桃華乱舞 5
鬼は桃華達を見つけると突っ込んできました。人より身体能力の高い鬼は、あっという間に距離を詰めると手にした木棒を桃華に振り降ろそうとします。
『わん、わん(あぶない、トウカ………火遁!!)』
ハチは桃華に体当たりして突き飛ばすと、鬼に向かって火遁を使いました。鬼との間に火柱が出て振り降ろした手ごと鬼を焼き、辺り一面に肉の焦げる嫌な臭いが漂いました。
『ありがとう、やったの?ハ………チ………!?』
我にかえった桃華がハチを探すと、鬼の木棒に当たったのかハチが横たわっていました
『わん(トウカ……無事………)』
『わたしは無事だよ、でもハチが』
『わん(いいんだよ………それより逃げ………ないと)』
『グガー(どこ行きやがった)』
『わん、わん(火遁は………逃げるための…………だから、もう………すぐ………おさま………んだ………俺のことはい………いから………トウカ………村へ)』
『置いてけないよ』
桃華はハチを抱えると、鬼に見つからないように村へと戻りました
『グガガー(クソ、出てこい)』
桃華達が離れたところで見えていた火柱がおさまり、逃げられたことを知った鬼は、怒り狂ったように木棒で地面を叩きます。いくつかの地面に穴を作って冷静になった鬼は近くに人族の村がある可能性に思い至り、歩を進めることにしました
ハチを抱えた桃華が村へたどり着くと、ちょうど巡回してたのか村長さんがいました
『桃華ちゃん?………これは酷い、とりあえず家においで』
村長は桃華を見つけると家へと招きました。桃華のおばあさんが作ったという特製の布をハチの足に巻いていきます
『これで大丈夫なはずじゃ、おばあさんは凄腕の調薬師だからね、一晩安静にしてれば治るよ』
『良かったぁ』
村長の言葉に安心する桃華
『ところで、何があったんじゃ?………桃華ちゃんが鬼が来てると知らせてくれたおかげで村中に結界札は貼れたが』
桃華は村長にハチの火遁のことは隠して、近くで鬼に遭遇したことを話ました
『そうじゃったのか………間一髪でおばあさんの結界札が間に合ったってことなんじゃな』
村長さんは、桃華が渡した箱を取り出すと、中に入ってた札と手紙を見せます。おばあさんの札が間に合わなかった時の惨劇を想像して村長さんは震えました。
『桃華ちゃん、鬼は緑色の肌の6尺くらいだったんだね?』
『はい』
『角の色は見たかい?』
『角は………黄色でした』
『ということは小鬼じゃな、ならこの結界で大丈夫じゃ』
札を貼ると結界が発動する結界札を鬼に貼ることができれば、鬼を結界の中に閉じ込めることができるようです、家にはすでに結界札を貼ってあるので鬼は入ってこれません
『問題は誰が小鬼に貼るのかじゃが』
『グガガガー(ここにいるんだろう?出てこい)』
桃華を探して、ついに小鬼が村へたどり着きました
『ごめんなさい、わたしのせいで』
『桃華ちゃんのせいじゃないよ………鬼とはそういうもんじゃ』
『札を貼ればいいんですね!!』
桃華は決意を固めると、村長から結界札を奪い小鬼のもとへと駆けだしました
『桃華ちゃん!?、待つんじゃ………』
『ごめんなさい………でも、もう傷つくのを見たくないんです』
村長に背を向けたまま家を飛び出すと、桃華は小鬼のもとへと向かいます




