桃華乱舞 1
今でないとき、とある小さな村外れの山奥に、人のよさそうな老夫婦が住んでいました。老夫婦は近くの竹林から竹を切り出しては竹細工を作り、村で売って生活していました。
ある晴れた日のこと、おじいさんがいつものように竹を集めていると、遠くから風切り音が聞こえてきました。近づいて来てるのか、おじいさんが耳を澄ましていると音は次第に大きくなります。
『なんじゃ?』
竹林の向こう側で辺りを揺るがすような地響きをたて、何かが墜落したようでした。
気になったおじいさんは竹林を出ると何かを引きずったような抉れた地面を見つけました、それを辿ると煙をあげる謎の物体がありました。
おじいさんが謎の物体の周りを調べていると、謎の物体に入口のような扉を見つけました、恐る恐る扉に手をかけると抵抗なく開きます。
『誰かいるのかい?、、、入るよ』
一応声をかけて見ましたが、返事がないのでおじいさんは中に入ることにしました。
『これは!?』
謎の物体の中には長椅子のようなものがあり、椅子の上には小さな女の子が横たわっていました。女の子を調べたおじいさんは頭をぶつけたのか大きなたんこぶができてはいましたが、他に外傷はなく、とりあえず命に別状はないみたいで安心しました
改めて中を見渡すと、箱の中から声がします
『どう………た。トウ………返事………無事………』
おじいさんは箱を調べましたが、操作の仕方がわかりません。途切れ途切れに聞こえた声も壊れたのか止まってしまいました
いつまでもここにいるわけには行かないので、おじいさんは女の子を背負い帰宅することにしました。
おじいさんが女の子を家に連れ帰り寝かせていると、川へ洗濯に行ってたおばあさんが帰ってきました
『おや、もう帰って………』
いつもより早いおじいさんの帰宅に、おばあさんが声をかけながら部屋に入ると女の子を見つけ固まるおばあさん
『う~ん、ココは?』
おじいさんの必死の説明のかいがあって、現状を確認し終えたところで女の子が目を覚まします
『気がついたかい?』
『えぇ、………』
『凄い音がして見にいったら、おまえさんが倒れていたんじゃよ』
『………何も思い………出せない?私は………』
頭をぶつけたせいか、女の子は自分の名前すら思い出せないようでした
『可哀想に………そのうち思いだすさね………とりあえずご飯にしようかね』
『まずはケガを治さないとな、いつまでもいていいから、たくさん食べてゆっくり治しなさい』
『………!!お世話になります』
名前も思い出せない女の子に名前をつけないと、呼ぶのに不便なので仮名をつけることにしました。謎の箱から聞こえたトウなんたらが名前だろうと判断したおじいさんは女の子をトウカと呼ぶことにしました
『名前がないと不便じゃろう?』
『そう………ですね』
『トウなんたらがおまえさんの名前だと思うが、本当の名前を思い出すまで“トウカ”と呼ぶことにするぞい』
『ト………ウ………カ?』
『桃華と書いてトウカ(仮)じゃ』
こうして女の子は、桃華(仮)として老夫婦のもとで記憶が戻るまで過ごすことになりました。




