迷宮、再び
更新が遅く申し訳ありません…
今回は少し書き方を変えてみました。
感想、意見等あれば是非宜しくお願いします…,
「なんというか、回復ポーションまで貰っちゃってすみませんでした…」
「いえいえ、元はうちのお父さんがやった事ですし当然ですよ。それよりも、傷は本当に大丈夫なんですね??」
「はい、おかげさまで。」
「本当よ、心配するこっちの身にもなりなさいよ…」
「そうですごしゅじんさま!!なんかいあのくそじじいをぶちのめそうとおもったことか!!」
「リ、リュウ…??どうしたのその言葉…」
エルドの家の前に4人が居た。
アレン達とエルドの娘であるフォーランだ。
全身を切り傷だらけにしたアレンは、フォーランによって手当てをしてもらったのだ。
彼女は薬師であるらしく、自分で回復などのポーションを造る研究をしているらしい。
「では、ありがとうございました」
「いえ、父もあんな風に言っていましたが本当は貴方の事を気にかけているはずです。是非、また来てください」
「はい、また来させてもらいます」
そういって、アレン達は厳しい剣鬼の道場を後にした。
▷▶︎▷
「おう、やっと帰ってきたかアレン!!」
「おかえりなさい、アレン君」
笑う鶏亭に戻ると、ジークハルトとミーシャがいた。どうやらふたりはアレンやサクラ達を待っていたらしい。
「2人とも。そういえばもう夕飯の頃合か」
「あら、レオンはどうしたの??」
「あいつは後で降りて来るってよ。先に食べようぜ」
笑う鶏亭の大食堂のテーブルのひとつに腰掛けるふたり、周りを見渡せば皆夕飯を食べていた。
夕飯を頼もうとするが、パーティーの1人の姿が見えない事に気付く。
部屋で何かをしているらしい。
「ふっふっふっ…今日俺はミーシャとのコンビで4層まで潜ったぜ!!」
「なっ、お前いつの間に!!抜け駆けしやがって」
「はっはー!!なんとでも言うがいい、これは俺が少しリードしたかな??」
「くっそぉ…」
「ちょっとジーク君、アレン君だって好きで休んでいた訳じゃないんだからそんな風には言わないの」
この宿の看板娘でもあるレーネに各々注文しながらそう話す。
どうやら、ジークハルトとミーシャは2人で迷宮に潜っていらしい。
確かに、盾役と前衛を担うジークハルトと後衛の弓士であるミーシャは相性がいいだろう。
「ふっふっ…だがなぁジーク…俺だってただ日々を過ごしていただけじゃないぞ」
「な、何…!?」
「俺は今日、元剣聖である人物の弟子になったんだァ!!」
「なん…だと…!?」
「でもごしゅじんさまぼこぼこにされただけです」
「リュウちゃん、今そうゆうことは言わないのよ」
負けじとジークハルトに自慢し返すアレン。
絶望するジークハルト。
コソコソと話すリュウとサクラの様子を見て、全てを見通しニコニコと満面の笑みで見守るサクラ。
彼らのいつも通りの時間が過ぎていくのであった。
▷▶︎▷
「さて、また迷宮に潜る訳だけど、どこまでいく??」
時間は翌朝、太陽が登って間もない早朝。
レイト・ブルーマーズ一行は迷宮の前にいた。
「とりあえず、5層のボスモンスターは倒したいわね」
「やはり前回のボスモンスターはイレギュラーだったようです。」
「だな、なんなら15層まで行ってみるか!!」
「それは行き過ぎだよジーク君…」
「りゅうがごしゅじんさまをおまもりするのです!!」
各々気合いは十分、2度目の迷宮探索が始まった。
「よし、行くぜ!!」
▷▶︎▷
「なんというか…呆気なかったな」
「まぁ…だな」
「いいじゃない」
「そうだよ、危険が少ないのが一番だよ」
「そうですね」
「あばれたりないぞー!!がおー!!」
アレン達レイト・ブルーマーズが今居るのは迷宮5階層、つまり前回最後に探索した場所だ。
そこで、またボス・モンスターと戦ったアレン達だが…予想以上にすぐに終わった。
前回戦った大鬼は攻撃力も高い上に規格外の治癒能力を持つ個体だったが、ギルドの情報では5層の階層主はそこまで強くは無いらしい。
その事から前回のはイレギュラーと判断し今回の探索では大鬼程強くないと予想し、それでも油断なく挑んだが…随分と呆気なく終わった。
