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怪物

「殺す」


振り下ろされる殺意の塊。豪腕をもって下された一撃、それをアレンは片手で受け止めた。


「GU◾O??」


大鬼(オーガ)が疑問の呻き声をあげる。先程は為す術もなく吹き飛ばされた筈なのに、どこにそんな力が残っているのかと。


「……」


俯いたまま無言のアレン、見るとその受け止めた拳が黒く染まっている。


「消し飛べ」


黒い何かを纏った腕が静かに振るわれた。刹那、大鬼(オーガ)は吹き飛び壁へ激突した。

大鬼(オーガ)が苦悶の声をあげる。しかしそんなものには意を介さずアレンはゆっくりとした歩みで近付いて行った。


「『竜ノ衣』」


一言呟き、それに呼応する様に右腕にまで広がっている闇が瞬時に増殖、アレンがドス黒い闇に染まった。


「…GAAA◾◾AA◾A!!!!」

「…うるさい」


大鬼(オーガ)が自らの敵に向かって自信を鼓舞するように咆哮する。その体には既に傷は無い。


「G◾AAA◾AAAAAAAA◾!!!!」

「…うるさい…」


吹き飛ばされた時に手から離してしまった棍棒など構わず、無手のまま突っ込む。モンスターのポテンシャルを十全に活かす原初の戦い方だ。


「…さっさと、死ね」


呪詛の声を呟いて構えるアレン、その体は闇が実体と化して鎧にも服にも見えるようなものとなっていた。蠢く実体を持つ闇、それがまた右腕に集まり元の一回り、二回り以上の大きさの黒い拳となって大鬼(オーガ)と正面から拳をぶつけ合う。


「G◾◾◾◾◾◾AA!!!!」

「……」


拳がぶつかった衝撃でクレーターが出来、広場(ルーム)内が余波で突風が荒れ狂う。

刹那の拮抗、だがすぐにアレンが押し返してそのまま仕返しと言わんばかりに大鬼(オーガ)を吹き飛ばした。


「◾◾AAA……」


体が押し潰されて沈黙する大鬼(オーガ)、だがその異常な再生力をもってすぐに回復する。


「『竜装変化』」


追い討ちをかけるようにまた闇を蠢かす。拳が通常サイズに戻り、また新たな形を象る。


「『竜ノ御剣』」


水平に伸ばした腕の延長線に延びる蠢く闇、それはアレンの言葉と共に剣となった。

どこまでも深い漆黒の刀身、それは大鬼(オーガ)が持っていた巨大な棍棒にも負けない程の規格外の大剣であった。


「…お前を、切り刻む」


大鬼(オーガ)を濁った目で見据えてアレンはそう言った。この時、初めて大鬼(オーガ)は自身が恐怖している事に気付いた。


「GAA◾AA◾◾AA!?!?」


恐怖を振り払うように咆哮しながらアレンへ突進していく。その咆哮も相まって近付いてくる大鬼(オーガ)の威圧感は恐怖で動けなくなるだろう。だがそんな大鬼(オーガ)を前にしてもアレンは静かにその濁った瞳で見据え、体と一体化している漆黒の大剣を無造作に振るった。


「GA◾A…」


剣閃が黒の残影を残して敵へその牙を剥く。

斬って、斬って、斬って、斬って、斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って、斬り尽くした。


「◾◾◾◾…」


その異常な再生力が仇となり、永遠の生き地獄を味わう。声にならない呻き声をげて死を渇望する。


「お前ハ、俺が斬、ル」


何百回と大鬼(オーガ)を切り刻んだ漆黒の大剣。定型を持たぬ仮初の剣がまた牙を剥こうとする。が


「………駄目!!戻ってきてアレン!!」


背中に軽い衝撃。アレンは後ろから抱き着かれた。誰だ、誰だ、どうして。そのもう聞こえないはずの聞き慣れた声を聞いて、アレンは少しずつ振り返ってその人物を見た。


「サ……クラ…??」


視界に入ったのは自分のものとはまた違う、澄み渡った綺麗な黒。珍しい、もう見ることは出来ないのかと思っていた黒色に見蕩れた。その黒ーーサクラが涙と血で顔をくしゃくしゃにしてアレンを見上げた。


「…帰ろう??アレン」


目が合う2人、どこまでも深くドス黒い闇に犯されたアレンを見て、サクラは精一杯の笑顔でそう言った。

その言葉が心にストンと落ちた。漆黒の大剣がその形を崩して闇が静かに消えていく。


「………うん」


また意識が沈む。だが今は穏やかな表情で、大切な仲間に抱かれながらその身を預けた。



◽︎△◽︎



「もうよい、その大鬼(オーガ)は消しておけ」

「はい…ですが、よろしいのですか??態々迷宮のシステムにまで入り込んだというのに」

「かっか、何を言うとる。印を刻まれたあの少年の覚醒を促せたのじゃ、十分だろう」

「そうですか。」


とある一室、深い暗闇の中、老人と若人が迷宮でのある戦いを映した宝玉を観ながらそう話す。老人に言われ若人が手を振るうと宝玉に映されていた大鬼(オーガ)の姿が霧散した。


「彼は、何になりましょう??」

「それはまだ分からぬ。だが、あのどこまでも深い闇…素晴らしかったではないか、かっか!!」

「確かにそうですね、そしていつかあの方の役になってもらわねば」

「そうゆう事じゃ、印を刻まれたのは即ちいつかあの方の元へ舞い戻る事へ同義であるからな、かっか!!」


闇の中で怪しく嗤う。その目にはどこか狂気じみた光を宿して言う。


「またあの方の駒が増える。数百年、いや数千年前よりあの方が願われる切望が成就される時はそう遠くない」

これで、第1章は終了となります!!

短いですが、まだまだ続く予定になっています!!

まだまだ未熟で駄文ばかりですが、ちょっとでも読んでいただければ嬉しいです!!!


題名を変更させてもらいました!!

「少年アレンの成長」→「いずれ運命を乗り越えて」

凄い変わりようですね(笑)


感想、意見等お待ちしております!!

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