謎の少女
投稿が遅くなり申し訳ありません。1週間に1話を目標にしているのですが、まだ学生であるが故忙しいことも多く不定期更新となってしまいます。
また、今回の話は書きたいことを収めきれず変な風に終わっています。まだまだ未熟者ですが、読んで貰えると幸いです。何か意見等ありましたら是非コメント欄にお願いします。
ーーー迷宮とは??
未だ世界の謎とされる魑魅魍魎が蔓延る異世界。だがそんな謎に人は惹かれ、様々な者が迷宮へ足を運んで行く。
いつからあるか、それは短い生命の期間しか持てぬ人間には分からない。数百年生きるとされる上位の竜、または龍や長寿な種族であるエルフなどは知っているかもしれない。
迷宮のモンスターは、地上に棲息している魔物を模倣している、というのが通説だ。
モンスターは核である魔石を原動力として動く、これは地上の魔物には魔石など有していない事から考えられる。
地上の魔物は子孫を残す為に巣を作り、営み、繁栄していく。一方で魔石を核とし迷宮から生まれるモンスターに生殖本能は本来必要としない。
だが、それでも迷宮のモンスター達は巣を作って繁栄していく、そこに子孫は残らなくても。この事から迷宮のモンスターは地上の魔物を忠実に再現していると言えるだろう。
ーーー迷宮の最奥に何があるか??
これは未だ、誰も知らない。
各地にある迷宮、その全てにおいて最奥に辿り着いたものは居ない。
迷宮が形作る『実体を持つ投影』、人々はこの謎を追求するために迷宮へ足を運ぶ。
だが…
もし、迷宮の最奥に辿り着き魔法の深淵の一端を既に見た者が居たとすれば??
▷▶︎▷
「……ん」
ぼんやりと目が覚めて、ぼーっと天井を見詰める。清潔でシミ1つない綺麗な天井だった。
「…知らない天井だ」
少しずつ意識が覚醒していくのが自分でも分かる。でも体を動かそうとはしない。体全体が鉛のように重いのだ。
「……!!そうだ、皆は…!?」
そしてあの怪物との戦いを思い出す。すぐさま飛び起きようとしたが疲労が蓄積した体を思うように動かせず、ゆっくりと起き上がった。
「皆……??」
起き上がったことで視界が広がり、最初に目に入ったのは目の前の不自然な膨らみだった。
殆ど反射的とも言えるような警戒のけの字もないゆったりとした動作で自分が被っている布団をめくってみる。
「…女の子??」
スヤスヤと我が家のように安心しきった顔で眠る可愛らしい女の子がいた。自分の股でそんな最早意味不明な状況に起きたばかりのアレンには受け止められるはずも無く、呆然としていた。
「……ん、くわぁぁ…あ、ご主人様おはようございます!!」
「…え??」
布団を1部剥がされ外気の空気に当たったことでその女の子は大きな欠伸をして起き、アレンに快活に起床のあいさつをした。
こんなまだ10にも届いているだろうかぐらいの女の子に『ご主人様』と呼ばれる心当たりがアレンにある訳がなく、素っ頓狂な声で返事をしてしまう。
「初めましてご主人様!!わたしは「アレン!!目が覚めたんですか!!」」
その大きな瞳で自らの主を見詰め自己紹介をしようとする少女。だがその途中でこの部屋の扉が空いてしまった。
「あっ…」
「……アレン??そのお嬢さんは??」
「いや、その…」
レオンが数瞬をおいて、アレンにそう質問する。思わず口ごもり目をそらすがレオンは有無を言わさぬ目でこちらをじっと見てくる。すると…
「こんにちは!!わたし、ご主人様の眷属になります!!」
「はいこんにちは、レオンといいます。それで、眷属というのは??」
「はい!!ご主人様の一の下僕としてこうしてわたしは生まれました!!」
「そう、ですか…ありがとうございます。えっと、名前は」
「まだありません!!宜しければご主人様に名前を頂戴したく思っています。」
少女とレオンが話す。少女は誘拐されてきたような様子も何も無く、本当に心から明るい少女だと話したレオンは分かった。
「そうですね、君のご主人様、少しだけ借りてもいいですか??話さないといけないことがあるんです」
「えっ、でも!!…でも、わたしも一緒にいったらダメですか…??」
「……ごめんね、少しだけ待っていてくれるかな??」
見るからにシュンとする少女。心が痛むが彼女を連れていく訳にも行かないので軽く頭を撫でてベッドから離れた。
