんだ。スキル"魔力感知"、大気中の魔力を正確に感じ取ることで物の動きを把握するものだ」

「魔力感知??ホークさんは魔法を使えるのか??」

「いや、ホークさんは槍だよな!?」


ジョブの新たな力を明かしたホーク。先輩として後輩をどこか微笑ましく見る。


「魔力はなにも魔法職だけのもんじゃない、いやむしろ前衛職であれば必須になってくるもんだ」

「じゃあ、どうしてガランさんは教えてくれなかったんだろう…」

「お前ガランさんと知り合いなのか!!あの人のやりそうな事だよ」


前衛職に必須と言われたジョブの恩恵をアレン達は教えて貰っていない。その意図がどういうものか考える。


「スキルは並大抵の努力じゃ身に付けられない、1stジョブなら尚更な。まぁ、自然に習得できるスキルもあるけどな。そうだな…」


ホークが掌を掲げた。アレン達が見ていると、掌に何かが集まっているような感覚、特にレオンが感じていた。


「おっ、魔法使いの小僧は特に感じているみたいだな。これが魔力、人ならば誰にでも眠っている力だ」

「ホークさんは魔力を操れるのですか!?」

「おうとも、むしろスキルを習得する上で特に大切なスキルだ、見てろ」


そう言い、ホークは槍を構える。彼の目線の先には大人でも持ち上げることが不可能な程大きな岩があった。


「槍技:『貫突』」


ーーー刹那、一条の閃光が岩を破砕した。破片が飛び散り、衝撃の余波が周りに伝わってくる。ホークが槍を突き出した構えのまま一息ついてアレン達を見た。


「これがスキル"槍技"、まぁ槍士系のジョブに就いてる奴が使えるスキルだな。技系のスキルは様々な種類の技がある、まぁ地上に戻ったら誰かに教えて貰えばいいさ」

「なんという威力…!!」

「すげぇすげぇ流石ホークさんだぜ!!」

「凄いわね…」

「う、うん…」

「そ、そうか!?まぁA級冒険者だからな、これぐらい当然だぜ!!」


ジークハルトは普段余り見せない子供のような目で彼を賞賛し、当然と言いながらも満更ではなさそうなホーク。新たな力の存在に驚く面々だ。


「技に魔力を込める事でスキルへと昇華し、威力・精度が爆発的に上がる。ジョブの身体能力の強化だけじゃより下層の強いモンスターには決定打になりえねぇからな」

「な、成程、確かに魔力操作は必須ですね…」

「よっしアレン、5階層の階層主(ボス・モンスター)さっさと倒して地上に戻って魔力操作のスキルを覚えるぞ!!」

「……」

「…アレン??」

「ん??あぁごめんジーク、考え事をしていた。魔力操作、だよな??」


アレン達が盛り上がるのを見届け、『神速』のホークは槍を握り直した。地上へ戻るようだ。


「それじゃあ俺は行く。期待してるぞぉ、卵共。この『神速』のホークが教えてやったんだ、死ぬなんて許さねぇからな??」

「もちろんっすよホークさん!!少しでも貴方に近付けるよう頑張るぜ!!」

「はい、もちろんです。ご教授ありがとうございました」

「ありがとう、ホークさん!!」

「ありがとうございます!!」


各々が彼へ感謝を述べ、ホークは歩いて離れていった。



▷▶︎▷



「さて、面白そうな奴らだったな」


アレン達から離れてしばらく歩き、『神速』のホークは振り返った。そこには上層の数多のモンスター達の姿が。


「はしゃぎやがって。まぁ、『神速』たる俺と話せたんだから当然か??」


自分に絶対の自信が無ければ言えない言葉である。しかし、その言葉とは裏腹にその瞳には静けさを内包してモンスター達を見据える。


「わざわざこの俺がスキルでモンスター達を引き付けてるんだ、あいつらに襲いかかる事もないだろう」


そう、彼がアレン達レイト・ブルーマーズと話している時彼はスキル"威圧"、"挑発"を使って上層の魔物達を操っていたのだ。単独(ソロ)として数々の死線を潜り抜けて来た彼は多種多様なスキルを習得している。


「…あのアレンという小僧、あいつは何を秘めてるんだろうなぁ…」


最後に小さくそう言って、彼はモンスターの山へその身を投じた。



▷▶︎▷



「モンスター、いませんね…」

「いないな」

「いないわね」


ホークと離れたアレン達は先に進むが、全く遭遇しない。それに戸惑うが戦わずに済むのであればこれ以上のことはなく、先へ進んでいく。


「着いてしまいましたね、5階層への階段…」

「まぁいいじゃねえか。ここで少し休憩を取ってから突撃(アタック)だ。」

「まぁ、そうですね。…アレン、先程から静かですが、どうしました??」

「ん??いや、なんでもないよ」

「ならいいのですが…」


迷宮は5階層毎に階層主(ボス・モンスター)が存在する。階層主(ボス・モンスター)は毎回種類が変わり何が出てくるかは分からないが、それらは例外無く同種のモンスターとは一線を画す強さを持っていた。


「では、そろそろ行きますか」

「だな」

「速攻で倒してやるぜ」

「私も頑張るよ」

「役に立てるように頑張る」


暫しの休憩を取り、レイト・ブルーマーズは初の階層主(ボス・モンスター)との戦いに挑む。

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