「まぁ、ドロップアイテムも手に入れられたし、いいんじゃない??」
「そうですね、『大蛇の皮膚』確かこれは防御力の高いレザー装備が作れたはずです」
「がおー、がおー」
今回戦ったのは鉄皮蛇、鉄の如き硬い皮膚を纏う中型の蛇モンスターだ。
ミーシャの矢が皮膚を通らず鉄の皮膚は魔法にも強い耐性を持っていた。
だが、アレンとジークハルト、サクラの連携を持って危なげなく倒すことが出来たのだ。
余談だが、鉄皮蛇を倒した後、パーティーに緊張が走りその死体を見詰めていたが程なくして砂へ還り魔石と素材を落とした。
皆顔を見合わせて深い安堵のため息をしたという。
▷▶︎▷
「さて、ここからどうします」
「具体的にはどこまで行くか、だな??」
「ええ、今回は前回よりも装備も整っていますしある程度までなら行けるでしょう」
「そうね、次の階層主部屋は15層よね、とりあえずそこまでなら行けるんじゃないかしら」
部屋の主を失った階層主部屋で話し合う。
階層主部屋は階層主が倒されると一定時間モンスターが湧かないのだ。
「よし、じゃあ目標は15層、だな」
「そうね」
「がんばるのです!!」
▷▶︎▷
「「「kiki!!kiki!!」」」
木が点々とする森の中、アレン達はその中を進んでいく。
迷宮は、階層主部屋を超える度に迷宮の地形が変わる。
6層からは平原地帯…迷宮という地中にありながら太陽がギラギラと輝き本物かと見間違う程高い天井と、雲が点々と存在している空が広がっている。
いや、もしかしたら、本当の空かもしれない…迷宮の謎の1つである。
「くっ、流石に硬いな」
「kikiki!!」
小柄な影の拳とアレンの剣が、火花を散らしながら打ち合う。
アレン達が今戦っているのは拳猿、名前の通り拳が硬質化しており相手を群れで嬲り殺しにする猿のモンスターである。
今、アレン達は合計10体程の拳猿の群れを相手にしていた。
「でりゃああ!!」
「「kikiki!!」」
「う〜ん、ごめん私じゃ無理っぽい!!」
「うにゃー!!」
ジークハルトはその盾で拳猿の拳打を正面から受け止める。
拳猿の硬質化した拳とジークハルトの盾が火花を散らしながらぶつかり合い、ジークハルトがそのまま槍で薙ぎ払うが、拳猿達は高く跳躍して槍を躱す。
サクラはそのナイフで拳猿の拳撃を捌こうとするが相性が悪く退がる。
そして、サクラと入れ替わるように腕を黒化させたリュウが獣のように疾走した。
「アレン!!森に囲まれたこの状況では攻撃魔法はあまり使えません、頼みましたよ!!」
「了解!!ミーシャ、一瞬だけでいい、頼む!!」
「分かったよ…!!」
短くミーシャに声を掛け、直ぐに意図を察したミーシャは向かってくる3体の拳猿に向けて弓を向けた。
同時に3本の矢を弓に番える。
引き絞られる弦、アレンが横に引いた瞬間放たれたのは3条の閃光。
「弓技"曲射"!!」
剣、槍、弓などの武器を使う者はそれぞれ魔力を用いた通常よりも威力が高い技を行使できる。
弓技"曲射"、本来ならば風の流れを読みそれに合わせて矢の軌道を変える弓使いの技…それを魔力を用いる事で如何なる時も使える弓技にしたものだ。
3本の矢がそれぞれの軌道を描いてモンスター達の顔や首に刺さる。
この技は難易度の低い弓技であるが、本人の技量が高ければ本数、命中度共に上がっていく。
「「kiki!?」」
「ki~~!!!!!」
「ごめんなさい、1体逃した!!」
3体のうち2体はそれぞれ矢が刺さり足が止まるが、1体だけ矢を避けそのままアレンに向かった。
「いや、十分だ…」
その時、駆ける拳猿が見たのは剣を水平にして溜めの構えを作る剣士。
「剣技"一閃"!!」
アレンが両手で剣を振り切った。
だがまだ拳猿達は剣の間合いの外側、アレンの剣技は空振りに終わった…
「「「kiki~~!?!?」」」
かに、思われた。
「よしっ」
握り拳を作るアレン。
剣技"一閃"、魔力で斬撃を拡張、間合いを格段に広くする技だ。
エルドの元に師事するようになり技を磨いていたが、まだ慣れていない為実践では成功していなかったのだ。
「行けるぞ、次だ」