▷▶︎▷
「こんにちは、アレン君。私はシリウス、ここ冒険者組合ドローム支部の支部長を任されている者だ」
人目で高級な物だと分ける大きな机、そしてそれに腰掛ける1人の男性とアレンは向かい合っていた。
「Dランク冒険者、アレンだ…です」
「うん、良い心がけだ。冒険者はどんな者もなれる分礼儀を知らない荒くれ者も多い。仕方の無いことだが、君のような少年が居てくれて嬉しいよ」
「ありがとうございます」
「よろしい、それで今回は僕が君を呼び出した理由は分かるかな??」
「それは……はい」
アレンも何故自分が冒険者組合ドローム支部において最も高い地位に就く支部長とこうして会っているのか、朧げに覚えている記憶から既に分かっていた。
「単刀直入に言おう。君の力は固有魔力に属する物だ」
「固有…魔力、ですか」
「そう、何千何万という人の中でも極ひと握りの人間が持つ特異な才能、属性魔力とも言う」
アレンは聞き覚えの無い言葉に戸惑っていた。その特異な才能とやらが自分にあるのかと困惑する。
「支部長、解析が終了致しました」
少しの沈黙が流れていると、ノックと共に支部長室の扉が開いた。入ってきたのはスーツを着こなす妙齢の女性だ。
彼女は部屋に入るとアレンに一礼し、横を通ってシリウスに持っていた1枚の書類を手渡した。
「ありがとう、何か飲み物と持ってきてくれるかい。あぁ、アレン君もそこに座るといいよ」
「承知致しました」
女性はシリウスの支持で奥の部屋へ入っていき、アレンは言われた通り横の高価そうなソファによそよそしく腰掛ける。シリウスも書類を持ってアレンの向かいへ腰掛けた。
「さて…あぁ、彼女は僕の秘書だ」
「秘書のレイでございます」
紅茶と茶菓子を持ってきた女性ーー秘書のレイがアレンに一礼しアレンもつられて頭を下げた。
「さて、君の発言した魔力の話だったね。ふむ…」
アレンにそう話しかけながら秘書のレイが渡した1枚の書類を彼はじっくりと見ていた。
「…ほう、これはこれは。どうやら、君に発現した固有魔力は『竜』、竜の力を宿す魔力のようだ」
「竜、ですか…??」
「そう、最下級のものでさえ新人パーティーでは到底倒せない、魔物の中でも上位の存在である竜。これは面白いね」
秘書のレイに指示を出して何冊かの本を読みながらそう話し、次に本を閉じる。
「ーーーその力、何処で手に入れた」
鋭く吊り上げられた凍てつく眼光を向けて。
「っ!?」
支部長室全体の空気が急激に下がったと錯覚する。飛び退く暇もなく座ったまま体が金縛りのように動かない。
「……!?」
「固有魔力とはあくまで属性を強化、固有属性から派生する固有スキルを発現させるようなものだ。断じて魔物の力を宿すなどという異端なものではない」
シリウスの言葉を聞き反論する間もなく混乱してしまう。当然だろう、本人は朧気にしか覚えていないのだから。
「…俺は…知ら、ない……!!」
「ふむ、そうか」
なんとか口を開き、シリウスもその返答を加味して考える。意識が逸れたからか、大滝の様な威圧が少しだけ収まり呼吸が整う。
そして
「ご主人様に何をする!!」
「君は…!?」
虚空から現れる少女、間違いなくアレンの股で寝ていた謎の少女だ。
少女はそのまま手を鉤爪の様に構えてシリウスに向かうが透明の壁が阻む。
「ふぎゃっ!!」
「ふむ、この少女…僕は視ていないな」
壁に激突しながらもそのまま引っ掻く少女と彼女に興味が移ったシリウス。武器も付けずに何度も引っ掻く少女をアレンは止めようとするが、彼女の手が黒く変色していること気付く。
「うがぁぁぁぁ!!」
「レイ君」
「はい」
怒涛の勢いで黒い何かを纏った手で引っ掻き続ける。そんな少女の様子とアレンの呆然とした表情を見て、シリウスはレイに呼びかけた。
レイが手を振る、その瞬間少女は今まで壁となって阻んでいた透明な何かが少女を包む。少女も抵抗するが次第に大人しくなり眠った。アレンはその様子をただ見ていることしか出来ず、そのまま彼の腕へゆっくりと少女が落ちた。
「どうやら君が言っていることは本当のようだね、Dランク冒険者アレン君。すまなかった、君を見極めたかったんだ、許してくれ」
「えっ??あぁ、いえ…」
先程と違い優しく細められたシリウスの瞳、アレンは特に責めもせず謝罪を受け入れた。