表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧版 たまには異能力ファンタジーでもいかがです?  作者: 大野原幸雄
たまには精神操作でもいかがです?
2/61

02 グレートデイズ ②


 鹿野灯矢の入院はあくまで両足が動かなくなったからだ。

 彼の異能力と入院は関係がない。

 しかしその病室は、まるで監獄のような重い空気を持ち、まるで彼を監視するような気配さえ感じた。


「ねぇ、けむりくさい…これ…なに?」


 俺は彼の机の上に皿を出し、お香に火を付けた。

 少し薬臭い煙が出る。特別なお香。


「まぁ…蚊取り線香みたいなもんかな?」


「ふぅん。」







「目の中のゴミ…あるでしょ?」


 彼はゆっくり語り出す。

 自分に起きた奇妙な物語のプロローグ。


「事故の後、僕、お母さんに仕事に行って欲しくなくて「行かないで」ってお願いしたんだ。」


 年齢に見合わない、妙に落ち着いた口調。


「そしたら…目の中のゴミが、光りだしたんだ。お母さんの顔がだんだん眠たそうになって、その場で…僕が眠るまで一緒にいてくれた。」


「そこで自分の能力に気づいたのかい?」


「お婆ちゃんとか…友達のみっちゃんとか。だんだん…これは僕がやってるんだなって。」


 父親から聞いた不気味さはそこには無く、

 鹿野灯矢は俺が思っていた以上にただの7歳の少年だった。


「あの光は…一体何なんだろう。」


「それは目の中のゴミじゃないよ。」


「…そうなの?」


「能力者の力の源とされるエネルギーだ。俺達は『ダスト』って呼んでる。能力者にしか見えない。」


「ダスト…」


「目の中のゴミって、視線に合わせて動くだろ?けどダストはそれとは関係ない動きをする。」


 鹿野灯矢は、目をきょろきょろさせる。

 ちょっと面白い。


「本当だ…」


「ダストって言うのは空気中に含まれていて、能力を使う時に光る以外はただのホコリみたいなもんさ。」


「…へぇ。」


 彼はまだ目をきょろきょろさせている。


「そして俺たちは君みたいな能力者のことを失った者…ロストマンと呼んでる。」


「…失った者?」


「そう。ロストマンになった者は、イコール何かを失った者なんだ。」


 何か…と俺は言葉を濁した。

 今の彼の姿を見れば失ったモノは明らかだったからだ。


 もう歩くことの出来ない両足。

 外で走ることのできない身体。

 7歳の少年にとって、それがどれほど大きなモノなのだろう。



「俺は…君の能力を奪う事ができる。」


「…え…」


 彼の表情が少しこわばった。

 やはり能力には未練があるようだ。

 俺に対する警戒のレベルが上がったのがわかる。


「俺もロストマン。そういう能力なんだ。君から能力を奪うことが出来る。君の両親はそれを望んでる。」


「…やだ。」


「そっか…」


 ここまでは、想定範囲内と言うやつだった。

 ロストマンの能力はほとんどの場合、自分の望みを叶えるためのモノが多い。

 彼は1つ失ったけれど、その代わり能力によって何か望みを1つ叶えた。

 それを奪おうとすれば、誰でもこんな表情になる。


「ならどうしようか。俺の意識を操ってみるかい?」


 これは小さな挑発だった。

 理由は彼の能力を見ておいた方が良いと思ったからだ。

 ダストの活動を抑えるお香も部屋に充満してきてる。


 さぁ、鹿野灯矢、君の能力を見せてみろ。













「出来ないよ、そんなこと…」























 …え?

 やべぇ。

 やり方間違えたか?


「出来ないって…君の両親にやったみたいに、俺を操ってみればいい。」


「誰にでも出来るわけじゃないんだ。お医者さんとか、初対面の人には効かなかった。」


「そうなの?」


 …つまり。

 能力の対象者には条件がある…という事なのだろうか。

 例えば血縁じゃないといけないとか…?


「そちなみに…能力を掛けることが出来た人を教えてくれるかな?覚えてる限りでいい。」


「えっと…お父さん…お母さん…友達のみっちゃん…あと婆ちゃん。」


 血縁ではない…な


「でも…」


「ん?」


「お父さんには最近かからなくなってきたんだ…」


「それは…能力自体が使えないっていう事?」


「そういう時もあるし…かかってもすぐ解けちゃったり…」


 能力が弱まってる…ということなのか。

 そんな話聞いたこと無いが…


「お母さんには今でもかかるのかい?」


「うん。」


 力が弱くなってるわけじゃないみたいだ。

 父親にだけ能力が効かなくなってきた…?

 つまり父親にだけ耐性がついた…?

 そんなことあるのか?


「そのことをご両親は知ってるのかい?」


「いや、知らないと思う。」


「そうか…」


「…」


 …もしかして。


「最後に質問してもいいかな?」


「…うん。」





「君はその両足以外に、何を失ったんだい?」








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